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IT・WEB

株式会社a2media 永山均 | 分社化促し「第二の創業」ベンチャーの精神を持ち続ける

株式会社a2media 代表取締役社長 永山均

a2mediaは企業のIR(投資家向け広報活動)を中心にCSR、PRなどのサポートを行なう企業だ。

主として上場企業のディスクロージャー(法定開示)のサポートを行なう東証一部上場のプロネクサス(旧 亜細亜証券印刷)の企画部門を強化するために2002年に設立され、当初は株主通信などの投資家向け任意開示書類の企画・制作を中心とする事業を手がけてきた。

「もともと私はマーケティングやプロモーションに関わってきたので、その観点をIRツールに持ち込むと分かりやすく面白いものができるんじゃないか。そう考えたのがa2mediaのそもそもですね」と語るのは同社設立当時から社長を務める永山均氏。

永山社長の狙い通り、従来よりも分かりやすく見やすいa2media制作の株主通信は好評を博した。それを入り口に、株主総会での議決内容を株主に分かりやすく伝えるためのパワーポイントによるスライド制作、英文のアニュアルレポート作成などIR全般に活動を広げ、設立2期目(03年)には単年度黒字、3期目(04年)には累損も解消するなど、順調なスタートを切った。

05年には、新サービスとしてインターネット版アンケートサービス「e-株主リサーチ」を開始する。従来は、株主通信にアンケートはがきを添付し、郵送で回答を回収していたが、同社のサービスは、株主通信に専用のサイトのURLを掲載、株主にアクセスしてもらい、モニター登録してもらうもの。現在では2万人のモニターがおり、マーケティングの重要な基盤となっている。

Webを使ったIRコミュニケーションの重要性を見据えて、06年にはWeb制作の株式会社ウィリオを吸収し、Web制作部門を立ちあげた。以降、Web関連業務を積極的に拡大、同年には不動産投資信託(REIT)情報のポータルサイト「ジャパンリートドットコム」を開設した。同社ではもともとJ-REIT関連のWeb作成を請け負っており、多くの不動産投資信託の情報を扱っていた。そのノウハウと実績をベースにREITに特化したサービスを開発、現在では、ジャパンリートドットコムは不動産金融業界のプラットフォームとして広く認められている。

リーマンショックも新規事業で業績回復

設立後数年で急成長を遂げた同社だったが、07年の不動産バブル崩壊、08年にはリーマンショックが起こり、新規上場企業の減少と上場廃止企業の増加で、同社にも逆風が吹き始めた。
「これまでのように金融やIRに特化してばかりではドメインが狭い。これからは会社のポートフォリオを広げていこう、積極的にチャレンジをしていこうと考えました」(永山社長)

その後、ポラロイド社の日本展開のサポートを手掛けるなど、次々と新しい分野に打って出る。09年5月、Webの更新やメンテナンスをする際「メールだけでなく、電話での確認もしてほしい」といったクライアントからの要望に応えるかたちで、愛宕コールセンターを開設した。当初はIRとのシナジーは難しいという見方もあったが、コールセンターの開設によってBPO(business process outsourcing)という新しい軸足を構築できるようになり、再び、業容も拡大基調に転じていった。

ちょうどその頃にスタートしたのが、スリランカに興味のある投資家とスリランカ側の企業をマッチングさせる事業で、現在も継続中である。
さらに企業のCSR活動が高まりを見せつつあった11年4月、環境負荷軽減アクション支援サービス「PROJECT WITH THE EARTH(PRO-WE)」を開始。これは制作物の印刷時に使用する電力を発電する際に発生するCO2に相当する金額を支払い(オフセット)、その金額で日本の森林を元気にする活動を行なうというもので、ディスクロージャー誌、株主通信、会社案内、CSR報告書、アニュアルレポート、商品カタログ等の制作などにおいて、多数の企業から賛同を得ている。
こうした新規分野での業容拡大が奏功し、リーマンショック以降、伸びが鈍化していた売上げも、13年に入ると大きな成長を見せ始める。

「紙のIRツールは07年くらいがピークで徐々にピークアウトしていました。その後リーマンショックもありましたが、Web関連やポラロイド、コールセンター事業などへポートフォリオを拡大したことにより、売上げ自体はほとんど落ちませんでした。すべてのチャレンジに成功したわけではありませんが、既存事業とのシナジーが生まれ、大きく育った事業のほうが多いですね」(永山社長)

13年7月、前述の「ジャパンリートドットコム」を運営する不動産金融部門をJapan REIT株式会社として分社化した。また、15年4月にはコールセンター、BPO業務部門もブレインプレス株式会社として独立させた。

12年に設立10周年を迎え、「第二の創業」をキャッチフレーズにホールディングス化を目指している同社。相次ぐ分社化にはこうした動きを加速させたいという狙いのほかに、同社の企業風土とも深く関わっている。

a2mediaには、もともと個人の成長が企業の成長につながるという考えがベースにある。会社のリソースを使って新しいビジネスをどんどん展開していこうというDNAもある。こうした土壌があるからこそ、自分で新規事業を立ち上げようという意欲が生まれ、分社化による独立を目指そうというモチベーションも高められていく。

a2mediaという社名は「原点からの発想」という意味だ。常にチャレンジ精神の原点を忘れない姿勢は、これからも新しいビジネスを生み出し続けていくに違いない。

引用元:CEO社長情報

記事掲載日:2015年5月

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