サイトの月間訪問者数1500万人 3事業でサーキュレーションエコノミー市場へ
DeNAから取得したNETSEAが大幅な増収に寄与
国内最大級のショッピング・オークション一括相場検索・価格比較サイト「aucfan.com」を運営するオークファンは、2015年9月期を初年度に17年9月期にかけて、新中期経営計画「NEWパラダイム2017」を進めている。同社はこの期間を「戦略的投資フェーズ」と位置づけ、18年9月期以降は「成長加速フェーズ」に移行する方針だ。
今期第一四半期(15年10~12月)が売上高5億1300万円(76・8%増)、営業利益8300万円(122・7%増)、経常利益1億100万円(162・4%増)と好調だったのも、「戦略的投資」が順調に進んでいるからだ。
EC市場の流通額拡大も追い風となったが、15年7月にDeNAから12億5000万円で買収したBtoBマーケットプレイス事業のNETSEAが、増収増益に寄与したのである。NETSEAはサプライヤー約5000社、バイヤー約25万人、年間流通額約80億円の規模で、DeNAと数年がかりの交渉で子会社化した。
さらに15年にはマイニングブラウニー(データ収集・分析プラットフォーム)を子会社化、リネットジャパングループ(パソコン・小型家電の宅配回収)、デジサーブ(中小企業向けBtoB取引プラットフォーム)などに出資した。16年に入ってからは、ドリームインキュベータの子会社で流通業や製造業の在庫流動化を支援するリバリューを買収し、在庫担保融資やフィンテックなどに進出する基盤を固めた。
シナジーを見込める企業に対しては株式を過半数取得する方針
同社の足跡を概観しておきたい。設立は07年。当初の2年は毎月赤字を出しつづけ、武永氏が以前に経営していた会社の売却で得た自己資金も底を突き、存続の危機に瀕していた。軌道に乗ったのは09年に実施したプレミアム会員制度の導入である。当時獲得した会員は1万人程度だったが、これで黒字化できた。
社長の武永修一氏は「きちんとしたサービスを提供すれば毎月、継続的に黒字を出せる。黒字の範囲で投資を行なっていけばよいと思えるようになった」と振り返る。会員数の獲得に加えSEO対策に地道に取り組んだ。マニアックな商品になるほど同社がキーワード検索で上位に登場し、2年後に、訪問者数からプレミアム会員への移行というサイクルが廻り始めるようになった。当初100万人だった月間訪問者数は、現在では1500万人に達している。
2013年の東証マザーズ上場も大きな転機になった。「当社にとってM&Aや出資を積極的に展開し、良い人材を獲得する契機となった」(武永氏)。
上場以降、出資と買収を果敢に進めているが、どんな方針で展開しているのだろか。
武永氏は次のように語る。
「対象は上場か売却によるキャピタルゲインを期待できる企業か、シナジーを見込める企業のどちらかである。目的によって出資比率を分け、前者であれば1000~3000万円を出資する場合もある。シナジーを見込める企業に対しては株式を100%取得する方針を立てている」。
子会社化の案件を含め、出資はすべてどの案件も仲介会社を通さずに、武永氏の人脈から相手先と直に行っている。仲介会社から「何か案件がないだろうか?と聞かれる状態になってきた(笑)」という。
プロファイリングをベースに人的ネットワークを拡大
武永氏が豊富な人的ネットワークを築いたのは、趣味でもあるプロファイリングがベースになったようだ。
「この人にはこういうニーズがあったなとか、これはこの人に聞いたほうがいいなとか、こまめにメモしている。だから何か相談を受けたら『その話だったらAさんとBさんだ』とフェイスブックで紹介したり、以前から地道にやってきた。こうした行動が広まって、色々な情報のハブになってきた。プロファイリングが好きなことが、僕個人の強みになったのかなと思う」。
周囲からは「すべてにフラットで何事にも等距離で話を聞いてくれると思って欲しい」。武永氏は、エンジニア出身でも営業マン出身でもなく、あるいは組織マネジメントの専門家でもない。だから何事にもこだわりがなく「何でもちょっと知っている素人」なのだが、この特性は時流の察知に有利に働きやすい。上場後の展開はその結果なのだろう。
2019年9月期の目標は売上高50億円、経常利益15億円
同社の15年9月期の売上高構成比でサービス課金収入50%、ネット広告収入29%、マーケティング支援収入21%が示すように、収益の源泉はメディアである。300億を超えるBtoCとCtoCの取引データに、1500万人のユーザー。ここにNETSEAのマーケットプレイスが加わり、売買情報を得てブロックトレーディング取引できる場がされた。メディア、マーケットプレイス、法人向けソリューションの3事業を複合させ、16年9月期に売上高21億100万円(39・4%増)、経常利益2億5000万円(44・7%増)、成長加速フェーズ2年目の19年同期には、それぞれ50億円、15億円をめざす。
ベンチマークしている企業はエムスリー、MonotaRO、アスクルなど。いずれも新市場を創出した企業で、武永氏も一般消費財のサーキュレーションエコノミー市場の創出に向かっている。
最後に、後につづく若き経営者たちにご自身のご経験をふまえてアドバイスをいただいた――。
「悩みがあれば目上の経営者に気軽に相談することが大事。その際、得意分野についても知ったかぶりをしないで謙虚に臨むこと。それから、若い経営者を取り込んで利用しようと目論む人もいるから注意すること。最低10人に会えば、客観的にやるべき事が見えてくる」。
interviewer
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引用元:ベンチャータイムス
記事掲載日:2016年4月21日