【株式会社ビットアイル】大手より安価な価格を可能にするDC設計ノウハウ

代表取締役社長CEO/寺田航平

AI・IT・通信

5億円を資金調達
3年後には成長軌道

「実は創業する気はまったくなかった」

ビットアイル社長の寺田航平はいきなり、そう切り出した。1993年に慶応大学法学部を卒業して三菱商事に就職。99年9月、父が経営する寺田倉庫に転じたが、このときは三代目社長候補というキャリアプランだった。

起業のきっかけは、通信キャリアやシステムインテグレーター(SI)など12社から、倉庫のデータセンター(DC)化を提案されたことだった。寺田倉庫の中核事業はデータ保管で、折からのITバブルの受け皿でもあったのだ。寺田は振り返る。

「12社のプレゼンテーションを受けたことで、設備や収支の出し方の資料も入手でき、ビジネスの全体像をつかめてしまった」

大手データセンターは高額な料金を設定していたので、そこを突いてベンチャー企業を対象にすればビジネスになる。寺田はそう判断して、約90社を訪問、資金調達を求め、8社から計5億円を調達。2000年6月、ビットアイルを設立する。

そして06年、大証ヘラクレス(現JASDAQ)に上場した。

設立間もないベンチャー企業にサーバー管理を委ねるというのは大きなリスクになるはずだが、何がそのハンディを克服し、スピード成長を可能にしたのだろうか。

当初は100社に訪問して提案できるのは5社、見積もりを出せるのは2社。そんなペースが軌道に乗ったのは3年後だった。寺田は成長の要因を2つ挙げる。

第一に、データセンターの設計ノウハウを確立し、社内で設計していること。ゼネコンへの全面委託でないため、設計コストを抑制でき、大手データセンターより安価で設定している。第二に、大手データセンターに比べてサービスの幅が広いことだ。

営業CF50億円 14年には第5のDCを開設

BCP(事業継続計画)やクラウド化の需要増もプラス要因となり、顧客数は12年1月に612社、13年1月には632社に増加した。

データセンター数は4センターを保有。09年に約160億円を投じて開設したデータセンターの設置可能ラック数は2378ラックで、12年7月には稼働率が81%に到達した。国内のインターネットデータセンターは約160社あるが、延床面積で同社は14位にランク。14年5月には第5のデータセンターとして、1400ラックが設置可能な新拠点を開設する。

こうした設備投資が可能なのはキャッシュフロー(CF)が良好だからだ。

直近の業績は12年7月期に連結で売上高147億4700万円、経常利益24億7200万円。13年7月期にはそれぞれ170億円、30億円を見込む。

13年7月期からの中期経営計画では、クラウドサービスの推進で1ラック当たりの平均単価20%アップを目指す方針だ。

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