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株式会社ベルーナ 安野清 | 経営はチャレンジ。でも新しい試みは「たまに当たればいい」くらいに位置づけることが大切

株式会社ベルーナ 代表取締役社長 安野清
株式会社アスキー 創業者 西和彦
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片や通販業界の雄にして、経営の神様、片やアスキー創業者にしてIT業界のレジェンド。
この異色ともいえる対談には、意外な共通点があった。

西 会社を始めたのは、お互い1977年(昭和52年)なんですが、安野さんは、どうして起業しようと考えたんですか?

安野 実は、起業しようと初めから考えていたわけじゃないんです。たまたま親戚がハンコを売っていて、「面白そうだから手伝わせてくれ」といって、ハンコの訪問販売を始めたのがきっかけ。それが68年です。当時、(同世代の)会社員の月給が3万5000円くらい。僕は月に12、13万円は稼ぎましたから、儲かりました。それから5年くらいたって、新聞折込みチラシで通販も始めたんです。総合カタログの通販を始めたのは、83年くらいからです。

西 僕らが会社を始めたころは、景気が悪かったですよね。でも、景気が悪くても、中には伸びる商売のセグメントもある。趣味の世界では、好きな人は景気に関係なく、欲しいものは欲しい。それで、僕はコンピュータの雑誌に目をつけたんです。コンピュータはまだ先物買いの趣味の世界だったから。ところで、通販の顧客は、やはり女性が多いのですか。

安野 ほとんど女性ですね。

西 安野さんにすごく聞きたかったんですが、ベルーナはなぜ女性向けにあんなに売れるのかと。家電のTV通販が売れるのはわかるんです。型の古い商品を安く仕入れて、値打ちのありそうなイメージをうまく出して、値引きして、金利なしでバンバン売る。この商法は男性向けだから成り立つんでしょうが、ベルーナは違うわけでしょう。

安野 通販はルーツがいろいろあるんです。例えば、ジャパネットたかたさんはラジオで宣伝するスタイルで、ニッセンさんはカタログのダイレクトマーケティング。ベルーナはもともと頒布会でした。たとえば、セット商品を1カ月に1個ずつ分割で売って1年で揃えてもらうといった売り方。頒布会方式の通販会社は昔は200社くらいあって、全国規模の大手もいくつもありました。しかし、いまではほとんどなくなってしまった。

西 それはどうして?

安野 一つは収支のバランスを取るのが難しいことでしょうか。通販は広告宣伝費がかさみます。それでも十分な売上げがあれば成り立つんですが、手形決済だから、いつも一定の手元資金を確保しておかないといけない。資金繰りが大変なんです。

もう一つは過当競争でしょうね。当時は取扱いカテゴリーが限られていたんです。食器とか、エプロンやハンカチなどのワンマイルウエア(身近な場所に出かける部屋着)とか、手芸品とか、そうしたカテゴリーのマーケットは大きくない。そこに、200社もひしめき合っていたわけですから。

西 その中でベルーナが生き残り、成長できた秘訣は何でしょう。

安野 うちは75年ころから、商品を毎月1個ずつでなく、セット一括で先渡しする方式を編み出したんです。支払い方法も分割払いOKですが、一括払いのお客様には割引をした。それが支持されたのではないかと思います。

西 通販の市場として、各地域ごとに見た場合はどうですか?

安野 東京は市場としてのボリュームは大きいですが、業務効率は地方のほうが高いですね。たとえば、北海道の人口構成比は5%くらいですが、客数や売上げの構成比では7〜8%になりますから。

西 92〜93年くらいからインターネットが普及し始めました。どんな影響がありましたか?

安野 ベルーナの場合、顧客はほとんどが女性で、中心は50〜60代なので、大きな影響はまだないんです。しかし、ここ5年で急速にネット通販が増えました。ネット通販の売上げ構成比を見ると、50〜60代は12〜13%ですが、20〜30代は50%になっています。スマートフォンやタブレット端末から申し込む人も多いですよ。

西 通販事業で一番大切なことは何ですか?

安野 広告宣伝費のコントロールですね。通販はカタログ印刷、配送費などいろいろなコストがかかる。もちろん、状況によって売上げに占める広告宣伝費率は変わる。たとえば、顧客リストの収集には初期投資がかかりますから、広告宣伝費率は高くなりますが、リストが活用できてくると下がります。それに、商品原価とのバランスによって、かけられる広告宣伝費も変わってくる。たとえば、サプリメントのような商品は原価率が比較的低いので、あれだけ広告を打っても大丈夫なんです。逆に、家具や雑貨、ブランド品などは原価が高いので、それほど広告宣伝費はかけられません。ベルーナの場合、顧客リストの活用により広告宣伝費率をコントロールしているので、商品が変わっても利益が出せるんです。

西 本の場合は、書店の在庫で決まりますね。出版社は本を印刷しすぎると必ず潰れます。アスキーは週刊誌を発行していたんですが、最初は売れなかった。そこで考えたんです。人間は気まぐれなもので、書店にたくさん置いてあると買わない。だから、実売部数の1割アップしか印刷しなかった。そうしたら、売り切れるんです。でも部数は次も、その次も同じ数。そして売り切れが3週続くと、雑誌が書店に並んだとたん、直ぐに売り切れるようになるんです。読者が飢餓感を持ってくれるんですね。その次の号は雑誌を3割増しで印刷し、また生産調整をする。これを続けていったら、部数が20万部、ピーク時には30万部まで伸びました。

安野 売り切れ御免にする! それはいいですね。でも、通販ではなかなかできない。お客様に「入荷までもう少し待ってください」と言ってしまいます。昔は、納品まで1カ月かかるのが普通でした。最長で半年待ってもらったこともありますね。

西 半年ですか! アスキーは週刊誌でしたから。そういえば、通販でもアマゾンは納品までが早い。

安野 あのスピードはすごいですよね。ベルーナも将来的には即日納品体制に移行する予定です。お客様を待たせるとキャンセルが出て、注文に対する実売率が下がってしまうので、スピードは重要ですね。

西 お客様は待たせないに限ると思います。僕はいま、オーディオ機器と電子書籍のビジネスをやっていて、私の会社のオーディオセットは全部で300万円、アンプだけでも100万円しますが、値段の割には、有り難いことですが、よく売れます。なぜかというと、興味を持ってもらったお客様のところには、なるべくその日のうちにデモの機器を持っていき、音を聞いてもらうんです。デモすれば、買ってもらえる。こっちのものです。嗜好品なので、好きな人は100万円くらいまでなら衝動買いしてくださいます。高額で少量生産ですから儲かりませんけど。でも、オーディオはよいものなら、中古でも転売できるんですよ。本なんてリサイクルショップに持っていっても、買値の10%にしかなりませんが、100万円のオーディオは、10年後に60万円で売れたりします。

安野 電子書籍のほうはどうですか?

西 ネット電子書籍は、印刷されたリアル本の半額で読めるというシステムになってきています。でも、ネットで本を読んだ人のなかで、後になってリアル本を手に取りたいという人も、3分の1くらいいらっしゃるんですよ。

安野 環境はすごく変化していますよね。対応していかないと。

西 そういえば、僕が安野さんに初めてお会いしたのも、銀座でした。

安野 外に出て見聞を広めたり、人脈を広げたり、時代の風を感じたりすることは大事ですね。同業の動きとか、儲かっている会社の情報とか、常にアンテナを張っていないと入ってこない。トレンドに遅れてはダメですが、先を行きすぎてもダメ。たとえば、ファッションのデザインが斬新すぎると、お客様がついてきません。

西 安野さんは、どんな会社を目指しておられますか?

安野 失敗を恐れずに、チャレンジを続ける会社でありたいですね。でも、新しい試みについては、「たまに当たればいいや」と期待しすぎないこと。成功率は1割でも高いと思いますね。新しいことをやれば、失敗するのは当たり前ですから。投資を続けるには、会社全体が儲かっていないとダメなんですが、多少の失敗があったほうが、むしろいい戒めになる。事業のうち、8割が黒字、1割が収支トントン、1割が赤字といったバランスがいいのではないでしょうか。

西 いい話ですね。ベルーナを見ていて感じるのは、本社を上尾市に置いていることが強さの秘訣ではないかと。首都圏郊外の優秀な主婦がスタッフとしておおぜい集まってくれます。それに、組織がすばらしい。私の感想ですが、管理職の意思決定が速く、トップの意志を即実行する機動力がある。ベルーナの売上高は、今の10倍は伸びるんじゃないですか。

受発注業務のスピードを上げるだけでも、売上げはすぐに倍増しますよ。ヒューレット・パッカード(HP)は、「社内メールを48時間以内に返信しなかったら、内容に同意したとみなす」という仕組みにして、意思決定を迅速化させました。そうしたら、13年で売上げが10倍になった。米国のパソコンメーカーで残っているのは、HPとデルくらい。IBMは中国に事業を売却してしまいました。

安野 中国といえば、(尖閣諸島領有権問題で)うちも決して人ごとではないですよ。直接、間接を含めれば、ベルーナで扱う商品は8割が中国製ですから。

西 生産拠点を台湾に移したらどうでしょうか。台湾は携帯コンピュータ産業が韓国との競争に負け、経済はかなりダウンしているそうです。人はすぐに集まりますよ。

安野 日本市場は成長に限界がある。海外市場はどうでしょうか?

西 あるコンピュータソフトの著作権の調査員に聞いたんですが、本当に儲かっている会社というのは、違法コピーを使っていない会社だそうです。東アジアで儲かっている会社は、日本には100社、中国には1000社もある。でも、同じレベルで儲かっている会社は韓国には5社しかないそうです。中国経済は確かに力をつけているが、韓国経済の内情は厳しいことがうかがえます。ところで、通販の販路は、これからどうなるとお考えですか?

安野 うちもネットが中心になるでしょうが、カタログも残ると思います。どちらか一方だけにはならない。紙媒体とネットの併用ということになるでしょうね。日本では当面、新聞、雑誌、チラシといった紙媒体はすたれないでしょう。サプリメントのテレビCMも続くと思います。

西 将来に向けて、どんな布石を打っておられますか?

安野 ベルーナは、二ケタ成長を何とか維持しようと奮闘中です。強化しているのは、実はリアル店舗なんですよ。すでに呉服店が45店舗あります。レディスファッションも今期10店舗オープンします。100坪以上の大型店を出店する計画もあります。リアル店舗は、通販を上回る主力事業になるかもしれません。いまが勝負どころですね。

引用元:CEO社長情報

記事掲載日:2012年10月

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