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株式会社ベクトル 西江肇司 | ネットの普及を追い風に毎年30%の増収増益を続ける5年後にはアジア№1のPR会社を目指す

株式会社ベクトル 代表取締役 西江肇司

広告もPRも未経験、既成概念にとらわれなかったのがよかった

ベクトルは創業1993年という新しい企業だが、急成長を遂げ、今やPR(パブリックリレーションズ)の領域ではリーディングカンパニーとなっている。2012年には「東証マザーズ」市場に上場、14年には東証一部への上場変更も果たしている。これまでなかった斬新なPRの方法を開拓してきたことが、同社の成長の原動力となったと言える。

「自己PRをしてください」などと言うように“PR”は馴染みある言葉だが、どのようなものか、実際にはわかりにくい。PRとは、一般に企業や団体が事業内容や商品・サービスを社会に認知してもらうためのパブリシティ活動を指し、広義の広告事業の一種とされている。通常の広告は、スポンサーがメディアの広告枠を買い取り、その中に宣伝したい内容を盛り込む。しかし、PRは、TV番組の中の特集や、新聞・雑誌・Webの記事の中でニュースとして取り上げてもらい、メディアを通じて、伝えたい内容を社会に広めるところに特色がある。

企業や団体にとって、PRは通常の広告と違い、メディアに広告料金を支払う必要はない。しかも、メディアという第三者のフィルターを通した客観的な情報であれば、視聴者や読者に信用されやすいという利点がある。

PR事業は、広告のカテゴリーの一つとして確立されていて、PR専門の会社がいくつも存在する。ただし、従来のPR会社は、「広報の下請けの仕事が中心でした」と、同社の西江肇司社長は明かす。つまり、企業や団体の広報活動を代行したり、リリース作成をサポートしたりするのが、PR会社のメーンの事業領域だったのである。

株式会社ベクトル 西江肇司社長 インタビュー画像1−1

ところが、ベクトルは、そうしたメーンの領域だけでなく、新たな領域を拡大した。それが「戦略PR」である。広報の一環ではなく、積極的な宣伝活動の一環として宣伝予算からPRを行うというものだ。どのようなPRかと言うと、事業内容や商品・サービスを宣伝するのだが、広告枠を買い取るのではなく、メディアに番組や記事で紹介してもらうように、さまざまな仕掛けをするのである。広告料金を支払わずに紹介してもらうのだから、ニュースバリューがなければならない。例えば、TV局や出版社にこんな風にコンテンツを売り込む。知名度を上げたいクライアント企業から依頼されれば、「おもしろい経営者がいます。インタビューしてみませんか」と、クライアント企業の社長のプロフィールをメディアが興味をもつであろう切り口で紹介し、取材のアレンジをする。その結果、番組や記事でその企業が取り上げられれば、知名度アップに役立つわけだ。

西江社長が、戦略PRに取り組みはじめたころ、広告業界では「広告のスペース以外で、商品やサービスをどうやって宣伝するんだ」と言って、見向きもされなかったという。しかし、それがブルーオーシャンを見出すことにつながった。西江社長は、実は広告代理店やPR会社に勤務した経験はない。「僕は広告やPRの素人でした。かえって既成概念にとらわれなかったのが、よかったのかもしれないですね」と振り返る。

大病を患い8年間の休養 その分、今を生きようという気持ちが強くなった

西江社長はバブル経済真っ盛りの頃、当時もてはやされた「学生起業家」として活躍していた。関西学院大学在学中にイベントサークルを立ち上げ、それを母体に学生向けのセールスプロモーションの会社を興した。今のベクトルである。「自分の好きなことを、ごきげんにやる。これが僕の信条。実は、大病を患って8年間仕事ができなかったことがあって、今を生きようという気持ちがより強くなったのかもしれませんね。ただし、僕は子供のときから好きなことばかりやってきたので、それではさすがにまずいだろうと、一念発起し会社を作ったんです」。

TV局と組んで、商品のタイアップ企画を手がけたりするうちに、PRの重要性に気づく。こんなきっかけがあった。クライアントからTVでの商品紹介を要望され、PR会社に依頼したのだが、予定の番組で商品がオンエアされなかった。苦い経験をもとに、それからは「自分たちでやろう」と、自社でPRも担当するようになった。2000年になると、ベクトルは、宣伝PRをメーンとするPR会社に本格的に衣替えした。

株式会社ベクトル 西江肇司社長 インタビュー画像1−2

時代は追い風が吹いていた。バブル経済崩壊後の「失われた20年」で日本経済は低迷、多くの企業が軒並み広告予算の大幅削減を余儀なくされた。限られた広告費を有効活用するため、リーズナブルな広告料金で大きな宣伝効果が期待できるPRに、注目が集まるようになったのだ。とりわけ、リーマン・ショックがその流れに拍車をかけた。もう一つ、大きなトレンドがある。それはネットの急速な普及、SNSといった新たなメディアの登場だ。既存のマスメディアを介在させなくても、対個人へのダイレクトコミュニケーションが可能になった。そこにPRの余地が広がっている。

PR会社のその先も見据え、アジア№1PR会社を目指し猛進

日本におけるPRの市場規模は推定で約1000億円、広告市場全体の中では60分の1程度を占めるにすぎない。しかし、西江社長は、「PR市場は、毎年二桁くらいは伸びている感じです。当社の売上げ・利益も今後5~10年間は30%ずつ増やせるでしょう」と鼻息が荒い。現在、ベクトルでは年間約1,000以上のPRプロジェクトを抱え、子会社であるPRTIMESのクライアント数は累計1万社を超えるという。「PR会社として既に国内では圧倒的な№1の地位を築いているので、5年後にはアジア№1のPR会社にしたい」と意気込む。

最新ITを活用した新しいPRも、次々と取り入れている。例えば、ネット動画によるPR。ネットでいろいろなサイトを検索していると、画面で動画が自動的に流されていることがあるが、PRであるケースが多いのだ。「企業ニュースをビデオリリース化(動画コンテンツ)し、さらにその動画にアドテクをかけターゲティングをすることで、届けたい人に、動画を届けることが出来る。関心のある動画が流されていれば、PRとは気づかずに、自然に情報を受け取るはずです。」と西江社長は説明する。同社では、企業のIR対策をサポートする「IRTV」も展開し、社長インタビューの動画や、2~3分に編集した企業紹介のビデオなどを配信しているという。ネットには媒体として無限の可能性がある。「ネットなら自前で動画を流せます。ITはどんどん進んでいるので、オンデマンドTV局でPRをするような時代になるでしょう」。

株式会社ベクトル 西江肇司社長 インタビュー画像1−3

同社は、海外でのPR事業の成長性が高いと見て、すでに中国、タイ、ベトナムといった東アジア諸国に進出を果たしている。アジア№1のPR会社になるための布石である。海外事業の拡大ではM&Aも視野に入れており、西江社長は、「現在は景気がよく、多くの会社がオーバーバリューですが、、景気のダウントレンドに入ると、アンダーバリューで会社を買収できると思うので、そのタイミングを狙ってます。」という。それだけでなく、チャンスがあれば、国内でのM&Aの可能性もある。「PRの関連事業が対象になるでしょう。ただし、IT企業は可能性が低いですね。ITはあくまでPRの手段の一つですから、コラボで最新技術を導入したほうがいい。クライアントとのパイプを太くするのが先決です」。

PRの概念を変えてきたベクトルは、いずれPR会社の枠にも収まらなくなるかもしれない。ITの発達によるコミュニケーションの変化は目まぐるしく、PRの役割や位置づけも様変わりしているからだ。「ベクトルは“コミュニケーションファーム”を目指している」という西江社長は、PR会社のその先も見据えているようだ。

interviewer

KSG
細川 和人

引用元:ベンチャータイムス

記事掲載日:2015年8月18日

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