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日本のこれからを見据えたビジネスリーダーたちの次世代を切り開くメッセージを収録。

FILE NO.0260
EC事業支援

株式会社エスアイアソシエイツ 岩井淳行 | EC支援のスペシャリスト。顧客企業のEC事業部として、良い物が売れていく仕組みづくりを支援する

株式会社エスアイアソシエイツ 代表取締役社長 岩井淳行

20年以上前からECの可能性に目を付け、事業を展開してきた同社。WEBシステム開発、ECサイトの運用の実績から独自のフレームワークも開発。働くエンジニアやECを始めるお客様を幸せにしたいという岩井社長の想いのもと、更なる高みを目指して成長を続ける同社の歴史を聞く。

 

会社設立経緯

私(岩井社長)は、新卒でコンピューターの専門商社に入社し7年勤めた後、2000年にECを扱うベンチャー企業にジョインしました。転職のきっかけは、学生時代に没頭していたサッカー部の先輩からお誘いを受けたことでした。その際、私から先輩へ2つ質問しました。1つ目は「事業を発展させる上で、私に求めること」です。回答は、コンピューターの専門商社で実績を積み上げた、営業職を担ってほしいということでした。2つ目は「事業の内容」です。その時に初めて「EC」の存在を知りました。「Electronic Commerceと言い、アメリカでは相当な勢いで伸びている市場」と聞きましたが、2000年前後の日本では、ホームページが世間に出始めた段階で、インターネットでモノが買えるということを世間では知られていない状況でした。当然ながら、私も知りませんでした。その一方で、アメリカでは何兆ドルという市場が見込まれている状況でした。そのため、私には未知の分野でしたが、私が前職で携わっていたコンピューターのインターフェース市場と、ECの市場を比較したときに、ECには非常に可能性と興味が湧き、私は転職を決意したのです。

その後、20007月に私は入社し、同社は200012月に、当日のマザーズ市場(現在のグロース市場)に上場を果たしました。同社はパッケージのベンダー(メーカー)でしたので、私の前職では会う機会のなかった、コンピューターメーカーの部長や中小企業の経営者と共に新鮮な気持ちで仕事に従事しておりました。その中で、小規模でも沢山の優良企業があることや各社の企業理念やビジョンを知り、私の視野も広がっていきました。
当時の日本のEC市場は、2000年頃から少しずつ伸びてきましたが、ECを始めるには、1000万円以上の費用を要する状況でした。そのような環境下で、当時の私たち世間の相場の半額~1/3の価格でECのパッケージを販売していましたので、市場にも受け入れられて、問い合わせが途絶えることのない状態でした。そのため、営業担当として入社した私は、新規企業を開拓する業務でしたが市場の成長と共に問い合わせに忙殺されていました。しかし、市場がまだ成熟していなかったとこともあり、ECパッケージを提供していたとは言え、私たちも試行錯誤の日々で、お客様も手探りでEC事業の発展に取り組まなければならない状況でした。実態としては、プロとしてお客様の発展を支援する私たちが、お客様に対して責務を果たせていませんでした。そのため、現状を打破することを目的とした、改善プロジェクトを発足しますが、始まった案件毎にトラブルが発生して、トラブル対応に従事するためにエンジニアが連日徹夜で働き続けました。エンジニアの中には、病気になったり、耐えられず逃げ出してしまったりと精神的に追い込まれる状態が続きました。ECの市場に魅力を感じて新天地での仕事に従事しましたが、会社経営者の判断で実力のあるエンジニアが病気になってしまったり、退職してしまったり、前向きに仕事ができない環境になってしまうということも沢山学びました。その後、エンジニアの労働環境を変えて、働きやすく、お客様へ着実に貢献できる会社を創ることを決意しました。社名は創業メンバー3名の頭文字を取って、SIAと名付けました。また語呂で、SI(システムインテグレーション)、共同体という意味のアソシエイツと名付けました。共同体には、パートナーに対しても上下関係を持たず、イーブンな関係でお互い切磋琢磨して向上し、幸せになろうというという想いを込めました。

試行錯誤して誕生したサービス

会社を創業した20042月の時点では、自社サービスはありませんでした。受託開発を主に、知人から紹介を受けたりしながら、お客様と継続して良い関係を築けるように、11つの仕事を丁寧に大切にしていきました。私は前職の経験から常々、開発者目線や営業目線だけではEC運営のお客様の理解は深まらないと感じており、2005年からは、自社でもECの運営・運用を始めました。サービス内容は、「チーズハニー」というチーズとハチミツのマリアージュの販売やチーズに合うワインなどの関連製品も販売しました。サービス内容を決定した背景は、チーズプロフェッショナルという、チーズの資格を持っているメンバーと出会い、チーズの可能性を知ったことです。現在は、世界中の様々なチーズがスーパーなどでも販売されていますが、当時は、ナチュラルチーズは殆ど市場に出ていない状況でした。店頭での販売が普及していないチーズを、更に普及していないECで販売するわけですから、様々な難題にぶつかりました。それでも諦めずにPDCA10年近く回し続けました。

また、同時並行で受託開発も進めていき、何十社と取引先が増えていきました。小規模の私たちにご依頼いただけることは本当に有り難いことですから、11社のご依頼に対して、各々独自のソフトウェアを開発していきました。その中で、私たちは自社サービスの開発に辿り着きました。それは、新たなお客様からご依頼いただいた内容が、過去に開発したソフトウェアの内容と類似する部分もあることです。言い換えると、過去に開発したものと類似した内容を再度開発する時間を省けるのです。ソフトウェアのため、ある程度部品化していき、依頼内容に応じて既存の部品を活用し、無い部品は開発してお客様から対価をいただくというモデルにできるのではないかと考えました。そして2010年から2011年にかけて、ECシステム構築のEverCart(エバーカート)という、自社のフレームワークを開発しました。それが今も我々の受託開発と、ECサイト運営支援サービスShopAssist(ショップアシスト)のベースになっています。

その後も私たちは壁にぶつかりました。私たちが支援する取引先は「ECに対応できる社員をアサインできない」ことです。多くの取引先で目にしたことは、EC事業の担当者へ、他業務と兼務されている方をアサインしたり、ECに対しての知識がない方をアサインするのです。当然のことながら、ECの事業を成長させていくには、知識や経験を積み上げていき、PDCAを回し続ける必要があります。また、他業務と兼務する場合は、EC事業の業績向上に向けた時間確保に課題を抱えざるを得ません。なぜなら、私たちのチーズハニーも同じ課題を抱えたからです。例えば、チーズは秋以降からクリスマスシーズンに最も売れるので、膨大な出荷業務に時間を要します。本来担当者は、食べ合わせの提案や企画に時間を割く必要がありますが、売れれば売れるほど、膨大な出荷指示等の対応に追われていくので、売れることが苦痛にすら感じてしまいます。本来担当者が行いたいと思っていた食べ合わせの提案や企画なども、全くできない状況でした。私たちプロですら、エンジン(EC)を置いて、デザイナーを置いて作業していてもこの状態であれば、一般企業の担当者が1人で全てを行うのは非常に厳しいのではないかと感じました。

この課題を解決するために誕生したのが、先ほども申し上げました「Shop Assist(ショップアシスト)」です。私たちが、エンジン(EC)からデザイナー、ディレクター、分析・コンサルティングまで、全てを代行するというサービスです。つまり、お客様企業のEC事業部となり、情報を共有しながら、一緒に売上を上げていくことを目的に誕生したサービスです。

良い物が売れていく仕組みづくりを支援する

ECB2C市場は2019年で19兆円、2020年では物販だけを見ると20%上がっています。2019年から2020年にかけて、日本のGDP27%くらい低下していますが、ECの市場は物販では伸びているのです。この市場はまだまだ伸びると言われています。しかし私には、ECのベンダーの多くは、そこにあぐらをかいているようにも映っています。今ベンダーはそれなりに成功している企業も多いです。付属するマーケティング会社、ネット広告、アフィリエイト広告、パッケージベンダー、SIや決済。伸びている企業は非常に多いと思います。しかし、果たしてECを運用している会社がどれくらい伸びているのかというと、日本はまだまだだと感じています。アメリカですとアマゾンなどのトップクラスの企業になっていますが、日本ではせいぜい楽天、ZOZOYahoo!といった数少ない企業で、伸びている市場の割には苦労をしている企業が多いです。そのため、ECの市場を盛り上げ、ECの市場をもっと伸ばすためには、「物(商品)を持っている中小企業の商品がしっかりと売れて行く環境」を作らなければならないと考えます。

私は、日本にはまだまだ「埋もれている良い物(商品)」が沢山あると感じています。地方のみでの展開や、職人が作るのみで販売できていない物や、発掘できていない物などがあると考えます。我々の次の挑戦は、「日本の良い物を発掘し、ブランディングし、世の中に提供していくこと」です。大手モールに出して、比較されて売れているような物や、金額感だけで売れているような物は、この先淘汰されていくでしょう。特徴がなく、コモディティ化しやすい物は、市場に残れないと考えるからです。地方に目を向けると、物はあるがブランディングに力を入れていない、力の入れ方が分からない、力を入れなくともある程度は売れているため現状で満足していると言う声も聞きます。弊社は今までは「Shop Assist(ショップアシスト)を使ってみませんか?」という営業スタイルでしたが、今後は「良い物をブランディングして、日本に広めていきませんか?」という声かけに変わると考えています。ブランディングとECを掛け合わせて、「ネットで良い物が売れていく仕組みづくりのコンサルティング」を、世の中に提供していきます。

書籍『ECを始めるなら別会社を作りなさい』出版にあたり

ECサイトをやらなければならない」と思っている企業や「良い物を作ったら、売れるのではないか」と考える企業が多いのではないでしょうか。しかし、重要なことは「売り方」です。コロナ禍を経て、商品購入の行動も大きく変化しました。今までは、百貨店に卸していれば売れた状況が変化し、販路に悩んでいる企業も多いでしょう。「何から始めればいいのか」「ECはハードルが高い」「ECを始めるためにスタッフを雇わないといけない」「社内で少しネットができそうな人にやらせたらできるのか」という悩みは絶えないでしょう。我々は、『事業再生(発展)請負企業』を掲げて、プロフェッショナルを自負し、日々の業務に取り組んでいます。自社で人を雇用して成果に繋げられていないことや、大手モールに任せて失敗したケースなどを多数見てきました。

混沌とした時代だからこそ、我々がそのような方々の悩みを解決し、ECを通じて業績を伸ばす方法を広く世間に発信したいと考えています。

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