「世界に誇れる、日本の『顔』をつくる」 新たなミッションを実現するためにも、立ち上げ人材を多数擁する総合商社を目指す
10代の頃から投資家と経営者二つのキャリアを構築してきた山本社長。20代前半で事業変更を決断し、さまざまな新規事業の立ち上げと投融資を繰り広げてきた。今ではSYGグループ21社。全体で年商30億円超を誇る規模にまで拡大させている。
SYGの特色は、新規事業ができる人材を数多く抱えると同時に投資も行う総合商社的な会社であることだ。
「実際に新規事業を企画すると予算が付いて別会社化され、そこの役員として入り込み立ち上げていくという連続的な事業創出を行っています。もともとは、0->1(新規事業の立ち上げ)しかやっていなかったのですが、最近は既存事業への投融資も増えて来ています。投資会社ではないので対象となる企業に投融資して連結会社化し、事業を成長させ、連結ベースのフリーキャッシュフローを最大化することを狙っています。こうした投資プロセスのなかで、これまでにSEO関係のメディア事業やメーカー直販(D2C:Direct to Consumer)事業など、10以上もの事業が生まれており、それらを当社が誇る立ち上げ人材が支えています」
驚くことに立ち上げ人材には、子会社の経営に関するほぼすべての裁量権を委ねている。人事採用や人事制度の構築まで任せるという徹底ぶりだ。それが、SYGの強みにつながっている
「優秀な人間を雇い、ほぼすべての裁量権を委ね、お金を存分に使わせ、時には失敗も経験したりすると育ちます。任せた以上は口を出さないというのが私のこだわり。中途半端に任せて口を出していては、人は育ちません。万が一失敗しても、本人が経済的マイナスを担うことはありません。むしろ失敗した数や使った金額の大きさが本人の成長の糧にあると思っているので、どんどんチャレンジさせています」
実は、SYGでは昨年大手ベンチャーキャピタルから株を買い戻したタイミングで「世界に誇れる、日本の『顔』をつくる」を新たなミッションとして掲げた。
「以前はベンチャーキャピタルから任命を受けて事業を行う立場でしたので、株価を最大化させることが私のミッションでした。でも、株を買い戻すと、創業者としての想いが会社の目指すところとイコールになりました。そこで、そもそも何をしたいのかと自分自身で突き詰めてみたんです。色々考えていくなかで気付いたのが、海外に行く度に実感してきた日本の良さ、日本の代名詞が5年後・10年後には失われてしまうのではないかという危機感でした。ならば、自分たちの手で何か日本の代名詞を創出するか、既にある代名詞に手を加えて残すことができないかと思いました」
そのミッションをいかにドライブさせていくのか。山本社長は、二つの車輪と一つのガソリンを力説する。
「車輪の一つは、経営戦略の立案に携わる人材です。日本の代名詞(顔)をつくり維持するにはゴーイングコンサーンが非常に重要で利益を出さないと話になりません。そうなってくると事業を立ち上げ、経営戦略を立案し、実行する人材が不可欠になってきます。この人材が、0->1にしろ、1->10(事業拡大)にしろ、どうやったらこの個々の事業のビジョン、収益性を実現・拡大できるかを戦略的に立案し、実行に落とし込んでいきます。一方で、彼らも専門分野を全部分かっているわけではないので、ビジョンの因数分解、あるいは、収益性の実現には、システム開発、マーケティング、営業、ファイナンスなどの専門コンサルティング集団の存在が欠かせません。それが、もう一つの車輪です。具体的にはグループ内にSYGパートナーズホールディングスという会社があり、ホールディングス以下に、ファイナンス、システム開発など専門性ごとに人材を抱えた別会社を有しています。ガソリンとなるのが、お金です。SYGには十分な資金があるので思い切って突っ込んでいき、連結フリーキャッシュフローの最大化を図っています」
ストック型ビジネス、景気非敏感であるかが投融資の判断基準
果たして、山本社長は日本の顔になるものなら何でも投資するのだろうか。その投資方針が気になるところだ。
「何でもではありません。やはり継続性が非常に重要です。継続性は裏返すと、ストック型のビジネスです。顔の維持にはゴーイングコンサーンが不可欠で、事業においてはそれが制約です。そのような特徴を備えた事業を選好しますし、当社の人材もそうした事業を連続的に作り続けるような仕組みになっています。実際、人事制度もそういった格好でインセンティブが働くようになっており、自分で立ち上げた事業が連続的に毎月フリーキャッシュフローを生むと、事業権の分配として毎月収益分配されます。結果的に入社まもない若い人間でも、年収は1000万・2000万を超えられますし、目指せば1億を到達できる仕組みになっています」
山本社長が触れたSYGの人事制度は、ミッションの刷新に伴い今年1月に改訂されているという。
「当社の人事制度は、もともと事業立ち上げを担う人材が連続的に事業を起こすためのものでした。1月から人事制度を改定し、これまでのような完全縦割りの組織を分解し、専門的な集団(SYGパートナーズホールディングス以下各社)を切り出してどこの子会社でも使えるよう横軸で組織化したことで、さらに連続的に事業を起こしやすい環境になりました」
新たなミッションと人事制度が掲げられたことで、SYGは起業家志向を持った人材にとってさらに魅力的なフィールドとなった。
「醍醐味は三点あります。第一に裁量権です。事業実現に向けて、当該事業の社長として振る舞ってもらいます。第二に失敗すると罰点が付くのがサラリーマンです。ただ、新規事業や起業は罰点の数が経験の数。我々は『コイツはできる』と思っているからこそ採用しているので、ロジカルに失敗するなら惜しみなく使わせます。それが将来的に活きるからです。第三は、SYGが上場企業でないことです。上場企業の子会社であれば、新規事業にチャレンジすると連結で常に評価されます。聞こえはいいかもしれませんが、裁量とか、失敗しても良いなんて言っているとトップから叱責されかねません。SYGは未上場でやっているので、失敗に対してもかなり寛容です。さらには、得られるリターンが大きいのもSYGならではです。それは、年収だけではありません。得られる知見も他社を圧倒するものがあると言って良いでしょう」
もちろん、起業プランが簡単に通るわけではない。独自のプロセスのもと、厳しいチェックを余儀なくされる。
「0->1では、一定のフォーマットが存在しています。事業企画に関するPowerPointだけでなく、3年分の損益計算書とキャッシュフロー予測も用意してもらいます。色々な変数の弾力性評価もして、何がKPIなのかを最初に作ってもらいます。何故、そこまで徹底してやるかと言うと、上手く行くと考えた事業の9割が、実は計画のタイミングでうまくいかないことに気付けると同時に、その事業において、何が重要で、何が因子になっているのかが分かるようになるからです」
経営は人ありき。地頭とセンスがあれば必ず成功できる。
実際、立ち上げ人材がどんな新規事業に挑んでいるのか。シンボリックな例がないか、山本社長に聞いたところ、インターンを経て当社に入社まもなく3年目を迎える社員の事例を挙げてくれた。
「インターンの時は私のカバン持ちでした。『この人間は優秀だな』と思いまして、私が持っていた定期通販事業のノウハウを渡していったんです。『できる』と思ったので、インターンを終えるまでに事業部ごと任せ、実質的にその事業部の責任者として頑張ってもらいました。その人間が新卒1年目で電子タバコの事業を立ち上げました。それが今、月商1億を超えています。もちろん、決して順調に行ったわけではなく、最初は私がカタチだけでもノウハウを提供しましたし、英語関連の事業を立ち上げて見事に失敗しお金を焦がしたこともありました。それによって事業の本質を掴んだんでしょうね。まさに、地頭とセンスさえ良ければ成功することを物語った例と言えると思います」
最後に地頭とセンスという言葉を指摘されたのが印象的であった。山本社長は他に何を立ち上げ人材の要件として求めるのであろうか。
「人間性、人望がある方です。自ずと、学生時代にサークルやクラブでキャプテンをやっていた社員が多いですね。また、何故失敗したのか、どうしたら上手く行くであろうかを予測できるロジカル性も重要です。もう一つ、絶対に失敗を経験しますので、数多の情報の中から成功因子と失敗因子を読み取れる力も欠かせません。それらが備わっていれば、あとは経験を積み重ねるだけです。運もありますが、『自分ならできる』という根拠なき自信でも良いので、打席に立ち続けてさえいればいつかは当たるはずです」
そうした有望な立ち上げ人材を積極的に迎え入れ、体制の強化を図るSYGだが、これから目指す企業像はどこにあるのであろうか。
「総合商社です。ただ、昔のイメージのトレーディングカンパニーとしての総合商社ではありません。事業投資会社としての総合商社、新規事業あるいは投資先も日本の顔づくりにつながるような総合商社を目指していきたいと思います」
最後に山本社長に、後進のベンチャー経営者やベンチャー志向を持った若者へのメッセージを聞いた。そこには、何度も失敗を繰り返しながらも、挑戦を止めなかった山本社長ならではの言葉があった。
「起業は失敗するものだと思ってトライしてください。基本的には、失敗の数がモノをいう世界です。我々の場合は、複数の事業を並行して手掛けていますから、一つの事業が失敗したとしても、もう一度0->1のステージに戻るだけ。路頭に迷わせることは絶対にありません。意欲がある方がいらしたら、ぜひSYGのフィールドを活かしてチャレンジしてほしいですね」
引用元:ベンチャータイムス
記事掲載日:2019/02/28