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FILE NO.0239
サービス業

株式会社ウェルネスフロンティア 岡本将 | フィットネスと介護予防を全国展開 IOT推進でめざす“尖った企業”

株式会社ウェルネスフロンティア 代表取締役社長 岡本将

買収先の社長に就任して修行 幹部とのコミュニケーションに苦労

灯油配送、ガソリンスタンド、リサイクルショップ、車検・整備など約10事業を展開するオカモトグループ(北海道帯広市)は、8社・442事業所で構成され、2017年3月期グループ売上高は751億1428万円。永続性を確保するコングロマリット経営の一環として、04年にフィットネス事業・介護事業を展開するウェルネスフロンティアを設立した。

フィットネス事業では、スポーツクラブ「ジョイフィット」、フィットネスジム「ジョイフィット24」、ヨガスタジオ「ジョイフィットヨガ」を運営しており、3ブランドの総店舗数は238店。また海外でも2店舗を出店している。介護事業ではリハビリデイサービス「ジョイリハ」を直営29店舗、フランチャイズ25店展開している。

持ち株会社・オカモトホールディングス副社長でウェルネスフロンティア社長の岡本将氏は、父親の謙一氏(オカモトホールディングス社長)に、入社4年目に、いきなり修羅場に放り込まれた。米国ワシントン州ゴンザガ大学院を卒業した岡本氏は、08年にオカモトグループ入社。エネルギー事業部SS統括、経営企画室を経て、10年5月にオカモト副社長に就任した。「社長の背中を見ながら」(岡本氏)順調にキャリアを積んできた。

ところが、11年、オカモトホールディングスが飲食店やフィットネスクラブを約20店運営するヤマウチ(香川県高松市)を100%子会社として買収すると同時に、社長として派遣された。当時31歳。これは年若い落下傘社長が受ける洗礼のようなものだが、とくに経営幹部がなかなか意見に首肯してくれなかったという。

「この若者に何ができるというような空気も感じました。当初はなかなか心を開いていただけなくて、やりづらかったですね。私はヤマウチの経営理念を大切にしながら現場を廻ることに徹して、現場の意見を聞いて歩いてコミュニケーションの下地を作りました。この取り組みを続けて円滑にコミュニケーションをとれるようになったのは、1年ぐらい経ってからでしょうか」

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デイサービスを直撃した2015年介護報酬改定 “本物の事業者”として事業拡大チャンスに転化

12年にウェルネスフロンティア本社の東京移転にともない、岡本氏は社長に就任し、13年にはオカモトホールディングス副社長に就任した。謙一氏が岡本氏に命じたミッションは「フィットネスと介護で日本一の会社をめざしなさい」。岡本氏は、12年に100店に満たなかった店舗数を5年で約300店に拡大した。

年間売上高の推移を振り返ると、14年度66億300万円、15年度88億300万円、16年度113億8400万円。17年度は141億5900万円を見込んでいる。売上構成比はフィットネス事業が80%、介護事業が20%である。

この間、ひとつの壁は15年度の介護報酬改定だった。新規参入が続出して全国に乱立するデイサービスを削減する目的で、厚生労働省はデイサービスの報酬単価を引き下げ、経営力の脆弱な事業者は撤退を余儀なくされる。介護業界では「15年度改定で本物のデイサービスは残った」と総括されているが、同社は、強固な経営基盤と認知症予防プログラムなどによる良質なサービスをベースに、報酬改定をむしろ集客機会の拡大につなげた。

次回の改定は18年度である。デイサービスに対しては、利用者の要介護度・要支援度の改善を基準に、アウトカム評価による加算が算定される政策方針が発表されている。同社にとっては追い風になりそうだ。

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出店基準は投資回収3~7年 営業利益率20%以上が必須

ウェルネスフロンティアの経営方針は「時流中心の一番店商法」を根幹に据えている。
その骨格は、
①立地
②規模の追求
③エンドユーザー向けの現金商売
④粗利益率50%以上
⑤投資回収が3~7年
⑥5店舗以上出店できる可能性がある事業―の5つである。

立地の選定基準は、独自の商圏設定。岡本氏は「2万人もいれば絶対に勝てます」と明言する。そのうえで、周辺に駅や交差点などTG(トラフィック・ジェネレーター)と、商業施設などのCG(コンシューマー・ジェネレーター)が存在することも重要だ。社員が物件候補地を1週間かけて朝、昼、夜の人の流れをチェックしたのち、岡本氏が候補物件の周辺を1時間歩いて、最終判断を下している。

フィットネスジム経営の分岐点は「徹底したローコスト経営にある」(岡本氏)。オカモトグループは、株式会社豊田自動織機からトヨタ生産方式を学び、11年に専門部署を立ち上げ、グループ各社のローコスト経営に取り組んでいる。同時に岡本氏がサービススタンドの開設を担当した経験がおおいに役立っているという。

「サービススタンドもフィットネスジムも24時間営業で、コストが発生する対象は設備と従業員です。3年から最長7年で投資回収するために、営業利益率は20%以上が必要ですが、コスト構造が似ているので、客単価を通して収支を予測できるのです」

店舗のサービス改善には、全社員から提出される日報が有効な情報源になっている。自社の店舗の改善点だけでなく、他社の店舗も訪問して得たヒントが大量に報告されてくるのである。

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個人・家庭・会社の将来を描く「生涯幸福設計」で見えない差別化

さらに岡本氏が「見えない差別化要素で他社には真似ができない」と認識している取り組みがある。「3KM研修」である。この研修は、北海道初の住宅不動産独立系企業で東証二部上場を果たした土屋ホールディング(札幌市)の創業者・土屋公三氏が開発した自己管理手法プログラム。Kは個人・家庭・会社、Mは目標(マーク)、管理(M(マネジメント)、意欲(モチベーション)を指し、1300社以上に導入されている。

3KM研修は社員(約400人)だけでなくアルバイト(約800人)も対象に加えている。「生涯幸福設計」と銘打って、個人・家庭・会社のそれぞれについて1年後、3年後、10年後、20年後の目標を10項目作成し、項目ごとにアクションプランを盛り込んだうえで、夢をビジュアルに描くという内容だ。
全員が毎年書き換え、毎日の朝礼で達成状況の確認を促している。特に家庭の目標達成に向けては、補助金を支給する制度も設け、家族旅行に行く場合などには1人あたり5千円、最大4名分で2万円を支給している。また、グループ全社で目標達成における成績優秀者を表彰しており、各部署の最優秀者には4人を上限に家族も含めてグアム旅行に招待している。

岡本氏も3KM研修の対象者で、タブレットを見せていただくと「(尊敬している)第二のニトリになる」「IOTを実施する」「結婚する」など、自分の生涯幸福設計が入力してあった。一般に自己管理手法が浸透すると従業員の求心力が高まるが、同社では「モチベーションが飛躍的に高まって、社員の年間離職率は7~8%にとどまっている」(岡本氏)という。

今後の重点戦略は“尖がった企業”に変えることである。岡本氏は大前研一氏が主宰する経営研究会「向研会」のメンバーで、米国視察などを通して、尖った企業への進化が必須と認識したという。ベンチマーク対象は同業のフィットネス事業者ではなく、いずれ世界の産業界を支配する四天王と呼ばれるグーグル、アップル、アマゾン、フェイスブックの4社。まずはIoTの推進による店舗のオートメーション化を進めていく方針だ。

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interviewer

経済ジャーナリスト
小野 貴史

引用元:ベンチャータイムス

記事掲載日:2017年12月18日

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