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外食産業

株式会社塚田農場プラス 森尾太一 | リアル店舗も展開!OBENTOを海外に広める!

株式会社塚田農場プラス 代表取締役社長 森尾太一

売上計画は来期15億円、再来期に30億円

この勢いに他社が追随するのは難しいかもしれない。エー・ピーカンパニーの子会社が、設立3年後に年間売上高30億円を計画している。この会社は2015年7月に設立された(株)塚田農場プラスで、商品力とマーケティング力によって、法人向け弁当市場で早期に地歩を固めつつある。今期の売上高は5億5000万円、来期は15億円を見込んでいる。

この事業は「おべんとラボ」と名づけられ、エー・ピーカンパニーの新規事業として14年7月にスタートした。動機はミッションを普及させる新たなチャネルの開拓だった。

同社グループの統一ミッションは「食のあるべき姿を追求する」で、農業・漁業・畜産業に参入し、一次および二次産品を「塚田農場」「四十八漁場」「関根精肉店」など外食事業を通じて提供してきた。自社の業態も「六次産業のリーディングカンパニー」と定義した同社は、外食事業につづくチャネルを検討し、弁当事業に参入したのだ。

だが、すでに業者が乱立する弁当市場で、どこに勝算を見出したのだろか。

塚田農場プラスがまず開拓したのは医薬品メーカーである。MRが営業先の病院で、医師たちを対象に開く新薬説明会などで弁当を提供しているのだ。平均単価は2000円と高価格だが、この価格帯に需要を見出した。

株式会社塚田農場プラス 森尾太一社長 インタビュー画像1-1

直取引でサイト手数料を省き、食材原価をかける

社長の森尾太一氏はこう説明する。

「すでに流通している2000円前後の法人向け弁当は、価格に見合っていない傾向があるという印象を受けている。法人向け弁当の主要な会社はポータルサイトに登録し、そこから注文を受ける方式を取っているが、サイトへの手数料が発生する。2000円で利益を確保するには食材原価を下げなければならないし、品質を高めるには売価を上げるしかない。当社は直販にこだわり、法人から直に注文を受けるので、手数料が発生しない分、他社よりも原価や製造人件費に還元でき、商品力で上回れる」

MR向けの弁当市場は年間300億円に達し、40%が関東地区に集中しているという。市場性を読んだ同社は、当初は医薬品メーカーに営業をかけたが、ほどなく口コミで注文が増え出した。MRが質の高い弁当を探しているなかで、「おべんとラボ」の弁当に多くの病院の医師たちの間で「美味しい」と評判が広がり、MRの間で有力なマーケティングツールになりうると認知されたのだ。

リピーターも増えつづけ、現在では、国内外の主要な医薬品メーカーの大半と継続的に取引している。

早期に事業を軌道に乗せた森尾氏は、外食コンサルティング会社に勤務していたが、「外食の実業に関わりたい」と志して、12年にエー・ピーカンパニーに入社。おもに採用教育に従事し、塚田農場プラス設立に伴い社長に就任した。コンサル経験が基盤にあるからか、打ち手はマトリクスのように多元的である。

株式会社塚田農場プラス 森尾太一社長 インタビュー画像1-2

MR向け試食会で食材の選定と調理方法を説明

弁当には全国の産地から厳選した食材を使用し、池袋の製造キッチンで、肉は炭火で一枚ずつ手焼きされ、鮭や銀ダラの西京漬けは手仕込みで、卵焼きも手焼きで調理されている。品揃えされているのは「ステーキ弁当」(2200円)、「ハンバーグ弁当」(1800円)、あるいは米の生産者名を付けた「謙太郎幕ノ内」(2000円)など約20アイテム。

さらに「おべんとラボ」は900~1500円のロケ弁当、1000円前後の会議用弁当、オフィスワーカーへの700~800円のランチ弁当と、主に4つの用途をカバーしている。すべて高価格弁当と同様に、厳選した産地直送の食材を使用して、調理は手作りだ。

こうした商品力に加え、マーケティングも同社の特徴である。医薬品メーカーに対して新作のリリース時などに試食会を開き、食材の生産方法からキッチンでの調理方法までのプロセスを情報提供し、MRが医師にも説明できるように促している。単に美味しいだけでなく、安心・安全について根拠にもとづく説明は、食生活の専門家でもある医師の関心を喚起するだろう。

株式会社塚田農場プラス 森尾太一社長 インタビュー画像1-3

BtoC事業へ エキュート品川 サウスにリアル店舗を出店

注文は主に電話で受け付けるが、受付担当者は通常のオペレーターではない。「コンシェルジュ」と呼び、エー・ピーカンパニーの店舗でキャリアを積んだ社員を配置している。コンシェルジュは店舗で培ったおもてなしを駆使しながら、前回の注文内容などを話題にして関係を深めている。

デリバリーにも工夫を凝らしている。デリバリーは外部委託しているが、営業担当者がみずから出向くケースもあり、ここでMRとの関係を強化している。その成果として、注文が営業担当者の携帯電話に直接入ることもあるという。

今後は、高価格の弁当を購入する機会が多い業種として、銀行、証券会社、保険会社、コンサルティング会社、会議ホールなどを開拓する方針だ。15年12月2日にはリアル店舗も出店した。エキュート品川 サウスに「塚田農場OBENTO&DELI」を出店し、「BtoCにも参入して『塚田農場の弁当』というブランドを広めてゆく」(森尾氏)という。

海外展開も視野に入れ、ニューヨーク、パリ、シンガポールなどでオフィス向け需要を狙う構想だ。森尾氏は「ビジネスマンがランチタイムにテイクアウトする料理はあまり美味しくない。OBENTOという言葉は海外でも知られているので、弁当の宅配などを考えている」と抱負を述べる。

株式会社塚田農場プラス 森尾太一社長 インタビュー画像1-4

interviewer

KSG
細川 和人

引用元:フードタイムス

記事掲載日:2015年12月14日

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