LEADERS FILE

日本のこれからを見据えたビジネスリーダーたちの次世代を切り開くメッセージを収録。

FILE NO.034

株式会社アドウェイズ 岡村陽久 | 30代創業社長が貫く「教育しない」という育成方針

株式会社アドウェイズ 代表取締役社長 岡村陽久
エン・ジャパン株式会社 代表取締役会長 越智通勝
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越智 岡村社長の社員に対する思い、社員にどうなってほしいとお考えなのか。基本的な考え方をお聞かせいただけますか。

岡村 当社の理念は「金儲けより人儲け」です。創業当初からあったわけではありません。会社は売上げと利益を上げることは当然重要ですが、それよりも社員、お客様、株主などの人のほうが大事だなと、だんだん見えてくるようになりました。5年ぐらい経ってからの話です。そういう人たちに当社にかかわって良かった、儲かったと思っていただけることが「金儲けより人儲け」にあたるのです。優先順位は、一番目が社員、二番目が顧客・社会、三番目が株主です。

越智 社員第一主義と言ってもいいその理由は何でしょうか。どんな経緯でこの順番になったのでしょうか。

岡村 当社に入社した社員が毎日高いモチベーションで働き、成長し、入社して良かったと思える。そういう会社にしていきたいというのが「金儲けより人儲け」の根底にあります。顧客が先か、社員が先かは凄く悩みましたが、株主よりも上という考えははっきりしていました。

当社サービスは、99%が人、1%がサーバーというウエイトで成り立っています。サービスの企画も、開発も、提供も、改善も行なうのは当社の社員です。社員が働いて良かったなと思える環境でなければ、お客様に感動と利益を与えるサービスを提供できません。社員をまず一番に位置づけ、その社員が取引先と社会を第一に考える。そうなれば、おのずと売上げ、利益にはね返ってくるのではないか。そう考えて、社員を第一にもってきたのです。

全社員の約一割
出戻り組の活躍が成長のドライブに

越智 御社は人への依存度が高い事業をされていますが、人材の大切さを実感された出来事はありましたか。

岡村 私ともうひとりの創業者は、換気扇フィルターの訪問販売をしていました。それが突然インターネットの世界に入ったのです。ただ将来性があるという理由だけで。二人ともまったくの素人。当然優秀な人材は入社してくれません。そこで、専門学校の前で学生に声をかけ、メール向け広告のシステムが作れるか聞いて回りました。ある学生には、50万円渡してシステムを組んでもらおうとしたこともあります。完成しませんでした。散々な苦労の末、事業をスタートできました。偶然、優秀なエンジニアが参加してくれたからです。それはもちろん大切にしました。その後は、新しいサービスを次から次へと提供できるようになって、お客様のニーズにどんどん応えられるようになった。売上げも上がり、社員を増やせるようになりました。創業当時は人が一人増えると、これまで不可能だった仕事が可能になり、会社がどんどん変わっていくことを実感できました。

越智 岡村社長はインターネットの素人、創業当初から人に頼らざるを得ない面があった。それを強みに変えることができたから、ここまで成長できた。所謂「ひとたらし」ですね。(笑)

次に採用についてうかがいますが、採用の方針についてお話しいただけますか。

岡村 仮に当社に入社されなかった方でも、将来ご縁があるかもしれません。「5年後、うちに来てくれるかもしれない」「取引先になってくれるかもしれない」、そういうことを意識し取り組んでいます。

越智 応募者に対し、お客様として丁寧に接しておられるのですね。

岡村 そうです。また、辞めていった社員とは、実は、その後もしっかりつながっています。新しいプロジェクトを立ち上げるときは、いつも人手不足です。すると彼らに連絡をとり、片っ端から声をかけています。おかげで強力なチームがすぐにできあがりますね。いま、出戻り組は約30人。国内の社員数が約400人ですから、10%近くが出戻りということになります。彼らの活躍ぬきに当社の成長は語れません。

チャレンジングな会社からのメッセージ
新卒社長を募集中

越智 御社のグループ会社(ADWAYS24)では、社長を募集されていますね。しかも、新卒募集で、年俸が600万円。なかなかない思い切った例だと思います。

岡村 われわれは新しいことに次々とチャレンジし、海外にも積極的に出て行っています。ベンチャースピリットを常に意識しています。ところが規模が大きくなり、上場もし、オフィスもきれいになると、社員の中にも安心感が出るようになりました。「この会社に入れば何とかしてくれるのではないか」と。そういう安定志向の新卒が増えると、当社は新卒になめられる会社になってしまう。そうならないために、社長募集を始めたのです。新卒にいきなり会社を任せるということほど、「チャレンジングな企業」というメッセージはない。新人にも責任を持たせ、新しい事業を任せていく会社であるということが伝えられると考えています。

越智 ところで、御社は地方大学出身の学生を積極的に採用されていますね。

岡村 これまで入社してきた新卒社員を分析して、意外な事実を発見しました。定着率の高い社員の割合、入社後にユニットリーダーやマネージャーに昇格して活躍している社員の比率を調べると、地方採用が都内採用の3倍になっていました。この分析結果から、地方の大学出身者にウエイトを置いて採用するようになりました。

越智 地方の学生のほうが人材として優秀なのでしょうか。地方の学生には安定志向者が多いという話も聞きますが。

岡村 学生自身が優秀かどうかという問題ではなく、アドウェイズに合うか合わないかということなのです。アドウェイズという組織の水に合えば、その人本来の実力を発揮できるという考え方ですが、地方の大学出身者のほうが当社の社風に合う傾向が強いようです。

越智 どういうところが合うのでしょうか。一般に地方の学生は素朴で真面目な傾向が強く、一方、都会の学生はすれているとも言われていますね。(笑)

岡村 素直さでしょう。「できない理由」を探してしまうタイプの賢さはベンチャー企業には向いていません。「われわれは世界トップの企業を倒すぞ!」と盛り上がることがあります。理屈が勝ってしまうような人は即座に「無理でしょう」と考え盛り上がりません。とにかく奇跡を起こしてやろうとか、周りができないと思うことにチャレンジしてやろうとか。そういう熱い想いが、ベンチャースピリットなのです。その意味で、素直さ、謙虚さが重要になってきます。

経営会議で新人の業務を決定。
売上げが落ちてもかまわない

越智 ベンチャー企業では労働時間が長いことを理由に辞める人が多いのですが、辞めさせない工夫を何かされていますか。

岡村 こういう人が入ってきたら長続きしないで辞める、というパターンが見えてきました。長時間労働だから辞める。教育制度がない、福利厚生がないなど会社らしくないから辞める。こうしたパターンです。でも、それは大体事実だから否定しても仕方がない。ですから、会社説明会ではそれらを一切隠さずに話しています。「朝9時から深夜まで働かないと納期に間に合わない」、「当社には福利厚生がないと思ってください。あるのは給料と社会保険だけです」と、あえて大げさに話しています。それなりに制度は充実しているのですが。

越智 御社には「教育しないのが育成方針」というスローガンがありますね。その趣旨は何ですか。

岡村 大胆に仕事を任せ、実践を通してこそ人は成長すると考えています。たとえば、一時的にある事業の売上げが落ちてもいいから新人に任せる。入社後の導入研修を終えたら、経営会議で、個々の新人に任せる内容を決めています。

中途が活躍できない、そんな会社だとは思われたくない

越智 現在、人材教育に関する問題点としてお考えになっていることはありますか。

岡村 当社は採用と教育については力を入れてきましたが、この二つに比べて社員の評価方法が弱い。私自身、評価の重要性をよく理解できていません。評価の大切さとは何でしょうか。

越智 御社は、いまの成長段階で、とくに評価をお考えになる必要はございません。会社が伸びているときには多くの昇進するポストや、成長するチャンスがたくさんあるので困りません。業績が踊り場に差しかかる頃にはポストが不足して、一定の年数を経れば誰もが上がれるという状況はなくなります。そこで多くの企業がこの段階で職能資格制度などを導入します。平均年齢も上がり、給与格差も目立ってきます。そこで納得性の高い評価基準が必要になってくるのです。自然と現場から不満が上がってくるので、その時にお考えになっても、遅くないと思います。

岡村 評価については、もう一つ課題をかかえています。当社は新卒と中途の比率が半々ですが、新卒のほうが社風に合いやすいので評価が高くなる傾向があります。中途は新卒に比べて活躍できない会社、そういう目で社員たちに見られているんじゃないか、という悩みがあるのです。

越智 素直な新卒は可愛いものです。同質な人間だけの組織は弱い。更なる発展には、異質な人間を受け入れる必要があります。ただ社風において、譲っても良い点と、譲れない点をお決めになってはいかがでしょうか。

また、中途者の抜擢人事をあえて行ない、新卒の連中に安心感を与えないことです。中途は疎外感を持ちがちなので、意図的な演出が必要です。ぜひ実行されたらよいと思います。新卒も中途も力を発揮できる風土づくりに、今後期待しています。本日は、ありがとうございました。

引用元:CEO社長情報

記事掲載日:2012年10月

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