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日本のこれからを見据えたビジネスリーダーたちの次世代を切り開くメッセージを収録。

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株式会社ビジョン 佐野健一 | どんな産業も置きかわるから、まず自分自身で置きかえる ~常に時代を読み、積極的に攻める~

株式会社ビジョン 代表取締役社長 佐野健一

海外渡航者向けに「グローバルWiFi®」を展開するビジョン。世界各国の通信キャリアと提携し、安価でセキュアな環境でネット接続できると大ヒット中だ。社長の佐野健一氏は大企業に勤めるトップセールスマンで事業部長だったにもかかわらず、ある日出張の途中で思い立って新幹線を降り、富士山のふもとで起業のためのオフィスの契約をしたという。そこにはどんな想いがあったのか。

佐野氏の起業の原点、それは子供時代にあるという。

「母が経営する居酒屋にくるサラリーマン達は、いつも会社の不平不満を言っていましたね。かたや父が営む工務店で働く職人達や商売をしている人達は、エネルギーがあって幸せそうに仕事をしていた。それを見て、自分も何か商売をしたい、と考えるようになりました」。

小学校、中学校、高校は徹底してサッカーに打ち込み、優勝も経験した。

「サッカーに集中して掘り下げると、できないことができるようになると分かったのは非常に良い経験でした。ただ、サッカーには詳しくても、他の分野については分からないことがたくさんありましたし、まずゼロから1を作り出す方法を身につけなければいけないと感じていました」。

株式会社ビジョン 佐野健一 インタビュー画像1−1

サラリーマンでマネジメントを学ぶ

そう考えた佐野氏は通信業界に就職することを決める。

「当時将来性があると思ったのは不動産業界と通信業界ですが、通信業界はNTTが自由化してまだ数年。どんどん伸びていて、新しい業界だから古いしがらみもない。それでこちらだと思いました」。

意外なことに、学生時代は人前で話すのが苦手だったというが、努力の結果、トップセールスマンにもなり、管理職としても頭角を現す。

「セールスができることも大切なのですが、マネジメントができることが非常に大事ですね。プレーヤーだけやっていたら上にはいけないし、組織も成り立たなくなる。最初は5、6人をまとめる管理職から始まり、23歳の頃には800人の組織を見るまでになりました」。

管理職として、営業マンのまとめから、BS、PLなどの財務部門経営状況の把握、支社の立ち上げ、採用、教育などに携わった。各地を飛び回る激務であったが、徐々に組織を動かす醍醐味に目覚めていく。

「マネジメントは非常に大変でしたが、自分や組織の成長があれば楽しいんだな、面白いんだなという気持ちが芽生えてきました。それで、マネジメントを会社というしくみに置き換えていくこと、つまり起業の次期を考え始めました」。

株式会社ビジョン 佐野健一 インタビュー画像1−2

富士山のように日本一を目指して起業

サラリーマンが起業する場合は、様々なシミュレーションをし、やれそうだとなった上で会社を辞めるのが普通だ。しかし、佐野氏は出張の途中に突然新幹線を降り、縁もゆかりもなかった富士宮市で、起業のためのオフィスを借り、会社を辞めた。

「なぜ、そこでと驚かれるのですが、日本一の山、富士山を見て、やるからには日本一を目指そうと、富士山が見える地でオフィスを借りたのです」。

そこから、社長、営業、総務、電話番、掃除係と、全てを一人でこなす孤軍奮闘が始まる。800人もの部下がいたのなら、何人かの部下を連れて独立してもよかったのではないか。

「手伝いたいと言ってくれる部下もたくさんいたのですが、全員断りました。恩義のある会社から、引き抜いてやりたくはなかった。ただ、勤めていた会社を退職し、面白そうだからやりたいと言ってくれた人物だけは、採用しました。東京から地方へと一大決心して来てくれたわけですから。それが、今の取締役上級執行役員管理本部長です」。

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国際電話割引サービスで売上10億円

「ビジョン」という会社は作ったものの、情報通信分野をやるとしか決めていなかったという佐野氏。最初のヒットは、日本在住の南米系外国人に向けた国際電話割引サービスの取次ぎだ。きっかけは、富士宮市在住の出稼ぎ南米人達のサッカー仲間に入れてもらったことだった。そこで、彼らが頻繁に母国へ国際電話をかけること、通話料金の高さに悩んでいることを知った。その縁で南米系のスタッフ達を採用し、展開した国際電話サービス事業だったが、1年目は7700万円、2年目は10億円と劇的に売上が拡大した。しかし、佐野氏は満足しなかった。国際電話サービスは、価格競争や技術革新が激しい世界。今は良くても、将来は売り上げが落ちてくるのは必至だ。外国人スタッフ達が、母国に帰国するという期限の問題もあった。

「どんな産業も置きかわってきます。置きかわらないと思い込んで問題から目をそらすか、置きかわる恐怖に震えているだけなのか、自分達で積極的に置きかえていくのか。私は、自ら置きかえていくことを選んだのです」。

佐野氏はオフィスを東京に移転することを決断し、固定電話事業、移動体通信事業やブロードバンド事業など、法人向け事業を中心に展開する。

株式会社ビジョン 佐野健一 インタビュー画像1−4

「グローバルWiFi®」が大ブレイク、そして上場

株式会社ビジョンのボーダーレスな事業展開を印象付け、大きな飛躍につながったのは、海外用Wi-Fiルーターレンタルサービス「グローバルWiFi®」だ。事業開始の2012年当時は、海外でモバイルインターネット接続を長時間利用すると、法外な料金を請求されるケースが多かった。それを世界各国の通信キャリアと直接交渉、契約し、現地のローカルネットワークを直接利用できる方法を採用した。海外渡航時に「グローバルWiFi®」のモバイルWi-Fiルーターをレンタルしておけば、海外で高速かつ安価で、安全セキュアな環境でネット接続できるようになる。成長性から考えても、すぐに上場だとなっても不思議はないが―。

「起業としての実力が本当についてから、上場すべきだろうと考えていました。ですから、上場は2015年12月がベストの時期だったのだろうと思います」。

上場してからの変化はあったのだろうか。

「グローバルWiFi®」は、年間100万人以上の方々に利用いただいており、*(ビジョン調べ)まずまずの知名度はありますが、株式会社ビジョンという社名は、今までBtoB中心のビジネスでしたので、コンシューマーにはあまり知られていなかった。ですから上場を契機に、知名度や安心感が少し上がってきたように感じています」。

現在は、訪日外国人旅行者向けWi-Fiルーターレンタルサービス「NINJA WiFi®」も好調だ。今後は、安心・安全・快適なモバイルインターネット環境を活用する海外渡航者に、有益な情報を提供していけるよう、メディアサービスプラットフォーム開発など、サービス拡充、拡大をしていく予定だという。

「通信の分野は変化が速い。今後は、会社やビジネスの構造も進化を遂げていくと思います。「良い差別化をするにはスピード感や変化をする柔軟性が大事だ」と、これから起業する方にはアドバイスしたいですね」。

現状ご提供しているサービスレベルや品質に安住せず、常に変化を恐れず進化してきた佐野氏。これからも時代をリードした事業を見せてくれるのだろう。

interviewer

KSG
関 幸四郎

引用元:ベンチャータイムス

記事掲載日:2016年4月28日

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