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日本のこれからを見据えたビジネスリーダーたちの次世代を切り開くメッセージを収録。

FILE NO.054
建築・不動産

ネクストワンインターナショナル株式会社 遠藤一平 | オリジナル建売住宅、中古マンションのリノベーションを成長ドライブに3年後、売上げ100億円を目指す

ネクストワンインターナショナル株式会社 代表取締役 遠藤一平

3つの転機が起業精神あふれる二代目を育む

父親が創業した中小企業を、株式の新規上場を狙えるまでに急成長させた、ある「二代目」が注目されている。ネクストワンインターナショナル株式会社代表取締役遠藤一平だ。

遠藤は父親が興した東日本建設株式会社を二代目としてそのまま受け継ぐだけでは今後の成長は厳しいと考え、これまでの事業を武器に積極的に新規事業を展開、成長エンジンとして育てながら、経営の改革にも着手している。起業の精神にあふれる二代目、すなわち一・五代目経営者の一人だ。

「二代目、三代目の方たちは、どうしても与えられた事業の現状維持をすればよいと考えがち。私に言わせれば気合が足りない(笑)。もっと大きな目標を持つべきだ」と遠藤は語る。

父親が社長だったからといって、小さいころから経営の帝王学を叩き込まれたわけではない。ではどうして一・五代目としてのビジョンを持つに至ったのか。そのきっかけは3つの転機だった。

遠藤の父、現会長の元明氏が不動産と住宅販売の東日本建設を設立したのは1987年。遠藤が9歳のときだった。やり手の営業マンである父が率いる、いわば家族経営的な会社だった。

営業マンとして最初の洗礼を受けたのは大学生のときだ。元明氏が「よそのアルバイトよりももっと稼げるぞ」と自社の住宅販売のアポとり営業のアルバイトを勧めたのだ。最初の2日間は元明氏や会社の営業マンがついてくれていたが、3日目からは一人で営業をやることになった。見知らぬ人の家を訪問するのだから、ドアさえ開けてもらえない。しかし、試行錯誤しながらも、アポがとれるようになった。一日200軒まわってもアポがとれるのは2件程度だが、そのときのうれしさはひとしおで、それが自信につながった。

「私がとったアポを先輩営業マンが引き継ぎ、成約にまでもっていく。成功確率は決して高くはないが、まずは飛び込み営業でアポをとらないと始まらない。営業への自信がついたし、お金を稼ぐ苦労も知った」

このときの経験が、営業ならだれにも負けたくないという営業マン魂を目覚めさせる。これが第1の転機である。

奔走する創業者の背中から経営者としての危機意識を学ぶ

大学卒業後は有名ハウスメーカーに就職し、トップクラスの営業成績を上げるようになる。ここではむしろ営業のノウハウよりも、組織が大きすぎると無駄な会議などの時間も多くなることなど、組織マネジメントの重要性を学ぶことができた。

第2の転機は東日本建設に入社(2003年)して1〜2年目に訪れる。

この頃東日本建設では25棟から20棟後半だった年間の住宅契約棟数が急落し、18棟となる危機に陥っていた。そこで遠藤は大手を辞め、東日本建設に入ることを決意。必死で飛び込み営業を行ない、契約棟数も持ち直していく。

しかし、契約は増えても、キャッシュフローは簡単には持ち直さない。5000万円の入金に対して1億円の支払いを抱え、住宅冬の時代といった背景もあり銀行も貸し渋り、綱渡りの資金繰り状態が続く。

トップ営業マンとして営業も先頭に立って行ない、資金繰りも一人で抱えて奔走する父・元明氏の背中を見て、遠藤はこう感じていた。「営業マンとして個人が稼げばよいのではなく、財務を改善し、会社を多角的に発展させない限り、また同じことが起こりうる」。経営者としての危機意識を持ち始めた瞬間だった。

融資8億円の連帯保証人となり経営者として肝が据わる

第3の転機はいまから5年前、営業部長時代に8億円の融資の連帯保証人を父に頼まれたときにやってくる。普通ならばこの借金が自分の肩にものしかかるかと思うとひるんでしまう額であったが、遠藤は違った。むしろファイトが湧いてきたという。

「8億円の借金があっても、いままでの倍売ればいいんでしょう。やれますよ」

その言葉に銀行側も父も遠藤の経営者としての覚悟を見たのだろう、ほっとした表情になったという。これをきっかけに専務として経営に参画することとなり、さまざまな改革に乗り出した。

まず営業改革。営業マンのマナーやセールストークなどを徹底的に教育した。いままで個人技に頼ってきた営業スキルを全員に行きわたらせ、底上げを図った。

建築現場にも改革のメスを入れた。現場の職人たちにも煙草、ラジオ、ピアス禁止、挨拶の徹底などを厳しく指導した。いままで自由にやってきた職人たちからは反発も大きかった。しかし大金をはたいて夢のマイホームを建てる人たちが建築現場に来て、職人たちのマナーの悪さを見たらどう思うかを説きつづけ、方針を徹底させた。

この結果、3年間で年間の住宅契約棟数は90件になり、売上げは16億円を達成。その実績をもとに、11年代表取締役に就任。11年度には売上げ22億円、経常利益1億円、千葉県建設業売上げランキング19位、増収率ランキング7位にまでなった。12年度は売上げ25億円、年間の施工実績120棟を達成した。

ママと子供の暮らしやすさにこだわった『with Mamaの家』

代表取締役就任とほぼ時を同じくしてネクストワンインターナショナルを設立(10年)。いままでの事業に軸足を置きながらも、新しいビジネスモデルを模索するためだ。

まず着手したのが新築建売のオリジナルブランド作りだ。当時すでにオリジナルの建売住宅を始めていたのだが、特徴的なコンセプトがないのが弱みだった。そこでママが暮らしやすいアイデア満載の『with Mamaの家』というコンセプトを打ち出した。

「それまでにも女性目線の家づくりという考え方はあったが、当社では奥さんと子供さんが暮らしやすい家を作ることにこだわった」

台所や風呂などの水回りが使いやすいのはもちろんのこと、子供がぶつかってもケガをしないように室内の角に丸みをつけたり、料理をしながら子供が勉強している姿を見られるような間取りにしたり、室内に洗濯物干場を設けたり、主婦に喜ばれる要素をふんだんに盛り込んだ。家のオーナーになったママたちに意見を聞く座談会も月2回行なっている。

「住んでいる方たちこそがその住まいのプロ。どんどん意見を語ってもらい、住宅の企画やモデルハウスのイベントなどへのアイデアを出してもらっている」

新規顧客の6割は従来顧客の紹介
15年度は250棟目指す

ただ、いい家を提供するだけでは、顧客は家を買ってはくれない。資金面の不安を払しょくすることも必要だ。「いま住んでいるアパートの家賃よりも住宅ローンの返済額のほうが安い」「住宅ローンはこれだけ借りられる」など資金計画のアドバイスもできるように、お客様担当スタッフには全員住宅ローンアドバイザーの資格をとらせた。

アフターサービスの充実も抜かりはない。引き渡した新居に担当者が箸と茶碗だけを持っていき、食事をごちそうになりながら、家についての率直な感想を聞く「一飯教育」も取り入れている。また、生涯サポートシステムも顧客から評価が高い。初期保証期間の10年が過ぎた後も5年ごとに無料でチェックを行ない、不具合があれば有償でメンテナンスを実施する。一戸建てはマンションのように長期間のチェックや修繕の計画がない分、不具合が起きてから対処することが多く、メンテ費用がかさむことが多い。その前に無料でチェックしてくれるのは顧客にとってありがたいシステムなのだ。

新規顧客の6割は従来の顧客からの紹介だという。良い家を作るのはもちろんだが、家を引き渡してからのアフターサービスや人間関係があってこそ、この会社の作る家を人に薦めたいという気持ちになるのだろう。住宅販売事業は東日本建設の事業として行なってきたものだが、13年1月、担当スタッフともども、ネクストワンインターナショナルに完全移管された。今年度の引渡しは150棟、15年度には250棟を目指す。

幹部創生プロジェクトを立ち上げ、社長の「分身」を育成

また同社では中古マンション事業も事業の柱だ。地元千葉では持ち家比率のマンション割合が全国一であることに目をつけ、中古マンション販売・リフォーム事業を「千葉中古マンション あるある情報館」事業で展開している。一人の担当者が売買からリフォームまでアドバイスし、担当するというのが他にない強みだ。本社内にはリフォームのショールームも設置。リフォーム場所ごとに施工価格も表示され、最近のリノベーションマンションブームとあいまって好調に推移しているという。

これと思ったビジネスモデルの情報が入ったら、すぐに動く。ベトナムに進出する企業の日本人駐在用の住宅の需要があると聞けばすぐにベトナムに飛び、営業拠点を作る準備を進める。韓国やインドなどアジア各国へもリサーチに行く。国内も各地をまわってビジネスチャンスを探す。

「考えすぎていてはだめ。とにかくすぐに動いて現地を見る。駐在事務所を作る程度ならば、事務所の家賃や社員の手当てくらいで済み、驚くほどの先行投資も必要ない。どんどん出て行くべきだ」

社員数十人程度の中小企業ならば社長が一番優秀な営業マン、経理マン、企画者、管理職であればいい。しかし規模を大きくしたいなら、思い切って任せられる優秀な人材の育成が必要になってくる。

「現在は幹部創生プロジェクトを立ち上げ、若手の人材を育成している。いわば私の分身。今後は10の会社を作って10人の分身=社長を育てるのが目標」

3年後の16年にはグループ売上げ100億円の達成と株式の新規上場を目指す。現状の実績よりさらなる大きなステージに向けて遠藤の挑戦は続く。

引用元:CEO社長情報

記事掲載日:2013年6月

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