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サービス業

株式会社リンクバル 吉弘和正 | 設立3年半で東証マザーズに上場 ネットとリアルで街コンを独走する

株式会社リンクバル 代表取締役社長 吉弘和正

自治体の婚活ニーズ拡大で“街コン市場”が確立

街コンを普及させたリンクバルは、設立3年半で東証マザーズ上場を果たしたスピード成長で耳目を集めているが、同社は地方創生の枢要な担い手でもある。街コンのコンセプトは「出会いの場の創出」「地域活性化」である。だが、このビジネスは、もっと深く国家的な課題にも関与する立ち位置にある。

元総務大臣・地方創成会議座長の増田寛也氏は、講演などで「現政権の地方創生は若者の定住促進を通して地方経済を自立させること」と地方創生の方針を示している。若者が地方に定住して所帯を持ち、2人程度の子供を育てることが地方経済を回復させる要件と考えているのだ。

2013年度には補正予算に「地域における少子化対策の強化」という名目で、結婚情報の提供や相談に向けて約30億円を計上した。意図したわけではないだろうが、2011年に設立されたリンクバルは、早々に国策と合致したのである。

業績の伸びも急ピッチだ。過去3年を振り返ると、2013年9月通期は売上高6億4600万円、経常利益3500万円だったが、14年9月期はそれぞれ11億7500万円、1億7100万円。15年9月期は17億2200万円、2億8200万円だった。今9月期は22億5400万円、2億8300万円を見込んでいる。

同業者が居並ぶなかで、なぜ同社が抜け出せたのか。何が競争力になっているのだろうか。

株式会社リンクバル 吉弘和正社長 インタビュー画像1-1

イベントECサイトの強化で得た先行者利益

同社の売上高の90%以上を占めるのは、街コン・恋活イベントサイト「街コンジャパン」、グルメイベントサイト「街バルジャパン」のイベントECサイト運営サービスである。

おもな売り上げ項目はイベント掲載料、集客手数料、自社開催イベントへの参加料、協賛金など。街コンジャパンでは自社開催イベントの売り上げが約60%、他社開催イベント掲載料等の売り上げが約40%を占めている。

イベントECサイト運営とイベント開催の両方を手がけていることが同社の特徴で、これが競争力となった。社長の吉弘和正氏は説明する。

株式会社リンクバル 吉弘和正社長 インタビュー画像1-2

「イベントECサイトとイベント開催の相乗効果が大きい。独身者向けのイベントをまとめているイベントECサイトはなかったが、それを当社がはじめた。さらにイベントECサイトを強化するには良質なコンテンツを充実させなければならないが、当社は自社でイベントを企画し、サイトに掲載してコンテンツを強化した。それと日本航空や新関西国際空港、三井不動産など企業とのコラボレーションで、サイト、イベント、当社のイメージアップができたのではないだろうか。」

一般にECサイトは先行者が大きな利を得やすいが、街コンジャパンは、コンテンツの強化によって先行者利益を得た。全国のイベントを網羅でき、さらにサイトから自社イベントにも送客するという仕組みをつくり上げたのである。

確実な実績に企業と自治体が協賛

サイト運営だけではイベントのノウハウが蓄積されず、イベント開催だけでは集客力と全国展開ができない。この制約を克服するには2つを手がけることだが、該当する有力な事業者が存在しなかった。このことは協賛の獲得にも関係する。イベントに協賛する企業も自治体も実績を重視するから、IPOはきわめて有力な材料になった。

リンクバルが街コン市場で独走できた背景には、いわば競合の不在も挙げられる。吉弘氏は「運が良かった」と話すが、設立以前の個人創業時から、市場性とビジネスモデルを見通せたのだろう。

株式会社リンクバル 吉弘和正社長 インタビュー画像1-3

街コンサイトジャパンの登録者は50万人、掲載イベント数は年間1万5000件を超えた。しかも、まだまだ天井を打ちそうにない。吉弘氏によると「20代~40代の独身者は1000万人以上。サイト登録者は50万人だから、独身者の20分の1にすぎない」。さらに60代以上のシニア市場も開拓する方針だ。

設立以来大切にする「基本」「情熱」「成長」の3原則

当面の課題は3つある。第1にエリアの拡大である。街コンなどのイベント開催エリアは、事業所がある東京、大阪、北海道、名古屋、福岡が中心だが、東北をはじめ中四国、沖縄など全国各地に広げる。第2に、サイトへの掲載イベント数の拡大。そして第3に、サイトのカテゴリーを増やし、たとえば自分磨きなどのコンテンツを拡充させる。

株式会社リンクバル 吉弘和正社長 インタビュー画像1-4

同社は昨年末に設立5年目を迎えたばかりである。この間、大切にしてきたことは3つあるという。何事も基本を大切にすること。情熱をもつこと。成長を意識すること。

41歳で起業して現在46歳の吉弘氏が若い経営者に望むことは、「若い経営者が成功して浮かれてしまうのは仕方がない面もあるが、良いときも浮かれず、悪いときも悲観せず、情熱と成長への意欲をもって淡々と前に進んでほしい。IPOをめざすなら、社会への責任をもつことを強く意識してほしい」。

interviewer

KSG
関 幸四郎

interviewer

経済ジャーナリスト
小野 貴史

引用元:ベンチャータイムス

記事掲載日:2016年4月2日

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