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株式会社マルハン 韓裕 | 人を中心にした経営理念の実践〜 急成長を遂げたマルハンの強さとは

株式会社マルハン 代表取締役社長 韓裕

急成長を遂げているマルハンの大改革は 韓社長の試行錯誤を経て1992年に始まったマルハンは53年の歴史があります。1990年からの売上げの推移を示したものがこちらです。このように、2000年頃から急成長を遂げました。改革を始めたのは1992年。わたしは20年前にマルハンに入り、2年間試行錯誤でさまざまな取り組みにチャレンジしましたが、成功しませんでした。

今思えば、共感力のないところに方法論をぶつけていたのだと思います。これでは人が動かないという経験をし、改革を立ち上げたのです。 この改革こそが、今日お伝えしたい「理念型経営」、“人のマルハン”を貫くという考え方であります。

これから、その理念や我々がこだわって行ってきたことについてお話しします。

「業界を変える」という 目標に共感した 従業員や新入社員が マルハンを変え始めた わたしは、多くの経営者が、目に見える部分に多くの時間を費やし過ぎていることに気づきました。経営者自らが決定し、従業員がそれを忠実に実行するというスタイルに偏りすぎているような印象を持ったのです。

そこで、失敗を経験したわたしが考えたのは、深い「共感力」が重要だということでした。その「共感」を生むために、「マルハンイズム」という理念を核として、会社の風土、行動指針やビジョンを作る——。それこそが、サービスの向上につながると考えたのです。 マルハンでは、経営理念を従業員みんなで共有しようと考え、目に見えない部分であるビジョンの浸透に多くの時間を費やすことにしました。パチンコはサービス業であるという考えのもと、従業員が自ら考えて行動することを奨励し、その体験のなかで責任感を養っていくスタイルを始めようと思いました。

こうして最初に始まったのが、「共感型採用」。数値目標だけを目指すのではなく、「業界を変える」という目標を掲げました。その目標に共感する人だけを採用し、従業員ともその目標を共有する作業に時間をかけたのです。

ところが、実は、いざ共感型採用を始めてみたら、最初はたった5人しか採用できませんでした。あくまでも共感者を採用するということにこだわったからです。

それだけでは店舗がまわらないため、女性のアルバイトを起用しましたが、人手不足のため、現場で働く社員たちは通し勤務で休みがとれず、店舗に寝泊まりするような状況でした。それでも、ただホールでお客様を見ているのではなく、「業界を変える仕事をしているのだ」という気概をもったことで社員たちは輝き始め、成長していきました。 例えば、同じレンガ積みの作業をしていても、ただ「レンガを積んでいる」と思うのと「教会を作っている。歴史的な教会を作るのだ」と思うのでは、大きな違いがありますよね。従業員には、パチンコ店で働くことを通して何に取り組むのかを考えてもらいました。従業員にとって、働くことが“サービスに貢献することへの挑戦”という価値に変わっていったのです。

共感型採用を始めて18年。わたしは自ら学生に考え方を伝え、100人規模の最終面接も自ら担当しました。マルハンのビジョンと同時に、「働くことは人生の生き方の選択である」ということを伝えました。「就職先に安住するのではなく、未知への開拓者としての人生を共に歩んで行かないか」という熱い想いが若者たちの心を打ち、その波は大きく広がっていったように思います。

そして、毎日新聞の文系人気企業ランキングでは、パチンコ業界の企業としては異例の100位以内にランキングされたのでした。おかげさまで、今では採用人数が大変増え、昨年度では200回の説明会を行いました。そして、そこから生まれる共感力が、会社の成長を支える大きな原動力になっているのです。 激務の合間に 1カ月をかけ 420名の幹部一人ひとりに 書いた熱い手紙とは 次に、わたしは現状分析を始めました。従業員の意識調査として、モチベーションを探る調査をしたのです。理念の浸透度や、経営者への信頼感、職場への問題、コミュニケーションなどの132の質問に、13000人の従業員すべてが答えました。

すると、新たな課題が浮かび上がりました。お客様への意識が高いという結果については自信になりましたが、一方で、上司と部下のコミュニケーションの問題や、大企業にありがちなセクショナリズムの問題が浮上したのです。

これらはモチベーションの低下につながりかねないという危機感を持ち、2007年に人材活性化プロジェクトを立ち上げ、自らプロジェクトリーダーになりました。

これも、全社をあげて“人のマルハン”を貫くためのスタートでした。従業員のやりがいや輝きのためには、福利厚生の制度や待遇面を変えるだけでは改善されないと考えたのです。

人材活性化プロジェクトでは、420名の幹部を集め、延べ6日間フォーラムが開かれました。みんなで「どうありたいか」を確認して、議論を徹底的に交わし、それを組織化するプロセスを作ることで、マルハンイズムのなかに組織理念を加えたのです。

このフォーラムでは、420名の幹部一人ひとりに宛てて書いた、オリジナルの手紙を渡しました。1カ月の間に、早朝や深夜、休日、移動中、出張中などのすべての空き時間を使って、一人ひとりに向け、その人が入社以来どう頑張ってきたのか、どんなことを期待しているのかなどを書いたのです。

想像を絶する苦労でしたが、そこまでしてもやらなければならなかったことは、改めてイズムを軸に人のマルハンを貫く覚悟と本気を、このタイミングで伝える必要性を感じたからです。 共有・表彰・清掃という さまざまな仕組みが 従業員のモチベーション 向上に役立っている

全社が一丸となって夢の実現に向かって歩くマルハンが確立され、会社は急成長を遂げました。しかし、会社が大きくなるにつれ、組織理念を新たに設定することが必要だと、わたしは感じました。そしてマルハンイズムに10年ぶりに追加された理念が、

○共感参画型組織 ~夢を語り、自ら参画せよ~

○挑戦し続ける組織 ~失敗や変化を恐れず挑戦せよ~

○チームマルハン ~IではなくWeで考えよ~

です。

そして私たちは、このイズムを維持継続する為の仕組み作りにも取り組んできました。今日はその中から3つご紹介します。

1つ目が、〈イズムの殿堂〉という制度。みんなに知ってもらいたい接客や感動的なサービスを提供したスタッフがいたというエピソードを、全社で共有するのです。集められたエピソードのなかで素晴らしいものは、〈イズムの殿堂〉という形で卓上カレンダーなどにしています。

2つ目が、アメリカのあるスーパーマーケットが取り組んでいる制度を手本にした〈スーパースター制度〉。お客様が頑張っていると思う社員を投票するシステムで、今では年間21万6千票が集まり、月に1回店舗ごとの〈スーパースター〉を選出しています。スーパースターを7回とると与えられる〈スターセブン〉という称号を持つ者が、今では362名います。

3つ目が、〈クリーンマインド制度〉です。実は、若いスタッフに店舗やバックヤードをきれいに保つ心がけができていない者が多いという問題がありました。清掃は、店舗や職場の整理整頓だけではなく、心を磨くことや気づく力を育てることにもつながります。店舗のトイレ清掃は全店において店長が行い、従業員は店舗や街の清掃にも率先して取り組んでいます。

以上、理念経営の実践と人のマルハンを貫くという姿勢がマルハンの大きな成長につながりました。

引用元:あすなろ

記事掲載日:2011年1月25日

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