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FILE NO.0111
製造業

KPE株式会社 木曽原和之 | エンターテインメントに触れるかたちは人それぞれ ホールと連携しながらユーザーの楽しめる機械を開発していく

KPE株式会社 代表取締役社長 木曽原和之

今回の試験方法変更は大衆娯楽への回帰を求めるメッセージ

2014年8月、パチスロ機の新しい試験方法変更に関するニュースが報じられた。試験方法が変更されたのは、出玉率55%以上についての内容だ。実施は9月16日の型式試験から。これまでグレーゾーンだったAT機の押し順ナビがやり玉にあがったといえる。

AT機の開発に大きな影響を及ぼす今回の試験方法変更は、パチスロ業界、とくにメーカーにとって、非常に厳しいものになると思われた。しかし、コナミグループのパチンコ・パチスロ機器メーカー、KPE株式会社の木曽原和之社長は、意外にも冷静に事態を分析している。

「そもそもパチンコ・パチスロは大衆娯楽。今回の試験方法変更は『より一層大衆娯楽を目指しなさい』ということを意味しているのだと理解しています。パチンコ・パチスロは、行政が決めた枠組みの中でやっていく事業。それを理解したうえでどれだけ面白さや楽しさを提供できるのかに尽きるので、今回の変更も、新しいイノベーションのきっかけにしていかなければいけないと考えています。これを機に、遊びの幅を広げることを本気で考えていかなければいけないのではないでしょうか」

そう語る木曽原社長は、常に「われわれは生意気なことを言える立場にありませんが…」と前置きするほど謙虚だ。その姿勢は、パチンコ・パチスロ業界が抱える課題の解決について語るときも変わらない。

「メーカーは新しいコミュニケーティブな商品を出すことが務めであり、機械を通してホール様に貢献することが使命です。

しかし、課題の解決は、現場のホール様と一緒に取り組んでいかなければ難しいと思っています。ホール様がどのようなかたちで機械を使い、どのような運営をして、どのようなエンターテインメントをお客様に提供していくのか。それらをわれわれも理解し、共感する姿勢がなければ、課題を解決することは難しくなります。

端的に言うと、すでに楽しんでいただいているお客様がいる一方で、楽しんでいただけていないお客様がいる。その楽しんでいただけないお客様にどのような解決策を提案するのかをわれわれももっと考えていく必要があると感じています」

ただ、ユーザーの満足度は千差万別だ。楽しみ方も違う。すべてのユーザーが楽しめる機械を開発するのは容易なことではない。その点について、どのように考えているのだろうか。

「スポーツを例に挙げると、ライトなファンから熱狂的なサポーターまでがいる。音楽の分野でも、とあるアーティストの曲をたまに聴くライトな層から、地方のコンサートにも追っかけて行くコアな層までがいる。一つのエンターテインメントに触れるかたちは人それぞれであり、自由だと思います。そして、エンターテインメントはそういったピラミッドストラクチャーを持っていなければいけないと思います。このことはパチンコ・パチスロ業界にも当てはまりますし、再構築していかなければいけないことと考えています。

パチンコ・パチスロ業界でいうライトな層は、一日の負けが大きくなると困るはずです。逆のケースもあるでしょう。その両方のニーズを一台の機械に盛り込むことが難しいのなら、別々にすればいいとも考えています」

他のコンテンツとのコラボレーションでシナジー効果を創出

パチンコ・パチスロ業界が抱える最も大きな課題が、パチンコ参加人口の減少だ。昨年8月に発表された「レジャー白書2013」によると、パチンコ参加人口は前年比で150万人減となる1100万人。それだけでも十分に衝撃を与えたが、今年8月に発表された「レジャー白書2014」では、昨年より140万人も少ない970万人にまで減少したことが明らかになった。これにより、3年連続で最低値を更新したことになる。約3000万人の参加人口があったピーク時の三分の一以下にまで落ち込んでしまったのである。

この推移は、パチンコ・パチスロ業界関係者の不安の種になっている。しかし、2006年に初めて自社ブランドのパチスロ機をリリースするなど、厳しい環境下で成長を遂げてきたKPEにとっては、ブランド設立当初から常に直面していた“当然のように存在する課題”といえる。そのため、木曽原社長の見方も非常に前向きだ。

「いい意味でも悪い意味でも私どもはチャレンジャーですから、まずホール様やお客様に安心してもらえるメーカーになることが第一です。ホール様と密にコミュニケーションをとらせてもらい、できあがっている遊びやサービスに足を踏み入れていかなければいけないと考えています」

その取り組みの一つともいえるのが、既存のコンテンツから派生したパチスロ機の開発だ。今年5月に発売され、すでに多くの追加注文が入っている『』は、コナミが発売した大人気アーケード用オンライン麻雀ゲームがルーツのパチスロ機だ。キャッチコピーの「君はパチスロで麻雀を打ったことがあるか?」からもわかる通り、麻雀の明確なゲーム性をパチスロ機で表現している。

また、コナミから11年に発売された、プレイステーションポータブル用ゲーム『戦律のストラタス』のパチスロ機も、系列の高砂電器産業からリリース。10月6日に稼働を開始する。

こうした他のコンテンツとのコラボレーションを可能にしているのが、コナミ、高砂電器産業、KPEのコナミグループ3社による相互補完関係だ。

「パチスロとはまったく違う分野をシーズにすると、ユニークなものができることもあります。もちろん、独自の発想から生まれる機械の開発にも力を入れていますが、『麻雀格闘倶楽部』や『戦律のストラタス』は3社のシナジーという意味での好例といえます」

その他のコンテンツから派生したこの2機種のパチスロは、アーケードゲームやポータブルゲームに親しんでいる層からの人気獲得も期待できる。新規ユーザーや800万人ともいわれるスリープユーザーをホールに呼ぶ一助になるかもしれない。

時代が求めるエンターテインメントの提案に向けて

KPEがパチスロ市場に参入したのは1992年。当初はパチンコ・パチスロ機の液晶表示装置や映像コンテンツの開発などを手掛けていた。パチスロ機本体の研究・制作・製造に参入したのは2006年8月。初参入機の『ランブルローズ』をリリースして以来、KPEは既存の枠組みにとらわれないユニークな機械を数多く発売してきた。なかでもKPEのブランドイメージを象徴するジャンルが、『マジカルハロウィン』シリーズなどに代表される“萌えスロ”だ。

萌えスロとは液晶画面の演出の重点にオタク文化で使われる「萌え」を置いたパチスロ機の俗称であり、KPEは上記のほかにも『ランブルローズ』シリーズや『極楽パロディウス』シリーズ、『スパイガール』シリーズ、『ときめきメモリアル』など、同ジャンルの機械を積極的にリリースしてきた。

それらのスペックは他の5号機と同様にライトなものだが、内容の充実ぶりは目を見張るものがある。例えば『マジカルハロウィン』シリーズは、人気声優の堀江由衣らを起用。『ときめきメモリアル』は元祖恋愛シミュレーションゲームをパチスロ機で再現するなど、萌えファンのニーズに応える要素をしっかりと盛り込んでいる。

その豊かな発想力の源は、ゲームメーカーとして数々のヒット作を生み出してきたコナミグループのDNAにあるといえる。

KPE株式会社 木曽原和之社長 インタビュー画像1

「私どもコナミグループには、レバーがなくなりボタンだけで操作する『ハイパーオリンピック』や足で踏んでリズム感を競う『ダンスダンスレボリューション』など、一見誰もが売れないだろうと思う商品を世に送り出し、ヒットさせてきた歴史があります。そういったチャレンジ精神や楽しく考える姿勢は、やっぱり大事にしていきたいと思っています」

その姿勢は、発売間近に控えたパチスロ機『Dororonえん魔くんメ〜ラめら』でも貫かれている。このパチスロ機は、1970年代に連載がスタートした永井豪原作の漫画がモチーフとなっている。

テーマはずばり、“古き良き漫画一見活劇”だ。

「これまでさまざまな機械で新たな提案をさせていただきましたが、『Dororonえん魔くんメ〜ラめら』では、スペックは当然として、見た目の演出インパクトにもこだわりました。キャッチーで愉快にしたいというのが一番の狙いです。原作の見どころでもあるお色気も意識した、思わず吹き出してしまうような演出を用意しています。やはり、パチンコ・パチスロは娯楽であるということに立ち返って開発した商品です。」

このことは、9月16日に実施されたパチスロ機の新しい試験方法などに関する木曽原社長の見解に通じるものがある。発売間近となっている以上、開発当初には今回の変更を知らなかったにもかかわらず、「麻雀格闘倶楽部」同様、本機種でも「新しさ、楽しさ、わかりやすさ」といった『娯楽性』を意識した機械をKPEは開発していたと言える。

今回の試験方法変更はパチンコ・パチスロ業界に大きなダメージを与えるとの見方も多いが、パチンコ・パチスロは娯楽であるというあるべき姿を意識すれば、時代が求めるエンターテインメントを提供していけるのかもしれない。(2014年9月2日取材)

引用元:アミューズメントタイムス

記事掲載日:2014年11月

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