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ラオックス株式会社 羅怡文 | ビジネスのスピードが勝敗を分ける 日本の経営者もグローバル感覚を身につけよ

ラオックス株式会社 代表取締役社長 羅怡文
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国内事業でのターゲットは海外からのインバウンド客

「私が社長に就任してからの4年は、とても順風満帆とはいえない。東日本大震災、日中関係の混乱など外部環境により事業が大きく影響を受けた。しかし、日本国内だけの家電量販店から、日中で展開するグローバル企業に変身していくという中期事業計画は、確実に進行している」とラオックス株式会社代表取締役社長・羅怡文は語る。a

かつて秋葉原電気街の象徴的な存在として、日本全国、世界各国からの観光客でにぎわったラオックス。全盛期には全国122店舗、売上げ2000億円を誇る大手に成長したが、21世紀に入り激化する家電量販店競争に圧されて長期の赤字に転落。経営危機に陥り、2009年に中国の家電量販店最大手、蘇寧雲商(旧蘇寧電器)の傘下に入った。

羅は1989年に来日、92年に東京・池袋に『中文書店』を開店し、現在日本国内で最多の発行部数を誇る中国語新聞『中文導報』を創刊。また中国映画など映像コンテンツの著作権事業を行なうなど、日中間での情報・コンテンツビジネスをいくつも立ち上げてきた人物でもある。そんな羅がラオックスと蘇寧雲商の仲立ちをし、M&Aを実現させた。そしてその手腕を買われて羅が社長に就任した。

なぜ倒産寸前のラオックスに目をつけたのか。それは新生ラオックスのビジネスモデルを見ればわかる。核となる事業は、日本国内での免税店、中国での出店、日中間での貿易仲介である。

国内での事業ターゲットはメインにインバウンド(海外から日本への観光客)に絞りこまれている。

「ラオックスは日本で最も早く免税事業をスタートした家電量販店で、外国人には知名度がとても高い。他社の中にもインバウンドに力を入れているところもあるが、当社はより長い経験があり、外国人の顧客との距離が近く、彼らが何を求めているのかを知っている。この利点を最大に生かしていく」

首都圏(秋葉原、銀座、台場、新宿)、札幌、大阪、博多、沖縄と観光客に人気の高いエリアに出店を続ける。延長保証に加入すれば、中国全土にある蘇寧雲商の店舗1600店近くで、保証が受けられる。独自のサービスで他社との差別化を図る。

いま、日本政府は観光立国の目標を立てインバウンドに注力している。訪日外国人観光客を現在の約1000万人から2025年には3000万人に増やす計画だ。東日本大震災後の一時の落ち込みから回復し、今年は円安効果もあって増加傾向にある。

「訪日者数を地域別でみると、上位には韓国、中国、台湾、香港が並びます。しかし、台湾や香港の場合、全人口の6%が来日しているのに対し、中国は140万人も来ているとはいえ、0・1%にすぎません。年間1億人が海外に出かけているので、もっと日本に来てもいいはずです。たとえば1%が日本に来るだけでも、日本経済の構造が変わる。海外の消費者こそ日本成長の原動力」と羅は言う。

ラオックスブランドを活かし中国国内の出店を進める

中国での出店はすでに11店舗を超え、今後もさらなる出店を予定している。親会社の蘇寧雲商としても、信頼の高いラオックスブランドを活かさない手はない。また日中間のネットワークと蘇寧雲商約1600店舗の販売網を活用し、貿易の仲介事業にも力を入れていくという。

日本と中国、双方の文化や経済をつぶさに見てきた羅によれば、現在の日本と中国のビジネスの最大の違いはスピードにあるという。

「中国の経営者に話を聞くと、みな口をそろえて、『本音では日本企業とはビジネスをしたくない』と言います。なぜなら物事が決まらないから。とにかく決定するプロセスがものすごく長い。議論、議論、検討、検討……。そんなにのんびりしていては中国経済やグローバル経済のスピードに追いつけない。

年齢による違いも大きい。日本の経営者は50代、60代が普通だが、中国は一流企業でも30代後半から40代の経営者が中心。彼らは世界中の企業を相手にしているからこそ、グローバル感覚を持っているビジネスマンが多い。若ければ新しい物事や環境の変化に対する対応力があり、吸収力もある。一方、豊かな環境の中で満たされてきた日本の若い人は、欲が足りない。世界に出た経験もなく、世界との結びつきがない。対外的な免疫力もない。そこが明らかに違う」

世界に出て行くことがこの国を守る最高の術

羅は日本の経営者は世界に打って出るべきだと主張する。

グローバル社会において企業が生き抜いていくためには、当然の意見である。だがこの意識を十分に持っている若手経営者が、日本にはあまりに少ない。

日本の人口はこれから毎年数十万人、10年後には年間数百万人もの減少が予想されている。

いまのままでは10年先、20年先に現在の経済構造が維持できると考えるのは難しい。国内消費が確実に減っていくなかでは、間違いなく多くの企業が日本国内で立ち行かなくなってくる。

早晩、日本はアジアに飲み込まれてしまうのではないかという見方もある。

「この国の将来を守るためには若者が自らドアを開けて、積極的に世界に出て行く必要がある。世界に出ることによって企業が守られ、日本が守られるのです」と羅は語る。

日本国内の家電市場がシュリンクしていくなかで一度は競争に負けた同社だが、羅のマネジメントにより日本と中国、日本とアジア、日本と世界の間に身を置くことで、新たな価値を生みだすことが可能になってきた。

「まず世界が変わっているということを認めること。そのうえで、ジャパンブランドの優位性を持って世界を目指しましょう。日本にはものづくりの技術や、財力、勤勉さなど、素晴らしいものがたくさんある。若い人には、失敗を恐れずチャレンジしてほしい。世界というマーケットに目を向けてください」

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