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FILE NO.014
コンサルティング

株式会社日本M&Aセンター 分林保弘 | 避けて通れない人口減少と2012年問題 これからの中小企業の姿を考える。

株式会社日本M&Aセンター 代表取締役会長 分林保弘
日本M&Aセンター インタビュー

日本の人口は今後40年で3割近く減少することが見込まれています(2010年の1億2805万人から、2050年には9186万人。国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」)。
さらに、一五歳から六四歳までのいわゆる生産年齢人口は、今後40年でおよそ3500万人、4割以上減少する見込みです。生産年齢人口は主要な消費人口ですから、2050年の日本は2010年比でおよそ4割の消費マーケットを消失することになります。
人口問題そのものは経営者が努力して解決できるものではありませんが、経営者としてしなければいけないことは、今後マーケットは毎年1%縮小していくということを覚悟し、それに対して手を打つことです。

時代の変化を真剣に考えるとき!

日本のマーケットの縮小に対して、大企業は「集約化」と「グローバル化」に解を見出して対策を打っています。

「集約化」については、以前都市銀行と呼ばれる銀行が13ありましたが、現在では3メガバンクに集約されていることが典型例です。薬品関係でも垂直・水平統合など製薬メーカーから、薬品卸、ドラッグストアまで、合従連衡による再編が進みました。この10年間、大企業の経営統合に関する報道が相次ぎ、ニュースを聞いても、もはや驚かなくなってきました。

「グローバル化」については、海外売上高比率を見れば動きを確認できます。自動車メーカーや電機関連では、海外売上高比率が8割前後のところも多くなっています。内需企業なども海外売上高比率が5割近くに達しています。

さらに大企業は海外企業に対してのM&Aにも積極的で、2011年の日本企業による海外企業M&Aは634件、5兆5000億円にも達し、過去最高金額だったと報じられています(トムソン・ロイター)。

一方で中小企業はといえば、「集約化」と「グローバル化」の動きにまだまだ呼応できていないのが実情です。将来、人口減少による内需の縮小が確実に起こるとわかっていても、大企業ほどには対応が進んではいないと感じています。

人口動態に関連した「2012年問題」も

日本にはもう一つの人口に関連した問題があります。後継者不在に関する問題です。帝国データバンクが昨年12月26日に発表したデータによると、調査対象の40万8954社のうち、26万9488社が後継者不在であり、その割合は65.9%にものぼるとのことです。このような後継者に関する実態があるなか、団塊世代が今年から65歳を迎え始めます。中小企業経営者が引退をしたい時期という調査の結果で一番多かったのは65歳でした(中小企業白書)。団塊世代の経営者が引退を意識する65歳を迎え、後継者問題が顕在化することが「2012年問題」であり、わが国経済に大きな影響を与える非常に切実な問題です。

もともと中小企業の場合、経営者のご子息が跡を継ぐのが一般的でした。しかし、ご子息がおられないケース、そしてご子息がいたとしても跡を継いでくれないケースが増加していることが背景にあります。

ご子息が跡を継ぎたがらないのにももっともな理由があります。創業者は自分の得意分野で会社を立ち上げ、創業者ならではの強みを活かせました。しかし、昨今の厳しい環境下で十分な経験もなく、好きでもない仕事を継ぐことを期待することは、ある意味で酷と考える方も多いのでしょう。

社員が事業を継ぐ場合にクリアすべき課題

では社員に継いでもらえばいいのでしょうか。それには問題があります。たとえば、資本金2000万円で設立した会社が30年経過して総資産5億円、負債4億円、純資産1億円のメーカーに成長したとします。この場合株価は営業権を考慮したら1億円~2億円くらいになるでしょう。この株式の買い取り資金を社員は出せない場合が多いのです。

社員が会社を継ぐ場合は、個人保証や担保提供を誰が負うのかという問題もあります。社長の自宅が担保に入っていることも多く、この担保を誰が肩代わりするのかということは難しい問題です。特に製造業の場合会社の総資産の規模が大きく、自己資本が充実している企業でも無借金経営のところは少ないでしょうから、保証と担保の問題がネックになりやすいのです。

また、後継者となる社員の資質も重要です。営業部長として活躍している人の中には、決算書を見たことがないという方もいらっしゃるでしょう。計数管理も含め、経営者にはトータルの能力が必要とされ、ましてや誰にでも務まる時代ではありません。

社員が社長になる条件を述べましたが、株を買い取るだけの資金を持っていて、担保提供や個人保証に臆することがなく、経営能力がある社員ならば、独立して自分の事業を立ち上げているのではないでしょうか。ですから現実問題として、社員の方に継がせることは難しいということになります。

創業者が亡くなった後、奥様が個人保証・担保提供を続け、社員に経営を任せる方法があるとお考えになるかもしれません。でも、もし会社が倒産すれば奥様は創業者が築き上げてきたものをすべて失い、個人保証まで被ってしまいます。逆に社員が継いだことで会社が成長するケースもありますが、その場合、創業家が100%株を持っていたとしても、現経営陣には「自分たちが会社を大きくした」という意識が強くなり、創業家の意向は反映されにくくなるでしょう。そうすると創業家と経営陣との間に亀裂が生じ、事業にも悪影響が出かねません。

後継者問題を解決するM&Aという選択

ご子息も継がなければ社内にも適当な後継者がいないという場合に、実はM&Aという手段が役に立ちます。

M&Aにより売り手企業は後継者問題を解決し、事業を存続できるばかりでなく、買い手との相乗効果でより一層の発展が期待できます。もし廃業・清算ということになれば社員は解雇、取引先にも迷惑をかけることになります。M&Aの道を選べば、社員の雇用が継続されますし、取引先にも迷惑をかけずにすみます。加えて、しっかりしたプロセスによるM&Aの場合、清算時よりも株主の手取金額も大きくなります。

もちろん、買い手もM&Aを通じて既存事業の強化、拡大や新規事業の開発が期待できることは言うまでもありません。

このように売り手、買い手、従業員、取引先……、それぞれにメリットがあるようなM&Aを、中小企業の経営者として事業存続の選択肢の一つに是非とも入れてほしいと考えます。本来、M&Aは、「売り手よし、買い手よし、世間よし」が成り立つ方法なのです。

引用元:CEO社長情報

記事掲載日:2012年4月

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