LEADERS FILE

日本のこれからを見据えたビジネスリーダーたちの次世代を切り開くメッセージを収録。

FILE NO.0246
IT・WEB

RPAホールディングス株式会社 高橋知道 | 準備着手から上場まで正味2年RPAトップランナーとして地歩固め

RPAホールディングス株式会社 代表取締役CEO 高橋知道

リーマンショックを契機に5~10年先の方向を検討

経営コンサルタントが起業家に転じても成功するとは限らないが、外資系コンサルティングファーム出身者には、株式上場を果たすなど一定の成功を収めている人が多い。RPAホールディングス社長の高橋知道氏も、そのひとりである。

同社は2018年3月、東証マザーズに上場した。設立は2000年で、プライベートカンパニーとして経営してきて、上場準備に入ったのは16年2月。純粋持株会社としてRPAホールディングスを設立した。上場準備に要した期間は正味2年である。
「株式を上場する目的の一つは事業拡大に向けた機動的な資金調達です。私はこれまでに取締役として2社のIPOを経験してきましたし、コンサルタントとしても複数社のIPOを手がけてきました。この経験もあって短期間でIPOができたのだと思います」

高橋氏は、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)、ソフトバンク(現ソフトバンクグループ)を経て独立した。当時は大手企業が続々とインターネット関連事業を立ち上げていたが、人材とノウハウが不足していたことから、「ビジネスプロデュース」を掲げてコンサルティング業務の受託を推進する。08年までこの事業に専念し、年間売上高7~8億円で推移して、社員は30人を雇用していた。「当該分野では一定のポジションを築いていました。コンサルティングは収益性が高いので、内部留保をしっかりと蓄積していました」という。

ところが、08年に勃発したリーマンショックで進行中のプロジェクトの4割が止まってしまい、存亡の危機に直面した。幸いにも、事業開発コンサルティング機能、専門人材、さらに構造転換に必要な内部留保を有していたので、高橋氏はこれらの資産を活かして方向転換を指向した。「経済危機によって経済が崩壊するのではなく、それがきっかけとなって時代が大きく変化するのです。そこで5~10年の方向を社内で議論しました」

rpa-holdings-tomomichi-takahashi-1-1

RPA基幹技術を持つデンマーク企業を大手家電メーカーに紹介される

議論の結果、2つの方向を導き出す。ひとつは、日本企業が成長市場を求めて中国進出に加速をかけると読んで、進出準備企業へのコンサルティング。大手回転寿司チェーン運営会社などからも業務を受託した。もうひとつの方法は、コンサルティングから実事業への転換である。営業アウトソーシングなどに進出したが、必ずしも戦略的な進出ではなかったという。
「3カ月単位のスポット契約が多いコンサルティングと違って、アウトソーシングは契約を解除されにくいので、キャッシュフローが安定するだろうという安易な考えで(笑)事業化しました。黒字化に2年かかりましたね」

08年には、現在の主幹事業であるRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)にも出会った。クライアントだった大手家電メーカーの紹介で、RPAのコア技術を保有するデンマークのソフトウェア開発企業を紹介され、高橋氏の共同創業者である大角暢之氏が目をつける。
「これはホワイトカラー版のロボットだ!」とひらめいた大角氏は、RPAに「BizRobo!」と命名し、専門のBizRobo!事業部を立ち上げて商品化に向かった。

rpa-holdings-tomomichi-takahashi-1-2

RPAが本格的な普及期に入り「BizRobo!」導入が予想を上回る

だが、BizRobo!事業部はなかなか軌道に乗らなかった。12年に日本生命に納入した実績を契機に、三菱東京UFJ銀行、オリックス、ソフトバンクにも納入したが、「それでも事業拡大には至りませんでした」という。
ブレイクしたのは15年頃からである。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのレスリー・ウィルコックス教授が「RPA」と命名し、調査会社やコンサルティング会社が次世代の経営技術としての普及させた事が引き金になった。さらに第三次AIブームが普及を加速させた。

16年には同社以外にRPAのサービスを手掛ける会社は殆どなく、国内シェアは16年で80%を超えていた。だが、17年以降に多くの企業が続々とRPAに参入し、高橋氏によると「17年の1年間だけで関連サービスを含めて300社以上が参入し、マーケットは活況を呈しています」。それだけ需要が多いのだ。
そんな状況のなかでも、同社の業績は好調である。既存顧客による「BizRobo!」の追加導入や、新規顧客への「BizRobo!」新規導入が順調に推移し、今期の導入数は予想を上回る見通しとなった。RPAを駆使したアドネットワーク事業では、既存顧客への提案などを強化した結果、受注拡大が順調に推移している。
19年2月通期には、連結売上高72億700万円(前年度41億8800万円)、経常利益6億5500万円(同4億5000万円)を見込んでいる。

rpa-holdings-tomomichi-takahashi-2-1

これからの10年でロボットとAIが大衆化

今期以降はRPAを活用した新規事業の開発にも注力する方針である。
「RPAを導入企業が道具のように使いこなせば、どこでも大きな効果が出ます。デジタル情報革命は、30年前のパソコン、20年前のインターネット、10年前のスマホといった具合に、だいたい10年に1回、技術の大衆化によって生産性革命と事業の再定義が起きています」

高橋氏は、IT産業の変遷を踏まえて、RPA市場の拡大を確信している。
「30年前はパソコンを操作できる人はヒーローでしたが、ビル・ゲイツ氏によって誰もが道具のように使えるようになって、産業の形態が変わりました。その10年後にはインターネットが大衆化して、皆が道具のように使いこなすようになり、それまでの事業が「インターネット事業」として再定義されました。
さらに10年後にスマートフォンが登場し、当初はオモチャのような端末でしたが、機能の高度化と大衆化により、中国では財布を含むあらゆる機能までスマホの中に入り、劇的に生活が変わりました。これからの10年はロボットとAIの大衆化によって、多くの事業が再定義されると考えています」

たとえこの予測どおりに推移しなくとも、経営環境が変化することだけは歴史の必然である。同社の事業内容も売上構成比も、現在とは大きく変わっていくかもしれない。高橋氏はどう構えているのだろうか。
「常にチャレンジャーとして時代の変化を事業機会ととらえ、新規事業創造にチャレンジしつづけます。結果として、現在主力のRPA事業も数年後には『その他の売り上げ』になることも考えられます」

この変化対応にあっても、同社には不変の原理原則がある。
列挙すると、
①顧客を幸せにすること
②協力企業と切磋琢磨する関係を築くこと
③従業員を物心両面で幸せにすること
④利益を出して納税を支払う事によって国に貢献すること
⑤株主に適切な還元をすること
⑥利益を将来変化に対する善の循環を廻す投資に充当すること
そして、この6つに対して責任をもつことである。
6つとも、アーリーステージ期の経営者にも実践してほしい内容である。

rpa-holdings-tomomichi-takahashi-2-2

interviewer

経済ジャーナリスト
小野 貴史

引用元:ベンチャータイムス

記事掲載日:2018年9月25日

POST

Edit

アクセスランキング

ACCESS RANKING

編集部厳選インタビュー

STAFF SELECTION
新着記事
NEW ARRIVALS