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製造業サービス業

セガサミーホールディングス株式会社 里見治 | あらゆるお客様のニーズに応えるバラエティに富んだ機械を

セガサミーホールディングス株式会社 代表取締役会長兼社長 里見治

お客様をひきつける機種の開発には業界の意識改革が不可欠

3つのモードを暗に意味する4つのステージ。小役が当選するたびに膨らむ期待。どこまで継続するのかわからないバトルボーナス。まったく新しい視点から生まれたパチスロ機「北斗の拳」は、2003年10月に発売されるや否や、圧倒的シェアを獲得。パチスロ史上最大となる累計販売台数62万台を記録した。

「北斗の拳」の大ヒットにより、ホールも活況を呈した。休日ともなると、開店前から多くのユーザーが「北斗の拳」を目当てに列を作った。平日であっても、「北斗の拳」のシマはにぎわいをみせていた。
「パチスロフロアの売上げは「北斗の拳」の導入台数に比例する」とも言われた。

それほどまでに恩恵をもたらした「北斗の拳」。当時を知るホール関係者の多くは、いまも製造販売元のサミーに大きな期待を寄せているのではないだろうか。
その期待に、サミーはどう応えるのか。
そう問うと、セガサミーホールディングス会長兼社長の里見治は表情を引き締めた。

「とくにパチンコにいえることですが、現状、基本的に偶然性による面白さなどを利用した機種の開発が難しく、最終的に確率で大当たりが決まる機種が中心になっています。このようななかでは、演出の部分やギミックを複雑にして差別化を図るしかない。結果的に開発コストがかさみ、台の販売価格に転嫁せざる得なくなる。悪循環に陥り始めています。少子化の影響もありユーザーが減少しているなかでも、多くの方々に遊んでいただくためには、本質的にパチンコ、パチスロ機のゲーム本来の魅力を高めていくしかない。現在のような情報化社会のなか、多くの趣味嗜好をもった人々を取り込むためにも、多種多様なニーズに合致したバラエティに富んだ製品をホールに並べていく必要があると感じています。
そのためにも、私自らも組合団体(注:日本電動式遊技機工業協同組合、略称「日電協」)の理事長として、行政に対し解釈基準の緩和をお願いさせていただいています。射幸性を高めることではなく、あくまでも遊技性の幅を広げるために必要であることをお伝えしています」

台のわかりやすい面白さがファン層拡大の鍵

パチスロ人気が高まった10年ほど前、「北斗の拳」以外のパチスロ台も多くのファンを獲得していた。さらに10年ほど前に遡ると、パチンコフロアもにぎわいをみせていた。両時期に共通していえるのは、射幸性の高い台がホール内に数多く設置されていたことだ。そのため台の射幸性と人気は比例するとの見方もあるが、里見は否定する。

「われわれがパチンコ業界に参入したのは70年代。入賞すると豆ランプが点いてスイッチを押すとじゃらっと玉が出てくるアレンジボールを開発して、ファン層を広げました。射幸性ではなく、わかりやすい面白さで若い人からの支持を集めていったのです」

わかりやすく面白い台が新規ユーザーを取り込むという意味では、パチンコ参加人口が減少していった90年代から現在に至るまでの経緯にも通じるものがある。参加人口が増加していた90年代前半までのホールでは、パチンコを始めるきっかけとして、羽根モノのような偶然性が楽しめる射幸性の低い台が広く親しまれていた。

ところがCR機がホールの主役になり、その高い射幸性が社会問題化した90年代中頃から、参加人口が減少していく。その後、Aタイプ、大量獲得機、AT機、ART機など多様なパチスロ4号機が登場し、人気を博したことによって、増加に転じる。しかし、その4号機も規則改正によってホールから姿を消し、2000年代中頃以降、再び参加人口は減少傾向にある。

このことを踏まえると、射幸性の高い台は業界を活性化させる特効薬になり得ないことがわかる。
「業界としては、異常に射幸性が高い台が生まれないように、自主規制していく必要があります。行政にさまざまなお願いをする以上は、日電協としても、常に目を光らせ、しっかりと自分たちでコントロールしていかなければいけないのです」

信頼を獲得できれば必ず活路を見出せる

参加人口の減少や市場規模の縮小。レジャーの多様化……。パチンコ業界を取り巻く環境は厳しさを増しているが、マイナスの材料ばかりではないと里見は強調する。意外に思う人も多いかもしれないが、安倍政権が推し進めているカジノ構想にもプラス材料が含まれているという。

セガサミーホールディングス株式会社 里見治会長 インタビュー画像1

「カジノがパチンコの競合相手になるとの声も多く聞かれますが、私はそうは思いません。なぜなら、パチンコファンとカジノに興じる層はまったく違うからです。まず、日本国民がカジノに入るためには入場料を支払うなど一定の制限がかかる可能性が高い。また、日本のなかでカジノができたとしてもせいぜい10ヵ所程度。カジノをするためには、電車や場合によっては飛行機に乗って行かなければいけない。地域に密着した、気軽に遊べるパチンコとはまったく異なるものなのです。また、カジノが解禁になれば海外からの観光客が増える。観光業の発展によって国内経済を活性化させることができれば、パチンコ業界にとってもプラスであると考えます」

パチンコ業界も社会の変化を読み解き、いまの社会に合った形に変化させていかなければならない。旧態依然とした環境では、生き残ることはできないだろう。そのためにも、業界の意識変革がいままさに問われているといえよう。

引用元:アミューズメントタイムス

記事掲載日:2014年8月

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