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FILE NO.061

SBSホールディングス株式会社 鎌田正彦 | 絶対負けない自信のある分野でなければ、M&Aは成功しない

SBSホールディングス株式会社 代表取締役社長 鎌田正彦
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大手企業の物流子会社を次々とM&Aして急成長

規模が大きくなければ、下請け、孫請けに甘んじるしかないといわれる物流業界。そのなかで、1都3県の即日配送からスタートし、15年後の2003年にはジャスダックに上場、そこからM&Aで急成長を果たしたのが、鎌田正彦率いる総合物流グループ、SBSホールディングスだ。M&Aで規模を拡大し、競争力をつける経営戦略で、いまや売上高は1500億円にも迫る勢い。創立25周年を迎えた昨年12月には東証2部上場を果たしている。

同社のM&Aの歩みをたどると、ジャスダック上場の半年後、04年5月に、雪印乳業の物流子会社、雪印物流をM&A。大手が圧倒的に有利といわれる業界で、当時、売上高が約2倍の会社を傘下に収めるM&A劇は業界を驚かせた。さらに、東急グループの物流子会社である東急ロジスティック、日本ビクターの物流子会社であるビクターロジスティクスと日本レコードセンターなども次々とM&Aしていった。そうした大型案件は10件にも上る。

M&Aにおいて、鎌田には一つの信条がある。それは、社員を大切にすることだ。基本的にリストラは一切行なわない。だが、それで採算は取れるのだろうか。

「まず、M&Aした物流会社のコストを削減し、料金が以前の5%オフでも利益が十分取れるようにします。それによってもともと請け負っていた仕事をそのまま引き継ぐことができるようになります。と同時に、営業を強化して新規顧客を開拓。つまり、リストラをしないためには、新たな仕事を作り、成長し続けることが必要なのです」

コスト削減策の一つを紹介しよう。たとえば、社員40人、パート60人の物流現場があったとすると、同社では社員10人、パート90人で動かす体制を構築する。ポイントとなるのはパートの活用だ。フルタイムで働ける人、1日4~5時間、午前中だけ、週2~3回働ける人など、その日の仕事量に合わせてパートを組み合わせていく。これだけでもM&A前に比べて3割くらいのコストダウンになるという。

新規開拓については、営業体制をゼロから作り上げることから始めた。たとえば、物流子会社だった東急ロジスティック(現SBSロジコム)では、新規営業と呼べる人間がほとんどいない状態だった。そこで、人材を集め、営業のイロハから提案書の作り方まで教育した。さらに、インターネットやコールセンター、ダイレクトメールなどさまざまな営業チャネルを設けて営業体制を充実させていった。最近ようやく、コンペで大手競合相手から大型商談を勝ち取るなど営業力がついてきた。こうした地道な努力を重ねたことがM&A成功のカギといえるだろう。

グループ入りした社員の心をつかむには5~7年かかる

だが、ここで一つの疑問が出てくる。パートにウエイトをおけば、社員に余剰人員が出るのではないだろうか。

「新規開拓に成功すると、その顧客の倉庫を稼働させることになります。仮に100人の現場とすると、10人くらいが社員になりますから、そこに移ってもらうんです。こうした方法で、M&Aされて不安感を抱えている人たちに、社員としての意識や誇りをもってもらい、心を一つにしてもらうのです。だから、5~7年かけてじっくりと行なうのです」

こうした社員を大切にしたことが、M&Aを成功に導いたのだろう。

「大企業が大切な子会社を譲ってくれたのは、当社を信頼できると評価してくれたからです。大手企業というのは社員の行く末まできちんと考えているものです。もしM&A後すぐにリストラを行なっていたら、次のM&Aはなかったでしょう」

デューデリでムダなコストを徹底チェック

M&Aはベンチャーにとって魅力的な成長手段だが、どんな点に注意すべきだろうか。

「長年経験し、絶対に負けないという自信のある分野でないとM&Aは成功しません。仮に、私がものすごく儲かっているスーパーをM&Aしても、10年後には赤字になっているでしょう。それはなぜか。優秀なスーパー経営者は世の中にごまんといて、その中で戦っても勝てないからです」

鎌田は、M&Aのデューデリジェンスの際、バランスシート上の資産をどうやって入れ替えるか、損益計算書上の外注費や家賃、人件費など高い支出をどうやったら抑えることができるかを常に考えている。

「こんなことがありました。あるM&A候補企業のバランスシートを見たら、倉庫代が10億円と書いてある。これだ! と思って倉庫を見に行くと、3ヵ所で2万坪借りていて、その家賃が10億円だった。そこで、M&Aの結論を出した日に土地を手当てし、1年後には1万5000坪の倉庫を建て、移転集約を実行した。1ヵ所に集約すれば、事務所やトイレ休憩室などさまざまなスペースが節約できて、2万坪が1万5000坪で足りるわけです。こういう計算と決断が素早くできるのは、物流を熟知しているからです」

同社では倉庫業にも進出。この約8年間で10万坪の物流施設を開発した。物流と不動産事業を融合しているのも、他社に例を見ない強みだ。

20年先を見据えアジアでの営業を強化

同社のM&Aは海外にも及んでいる。その第一弾となったのが、2011年10月にM&Aしたインドの国際物流会社だ。

「人口減少によって将来の日本市場は縮小が予想されますから、国内市場だけで成長を続けるのは難しくなる。20年先を見据え、いまから世界で戦える準備として海外営業を強化しています。インドでのM&Aは世界一難しいといわれていますが、20年後には国際的にも巨大市場になっているはず。成功すれば、努力のかいはあります」

さらに12年5月には、アジア地域統括会社をシンガポールに設立。その下に香港、タイ、ベトナム、マレーシアに拠点を置く体制を構築した。

「積極的に日系企業の需要を獲得し、アジアでの営業強化を図っていきたい」と話す鎌田。その目は、「業界トップ10入り、売上高3000億円、営業利益率5%の利益が出せる会社」という将来像をしっかりと見据えている。

引用元:CEO社長情報

記事掲載日:2013年8月

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