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日本のこれからを見据えたビジネスリーダーたちの次世代を切り開くメッセージを収録。

FILE NO.013
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セガサミーホールディングス株式会社 里見治 | セガとの経営統合時、100人を超える社員と個人面談

セガサミーホールディングス株式会社 代表取締役会長兼社長 里見治
株式会社ベネフィット・ワン 代表取締役社長 白石徳生

故・CSK大川会長の融資80億円を三年以内に返済

白石  里見会長とは、長くお付き合いをさせていただいていますが、今日はじっくりビジネスについてのお話をうかがいたいと思います。まず、起業されたのがずいぶん若いときなんですよね。

里見  私は、大学を出たらアメリカに行ってビジネスのノウハウを学んで、日本で起業したいと常々考えていました。最初からサラリーマンになる気はありませんでしたので、在学中にはすでに、バーの経営などもしていました。

白石 バーですか!?

里見  結構、繁盛していました。そのとき、ある方から「ジュークボックスやゲーム機を販売する会社を一緒にやってみないか」と誘われ、バー経営で稼いだお金を元手に自らも出資しました。これが、現在の事業を手掛けるきっかけとなりました。出資金は数10万円で、当時、大学卒の初任給が2万円の時代でしたからそれなりの金額だったと思います。

白石 すごいですね。

里見 その後、一人で起業しましたが、20歳そこそこの青二才がやることですから、失敗も多かったですし、顧客からもなかなか相手にしてもらえませんでした。25歳になるころにはメーカーへ転身し、ヒット製品も生み出したこともあり、ようやく認められるようになりましたが、その後も紆余曲折の連続でした。

白石 倒産の危機も経験されて。

里見  危機じゃなくて、実際に倒産の憂き目にあった経験もあります。しかし、確かに厳しい時期ではありましたが、その後幸運なことにインベーダーゲームブームで息を吹き返すことができました。またそのあとに生じた危機においても、CSKの元会長、故・大川功さんが80億円を融資し、救ってくださいました。

白石 80億円! すごいですね。それ以前に深いお付き合いがあったのですか?

里見  それまでは挨拶する程度(笑)。自分の持ち株を全部、風呂敷に包んで持って行って、誠心誠意お願いさせてもらいました。「最短で3年、悪くても5年で返す」と。実際、3年かからずに返済することができました。毎月、大川会長に直接返済するとともに、事業報告も行ないました。それで信用してもらえたのか、「セガをなんとかしてくれないか」と言われることもありました。

一人で乗り込み社員の思いを聞いた

白石 それがセガサミーにつながるわけですね。いま、国内外合わせて社員数はどれくらいですか?

里見  グループに従事している社員は約1万2000人です。

白石 すごい数ですよね。でも昨年の隅田川の花火大会にも、会長は若手社員と一緒にいらしていたじゃないですか。大人数をどうやって把握して、コミュニケーションをとっているんだろうと。

里見  頻繁に社員と顔を合わせるわけではありませんから、会った時にはしっかり見ます。気になる社員がいればチェックしておいて、何かの機会に呼んで話をします。

白石 でも統合したセガの社員からも信頼されるって並大抵のことではないと思うんですよね。

里見  経営統合の際、私一人でセガへ行き、100名を超える部長以上の社員と面談をしました。すべて1対1での個人面談です。まずはそのなかで、それぞれの思いとかセガの問題点などを把握しました。そのなかでは、たとえば、当時開発中であった『龍が如く』について、プロデューサーの名越と話をしたときに、リリースできるかどうか、迷いがあることを本人から打ち明けられ、私の方で開発を継続して、絶対に世の中に出していこうという話もしました。

白石 それは会長のなかで、勝算があったのですか?

里見  ありません。しかし本人の意気込みと、ここでやめたらそれまでの開発費が無駄になる。また何より名越というクリエイターもダメになると思いました。あと少しの開発費で、名越もタイトルも生きるのであれば、続けるべきだと判断しました。やはり企業は人から成り立っているのですから、どのように社員を輝かせるかが経営者として最も大事な視点だと考えます。

白石 それで大成功しました。「経営者は社員の生かし方を見極めるべき」という最高の例ですね。

他人のお金を使う以上、安易なギブアップは許されない

里見  社員が最大限の力を出せれば、会社も成長します。セガについては、ワールドワイドに事業を展開させていきたい。世界に知られたセガというブランドを最大限に活かせる場ですから。

白石 そういった世界戦略の一方で、今年の3月には宮崎のフェニックスリゾートを子会社化されました。

里見 はい。複合型リゾート施設事業は、これまで手掛けてきたエンタテインメント事業において培ってきたノウハウや資産を、有効活用することができるビジネスフィールドだと考え、当社の今後の事業の柱とすべく成長させていきたいと思います。この事業は副業ではなく、セガサミーグループが手がけるビジネスの延長線上にあります。最近の若い経営者は少し成功して小金ができると、飲食業など、すぐ副業に手を出すでしょう。そんなことに気をとられずに、本業一本に集中してほしいと思います。少し安易に手を広げすぎている気がします。また、起業時も甘さを感じます。僕らの時代はベンチャーキャピタルなんて仕組みもなく、そのため自力でなんとかするしかありませんでした。

白石 資金調達がしやすい時代にはなりましたよね。

里見  今のベンチャーは、ちょっとしたアイデアをすぐ「ビジネスモデル」という言葉に置き換え、イージーに金を集めているので、ギブアップするときもイージー。他人の大事なお金を使う以上、それは許されないことだと思います。もっと「どんなことでもやり遂げる!」という気迫をもって経営に取り組んでほしいと思います。

引用元:CEO社長情報

記事掲載日:2012年4月

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