LEADERS FILE

日本のこれからを見据えたビジネスリーダーたちの次世代を切り開くメッセージを収録。

FILE NO.097
IT・WEB

株式会社U-NEXT 宇野康秀 | 〝チャンスがある〟業界に焦点を定め Bto Cビジネスで上場のチャンスをうかがう。

株式会社U-NEXT 代表取締役社長 宇野康秀
株式会社ベネフィット・ワン 代表取締役社長 白石徳生

式会社ベネフィット・ワン代表取締役・白石徳生が気になる企業のトップを大胆訪問。
フリートークを交わしながら、成長の秘訣を聞き出すというシリーズ企画。
第14回は、株式会社インテリジェンスを創業、株式会社有線ブロードネットワークス(現・USEN)を
ナスダック・ジャパン(現・東京証券取引所ジャスダック)に上場させ、現在は、大手3社がシェアを分け合う
携帯電話の分野に果敢に挑戦、上場を目指す株式会社U-NEXT代表取締役社長の宇野康秀氏です。

同業がやらない工夫で実績を伸ばしたインテリジェンス

白石 宇野さんはご実家が大阪有線放送社(現USEN)という大企業でありながら、ご自身でインテリジェンスという人材派遣会社を立ち上げられました。ご自分で会社を作ろうと考えたのはいつ頃からですか。

宇野 高校生の頃から起業家になりたいと思っていましたね。

白石 家業を継ぐ選択肢は?

宇野 絶対にない(笑)。

白石 それで、起業までの準備期間としてリクルートコスモスへ入社された。

宇野 そうですね。入社1年ほどでインテリジェンスを作り、上司に退職を申し出たのですが慰留にあい、半年は二束のわらじ。結局1年半在籍しました。

白石 私も当時は人材派遣のテンポラリーセンター(現パソナ)で営業をしていましたから、同社の勢いはよく覚えています。急成長した秘訣って何でしょうか。

宇野 特に何かがあったわけでなく、普通に企業努力しただけなんです。当時の人材派遣のトップはテンポラリーセンターでしたが、それでもシェアは全体の10数パーセント。大手の数社以外は規模の小さい企業5000社程度がシェアを分け合っていた。それで、「こんな“ぬるい”業界はない。きちんと努力すれば80数%のシェアはとれる」と確信しました。当時、就職雑誌向けの募集広告は同じものを使い回すのが当たり前でしたが、こちらは毎回違う広告を作っていた。そんな努力が実ったということでしょうか。

月次1億円の赤字を3年半で収益改善10億円の営業黒字に

白石 ぬるい業界ですか(笑)。いま、宇野さんが注目しているそういう業界ってありますか?

宇野 決してぬるいというわけではありませんが、チャンスがあると感じているのは、通信の分野です。携帯電話は大手3社が価格競争をやっているように見えて、でも実際にはシェアを分け合っている。

白石 ガチの価格競争ではないと。

宇野 ユーザー側からしたら、どこの会社を選んでも月に1万円程度払わないといけない不思議な業界なんです。

白石 通信分野で新規参入の余地はもうないんですか?

宇野 ゼロベースから考えるとハードルが高いですが、これからは他社から移動通信サービスを借り受けて通信サービスを行うMVNO(Mobile Virtual Network Operator)として新規参入するのが主流になると思います。

白石 だからU‐NEXTを始められた。

宇野 そうですね。U‐NEXTでは2つの事業があって、一つ目はパソコン、TV、スマホで観る月定額制の映像配信や電子書籍、音楽など、いわばデジタルコンテンツのプラットフォームビジネス。二つ目が通信です。ドコモの通信網を借りてモバイルサービスを行なっています。

白石 最初はUSENで始められた事業ですよね。

宇野 USENはもともとBtoBがベースです。だから、USENとしても、BtoBとBtoCの事業は完全に分けたほうがよいと判断し、私個人のMBOのような形でU‐NEXTを独立させました。分離する前は、月1億円の赤字だったのですが、U‐NEXTになってから3年半で、10億円程度の営業黒字になりましたね。

白石 3年半で20億円以上の営業益の改善ですか!? それを可能にしている宇野さんの人材マネジメント術をうかがいたいのですが。

宇野 親父の会社を継ぐことになったときは単身で乗り込みました。

白石 もともといた人たちをどうやってまとめたんですか。

宇野 親父は亡くなる間際に、「お前が一緒にやりにくい人を切ってやる」と言ったんです。でも私は、自分の美学かもしれないけれど「一人も切らなくていい」と。社員側からするといつ切られるかという不安もあったのでしょうが、インテリジェンスからは誰も連れて行かずに一人で乗り込んで一緒にやろうとしたので、そこで信頼が生まれたのかなと。

社長経験25年実験的なマネジメントにチャレンジ

白石 でも社員数が多い会社ですから、大変だったのでは?

宇野 社員数はあまり意識しなかった。でもそれまでとはまったく違う組織文化に驚きましたね。社長だけが考えて社員がそれに従うという縦社会で。そのとき思ったのが、社員が働きやすい組織に決まった型はないということでした。

でも、ここU‐NEXTでは、社長業25年の経験から実験的なマネジメントをしているんですよ。たとえば、社員とのコミュニケーションの在り方とか、個人の評価の在り方とか……。

白石 私は社員に対してどうしても細かい指示を出したくなるんですが(笑)

宇野 私も絶対に介入しないというわけではないんですが(笑)、基本的には自分達で解決してもらいます。そのうえで困っていたら言ってきてと。

白石 なるほど。宇野さんの考える企業理念ってありますか。

宇野 インテリジェンス時代に「社会に価値ある何かを…」という理念を作りました。自分たちがやっている仕事が社会にとって何らかの価値につながればと思っています。

白石 長く続いている会社が追求しているものに、利益はもちろん、企業としての社会性がありますね。

宇野 過去にいろいろ経験をさせてもらったから、個人的には、いまは会社をただ大きくすることには興味がなくなりましたね。事業を続けることによる社会への還元というか、たとえば通信費が半額になれば、浮いた分を旅行や外食や教育に回すことができる。「われわれを利用すると、(浮いたコストで)こんなことが新たにできます」とか、誰も手をつけていない分野にチャレンジしたいんです。

白石 宇野さんはトライアスロンや登山もハイレベル。もはや冒険家の域ですよ。私もトライアスロンはやっていますが、とてもかなう次元ではありません(笑)。

宇野 どんな分野でも冒険は好きです(笑)。いつかエベレスト登頂に挑戦したいとは思っています。

白石 現役企業トップとして初のエベレスト登頂をぜひ実現させてください。応援しています!

引用元:CEO社長情報

記事掲載日:2014年7月

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