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社団法人日本遊技関連事業協会 庄司考輝 | 2020年東京オリンピックを ビッグチャンスに。パチンコが日本の観光資源となる日がやってくる!?

社団法人日本遊技関連事業協会 会長 庄司考輝

日本独自の文化として世界にアピールしたい

2020年夏季オリンピック・パラリンピックの開催地に東京が選ばれた。経済効果は約3兆円といわれ、さまざまな業界にビジネスチャンスをもたらすのは間違いない。日本への関心が高まり、外国人観光客の増加が見込まれると同時に、日本独自の文化や商品・サービスを世界にアピールする絶好の機会が到来する。

そうしたなか、パチンコ(パチスロ)業界も、開催までの7年間をビッグチャンスととらえている。ホール企業をはじめ、遊技機メーカー、販社、設備機器などの関連企業が加盟する業界で唯一の横断的組織、日本遊技関連事業協会(日遊協)の庄司孝輝会長も明るい話題に口は滑らかだ。

「21世紀は情報産業とレジャー産業の時代といわれています。ぜひこの機会にパチンコを日本独特のカルチャーとして打ち出し、世界にアピールしていきたい。旅行会社からパチンコをツアーに取り入れたいという話もきていますし、最近はパチンコを楽しむ欧米人も増えています」(庄司氏)

現在でも九州のホールには、隣国の韓国や香港などから多くのパチンコファンが訪れている。遊技機に使われているアニメも大人気だ。日本で生まれた大衆娯楽、パチンコが観光資源の1つになる可能性は大いにあるだろう。

50歳以降のファン減少をいかに食い止めるか

東京オリンピックという希望の光がある一方、大きな課題も抱えている。庄司会長が最も危機感を募らせているのは、業界を支えてきた50歳以降のファン減少だ。

「若年層や女性のパチンコ離れが指摘されていますが、それ以上に50歳~60歳のパチンコファンが2、3年前に比べてかなり減っていることが気がかりです。団塊の世代が65歳以上になる、いわゆる『2015年問題』は業界にも大きな影響を及ぼしかねません」(同)

その大きな原因の1つは、本来のパチンコファンをここ10年ほど置き去りにしてきた業界の構造的問題にある。

遊技機メーカーは、メーカー間の競争に勝ち抜くため、値段が高くても売れる射幸性の高いヘビーユーザー向けの遊技機を競って開発・販売してきた。一方、ホール側もヘビーユーザーを囲い込むため、そうした台を好んで置いてきた。結果、新台はパターン化し、一般のファンのニーズとはかけ離れたものになり、ファンの減少を招いてしまったのだ。

マーケティング戦略でスリープユーザーを刺激する

日遊協ではこうした課題を克服するため、「遊技産業活性化プロジェクト」を立ち上げ、3つの施策を推進している。

第1の施策は、800万人ともいわれるスリープユーザーや若年層を取り込み、ファンを増やすための「気楽に遊べる、わかりやすい遊技機の導入」だ。

「まず、『羽根物』といわれる機種で新コーナーをつくる計画を進めました。その後、全日遊連(※1)、日工組(※2)と話し合うなかで、『羽根物』にこだわらず低射幸性のわかりやすい遊技機として話が進んでいます。そのためには5~6機種が必要で、ユーザーに一番近い位置にいるホールがどんな機種が喜ばれるかを提案し、メーカーと協力して開発していく予定です。同時に、どのようなプロモーションが効果的なのかも検討していきます。ファンを増やすためには、ユーザーの意識やニーズを吸い上げてメーカーに協力を求める流れが不可欠です」(同)

これまでホールは、メーカーが製造する遊技機を購入するだけ。マーケティングという発想は皆無に近かったことを考えると、画期的な取り組みだ。『羽根物』は現在50歳代の世代が若い頃に楽しんだ機種で、スリープユーザーの呼び戻し効果も期待できる。

「ファンを増やしていくためには、パチンコの面白さを感じてもらえる遊技機が不可欠。目先の利益ばかりを追うのではなく、5年後10年後を見据えた施策を打っていかないと手遅れになりかねません。その旗振り役を業界の横断的組織である日遊協が担っていきたい。そこにこそ、日遊協の存在価値があると思います」(同)

高コストの見直しとイメージアップに力を注ぐ

第2の施策は「ホールの高コスト構造の見直し」だ。たとえば、200台の店も800台の店も料金が同じ貯玉システムの料金体系の見直しや、ユーザーが必要としていないデータ(当たり回数、回転数など)が表示される遊技機など、ムダなコストを洗い出し、見直しを求めていく。
「遊技機に表示されるデータはメーカー間の競争の結果、どんどん増えていますが、一部のマニア層にしか活用されていないものもある。不要なスペックを削除できれば、そのぶん遊技機を安くできるはずです」(同)

そして、第3の施策は「健全化」だ。

「パチンコは風営法のもとで運営されている大衆娯楽です。カジノとは違うことをいろいろな機会に説明し、社会にパチンコとギャンブルの違いをしっかりと認識してもらうことが大切です。そのためには、いわゆる買取問題をクリアにすることが必要で、会員のなかの景品卸業者を中心に、あるべき姿と方策について検討を始めたところです」(同)

業界への理解を深める活動や集客・アピールへの新しい取り組みも始まっている。日遊協では就職向け「パチンコ産業合同説明会」で、パチンコ業界の正しい知識と魅力を伝える活動に力を注ぐ。今年で3回目を迎え、関心を示す学生も着実に増えているようだ。

また、ネット広告やスマホアプリなどを活用した集客活動を積極的に展開するホールも増えてきた。パチンコ離れが進む若年層に向けた情報発信ツールとして、ネットやスマホはますます重要なアイテムとなっていくだろう。

20年の東京オリンピック開催に向け、本格的に動き始めた日本。それまでのこの7年が、パチンコが大衆娯楽として復活を果たせるかどうかの正念場となりそうだ。

※1 全日本遊技事業協同組合連合会
※2 日本遊技機工業組合

引用元:CEO社長情報

記事掲載日:2012年4月

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