ヒトが辞めないアウトソーシング会社の秘密は「社員教育」
過去3年間で新卒急増も退職者はわずか2名
厚生労働省の調査によると、大卒新入社員の約3割が入社3年以内に退職するというが、東証一部上場のアウトソーシングの子会社で、エンジニア派遣のアウトソーシングテクノロジーの場合、過去3年間、新卒入社した社員の退職者はわずか2名しか発生していない。新卒採用は2013年52人、14年100人、今年200人というペースで推移し、来年は300人を採用する予定だ。
同社は年2回、グループ企業を含む約3000人の社員を対象にES調査を実施して、不平や不満を吸い上げて解決に取り組んでいる。それが奏功しているのだが、もっと根底にあるのは仕事への充足感だろう。
社長の茂手木雅樹は「良い職場で良い仕事ができていることが定着率が高い理由だと思う」と述べる。同社の社員は単にワーカーとして派遣先での業務に従事しているのではない。リーマン・ショックを契機に事業方針を変え、製品企画や詳細設計など上流工程での業務にも関与しているのだ。
製品別のエンジニア構成比は高い順に自動車・輸送機器32%、AV・情報家電18%、半導体関連14%、LSI・電子部品11%、FA/産業機器6%、プリンタ関連6%、医療機器3%、液晶・レンズ2%、その他8%。その他には医薬品メーカーも含まれ、派遣された社員は新薬の企画や臨床試験も担当している。
M&Aで取得したITスクールを自社社員の教育に活用
なぜ、上流工程に関与できるのか。それには、主に2つの理由が挙げられる。
第一に、M&Aにより拡充したグループ企業を中心に自社製品の研究開発、あるいはSNSサイトやWebアプリサービス開発など幅広い領域で自社技術を蓄積していること。技術者が研究開発に時間を費やせるように配慮している。
茂手木が強調する。
「取引先に優れたソリューションを提供するには、新しい技術を取り入れるための時間を意識的につくることが必要」
第二に、M&Aで取得したパソコンスクール「KENスクール」で、最先端の技術を習得する機会を設けていること。「講師には第一級の技術者を充てている」(茂手木)という。
KENスクールは同社の採用幅の拡大にも寄与している。同社は電子工学や機械工学の専攻者に加えて、数学や農学、化学、生物学などの専攻者も採用し、KENスクールで教育しているのだ。人財戦略部部長代理の野上進は「この教育体制は一朝一夕につくれるものではない」と自負する。
同社は先にふれた新卒採用とは別に中途採用で14年、グループ全体で700人を採用した。数年後にエンジニア派遣業で最大規模の人員を目指すが、同時に公益の追求にも向かう方針だ。
同社は技術開発業務のプラットフォームを構想している。数年前からリストラなどで大手企業から大量のシニア層が輩出され続けているが、その受け皿となってシニア層の活用という社会課題の解決にも取り組む。
プラットフォーム事業は、派遣先の業種が多岐にわたり、しかも教育体制が整備されているからこそ描ける構想である。軌道に乗れば先行者利益を獲得できるだろう。
引用元:CEO社長情報
記事掲載日:2015年1月