経験20年の現場出身者たちがパチンコホールの持続的成長を支援
ホール店舗数は減少の一途残った店舗の残存利益に着目
パチンコホールの経営サポートを展開するピーズサポートは、2017年1月に設立されたばかりだ。社長の渋谷友和氏は、東京都や神奈川県に13店舗のホールを展開するシティコミュニケーションズ(横浜市神奈川区)に20年在籍した。19歳のときにアルバイトで入り、その後社員に昇格し、店長、事業部長と昇進を重ね、事業部長時代には陣頭指揮をとって3店舗から13店舗まで拡大させた。
「シティコミュニケーションズ在籍時には人並み以上の生活を送れました」という渋谷氏は、40歳になったら人並み以上の生活を捨ててでも、独立してパチンコ業界に新たな価値を提供しよう。そう志して、予定どおり40歳で独立したのである。
キャリアを活かすにはパチンコ業界に足場を築くのは自然な選択だが、この業界は斜陽化が著しいのではないか。警察庁によると、2000年に1万6988店だったホール店舗数は16年には1万986店。16年間で約6000店も減少した。渋谷氏は「5年後には4000~5000店舗に減少するかもしれません」と予想する一方で、こんな見方を示す。
「ホール経営には、誰が経営しても儲かるような時代が長くつづいていました。いままでがバブルだったのであり、それが普通の業界になっただけです。しかも、かりに4000~5000店舗に減少しても、残った店舗には残存利益が存在するので、十二分に魅力のある市場です」
経費の使途を見直してコストパフォーマンスを強化
独立に際しては2人の部下を誘い入れた。この陣容が同社の強みである。渋谷氏と同様に2人も現場経験者で、ホールでのアルバイトから始まり、現金取り扱いの役職者・店長・エリアマネージャーなどの職位を経験している。ホール経営の機微に通じ、理論先行のコンサルタントとは一線を画しているのだ。
渋谷氏は「当社のメンバーは現場を知っているので、クライアントの状況に応じた現実的なサポートができます」と自負する。
事業内容はおもに経営・営業支援と人財育成支援である。
経営・営業支援の対象は
①新規物件の調達・投資回収までの提案
②遊技顧客分析・近隣店調査・営業数値予測・工事費用予算計画作成
③オープン関連営業計画・オープン機種計画・オープン前販促
④機種構成チェック・営業力強化
⑤機械購入サポート・中古機調整。
一方、人財育成支援では、法務、計数管理、ホール経営、職場風土改善、店長候補育成、職位別研修、女性活躍推進、障害者雇用、リスク管理などをサポートしている。
パチンコホール業界は一部の大手を除けば「適切は言い方ではないかもしれませんが、どんぶり勘定から脱し切れていません」(渋谷氏)。同社がクライアントに対して、まず実施するのは経費使途の改善である。ホール経営の“三大経費”である人件費、機械設置費、広告宣伝費で経費の60%近く占めるが、たとえば年間経費が10億円の場合、その経費を投じて12~13億円を回収できるのかどうか。この観点から経費使途を改善している。
クライアントに指導するのは勇気をもって仕事を任せること
ピーズサポートは人財育成に向けた権限委譲にも重点を置いている。任せれば育つことは周知の鉄則だが、なかなか任せきれないのが通例だ。渋谷氏は「部下に任せることには勇気が必要です」と指摘する。渋谷氏自身、店長に就任して店舗運営を任せられて実力をつけ、事業部長に昇格してからは、店長に任せることで育て上げた経験をもつ。
「任せることはプロセスに口をはさまないことであり、私も部下に任せたときには勇気が要りました。いまのクライアントには6店舗のホールに対して、社長が実質的に店長のように関わっていた企業があります。そこで、まず2店舗だけ当社の管轄として、店長に運営を任せるようにしました。社長が関与してこないので、店舗スタッフは皆驚いています」
もうひとつ、人財育成の重点的な方針として、即効性を求めないことが挙げられる。重視しているのは、あくまで持続性である。
「当社のメンバーが現場に入って改善すれば、すぐに業績が上がると思います。しかし、それでは3人の手が離れて以降は、業績が元に戻ってしまうかもしれません。業績の向上を持続させるために店長やスタッフを育成が大切ですが、人財はすぐに育つものではありません。一定の時間がかかります。その意味で、クライアントには細く長く関わっていく考えです」
いわば成長体質を築き上げることをサポートの根幹に置いているのだ。「細く長く」の方針に従って、報酬単価は同業のコンサルティング会社の約半分に抑えているという。
500件以上の物件を精査物件仲介やM&A仲介にも着手
同社は設立以降、パチンコホール運営企業に加え、遊技機械メーカーもクライアントに加わった。今後は、渋谷氏が500件以上の店舗物件を精査した経験を投入し、物件仲介やM&Aアドバイザリー、あるいはカプセルホテルなどへの業態展開サポートも計画している。その先に構想しているのがホール経営だが、これは難題ではないのか。
「個人がホール経営に乗り出すことについては、10人中9人が『失敗する』と意見してきます。しかし、私はできない理由を並べるではなく、できる理由を挙げて仕事をしてきました。このスタンスでホール経営も考えていきます」
20年におよぶ業界経験にもとづくホール経営者への助言も聞いておきたい。「私から助言することはおこがましいと思いますが…」と断わったうえで、渋谷氏はこう述べる。
「私が知る限り、2代目や3代目の若手経営者には、先代と比較されるプレッシャーや、業界につきまとうグレーなイメージに悩んでいる方が多い。しかし、許認可事業であるホール経営は、遊技機械の交換ひとつとっても所轄警察署の許可が必要で、きわめて透明性の高い事業です。透明性の高い事業に取り組んでいることに、胸を張っていただきたいと思います」
interviewer
引用元:ベンチャータイムス
記事掲載日:2017年4月14日