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株式会社VOYAGEGROUP 宇佐美進典 | 「CREED」と「SOUL」に込めた「世界を変える凄いことをする」思い

株式会社VOYAGEGROUP 代表取締役社長兼CEO 宇佐美進典

「2015年働きがいのある会社ランキング」で第一位にランク

アドテクノロジー事業とメディア事業を主力事業とする事業開発会社のVOYAGE GROUPにとって、2015年は2つの記念すべき出来事があった。2月に世界49カ国で活動する調査機関「Great Place to Work® Institute」が実施する「2015年働きがいのある会社ランキング」(社員100~999人部門)で第一位にランクされ、9月には東証マザースから東証一部銘柄に指定されたのである。

「働きがいのある会社ランキング」の上位にランクされるような会社は組織文化を相当に重要視しているが、VOYAGEが影響を受けたのは、かつての親会社サイバーエージェントである。VOYAGE社長の宇佐美進典氏は、2005年から2010年にかけて、サイバー社の取締役にも就任していた。サイバー社の設立は1998年、VOYAGEの設立は1999年。同時期にスタートしたが、サイバー社との勢いの差は何に由来するのだろうか。

株式会社VOYAGEGROUP 宇佐美進典社長 インタビュー画像1−1

宇佐美氏は理念の浸透もそのひとつではないかと考えた。サイバー社の理念は「21世紀を代表する会社を創る」。この理念が社員に浸み込み、仕事への向き合い方やモチベーションの高さに現われていたという。一方、VOYAGEはどうだったのか。

「当時の理念は『シリコンバレーのベンチャーのように』だった。私なりに思いを込めてつくった理念だが、社員はいまひとつピンと来ていなかったようだ。会社の芯や背骨となる理念が浸透していないのは、組織として健全ではないのではないか。これが自分たちの言葉なのだと誇りを持てる理念に見直そうと判断して、全社横断プロジェクトを発足させた」(宇佐美氏)。

社員が「CREED」を話す機会を用意して浸透させる

半年をかけたプロジェクトで策定されたのがCREED(VOYAGE GROUPの価値観)で、①挑戦し続ける②自ら考え、自ら動く③本質を追い求める④圧倒的スピード⑤仲間と事を成す⑥すべてに楽しさを⑦真っ直ぐに、誠実に⑧夢と志、そして情熱――が盛り込まれた。一般にビジョン、価値観、ミッションの順に策定するケースが多く、VOYAGEでもビジョン策定の議論から始めたが、事業ごとにビジョンが異なっていた。

株式会社VOYAGEGROUP 宇佐美進典社長 インタビュー画像1−2

事業全体を包括するビジョンを策定したら、不整合が生じ、あるいは魂のこもった内容に仕上げられないかもしれない。そんな危惧から「どんな事業でも大事にすべき価値観から固めようという結論になった」(宇佐美氏)。その後、社員から、やはりビジョンが欲しいという意見が上がった。

多様な事業を推進する状況で、ひとつのゴールを示すことは難しいが、それぞれの事業のスタート時の思いは共通している。それは、世界を変える凄いことをするという思いだ。この共通の認識から「SOUL」として「360°スゴイ」が掲げられた。

次のステップは浸透のさせ方だが、上から遵守を命じたところで、理解にとどまって浸透にまで至らない。社員の血となり、肉とならない。宇佐美氏が講じた策は、社員がCREEDやSOULを話す機会を設けることだった。採用面接や年2回の人事評価の場でどんどん話すことによって浸透を図ったのである。

株式会社VOYAGEGROUP 宇佐美進典社長 インタビュー画像1−3

半年後ごとの「クルー満足度調査」で社内の問題点を解決

社内体制も整備した。価値観を浸透させ、様々な社内活性化策を実施する担当部署としてコーポレートカルチャー室を設置して、「チーフカルチャーオフィサー」という文化担当役員も配置したのだ。やがて日常的にも、たとえば事業部間で収支が対立した時などに「仲間と事を成そうよ」という発言が自然に出て、調整がつくようになったという。

一方で、社内の問題点の抽出にも注力している。VOYAGEでは航海を意味する社名にちなんで社員を「クルー」と呼んでいるが、5年前から全社員を対象に半年ごとに「クルー満足度調査」を実施している。

アンケート調査で「きちんとした目標設定ができているか」「上司に相談しやすい環境か「異動の希望はないか」「睡眠は十分取れているか」などを質問し、問題を抱えていそうな社員には担当役員や人事担当者などが面談し、解決を図っている。半年ごとに、前回調査と対応策にもとづくケアを行なっているのだ。

こうした取り組みが「働きがいのある会社ランキング」第一位に結実したのだろう。取り組みは社員の離職率にも反映され、IT業界の離職率が年間15~20%とも推計されるなかで、VOYAGEでは10%以下にとどまっている。

株式会社VOYAGEGROUP 宇佐美進典社長 インタビュー画像1−4

「人を軸とした事業開発会社」としてグループ企業は12社

だが、組織文化の形成で各施策と同等に、あるいはそれ以上に問われるのは採用である。宇佐美氏が「経営で大切なのは入口である。若い経営者にもそう助言している」と述べるように、自社の成長発展に適した人材をいかにして採用できるか。

その手段のひとつにVOYAGEが実施しているのはインターンシップで、1日、1週間、2週間、土日など5つのコースを設け、約300人を受け入れている。IT業界の様子だけでなく、社員の言動や社会の空気感から、自分との相性などを考察してもらう。

VOYAGEは自社をIT企業でなく「人を軸とした事業開発会社」と定義し、現在はグループ12社を設立してる。2015年9月期の通期売上高は、「fluct」の導入媒体数が同9月末現在で7000を超えるなどアドテクノロジー事業の好調を受け、前年比16.5%増の177億3000万円、経常利益は11.7%増の21億8900万円を計上。2016年9月期の業績予想はレンジ形式で売上高185億~205億円(前期比4.3増~15.6%増)、経常利益20億~24億円(同8.6%減~9.6%増)と開示している。

宇佐美氏はM&Aも視野に入れ、ITをベースにした総合商社へと業態を進化させてゆく方針である。

株式会社VOYAGEGROUP 宇佐美進典社長 インタビュー画像1−5

無人島インターンシップの時の写真

interviewer

KSG
細川 和人

引用元:ベンチャータイムス

記事掲載日:2015年12月17日

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