業績悪化により事業縮小を迫られた上場企業から事業再生のオファーがあり、事業再生を果たす。目標の時価総額1000億円も達成
規制緩和や法律改正が行われる事業領域に積極投資
リミックスポイントは、2017年8月に東証マザーズから東証2部に市場変更した会社だ。『We are the ChangeMaker』をコンセプトに、電力小売・省エネコンサルを行うエネルギー関連事業、事業者向けに中古車販売・システム提供を手掛ける自動車関連事業、仮想通貨取引・その他仮想通貨周辺サービスなどを展開する金融関連事業、ホテル・宿泊施設の企画・設計・運営などの旅行関連事業を推進している。
「一見すると、これらには何の関連性もないように思えますが、規制緩和や法律改正が行われる領域・分野に対して積極的に事業開発・投資を行っているのが当社の特徴です」
確かに、エネルギー関連事業には2016年4月電力小売が完全自由化されたことを受けて参画しているし、金融関連事業には2017年4月の改正資金決済法施行により仮想通貨取引が急増することを睨んで着手している。
業績はすこぶる好調だ。2018年3月期連結実績での売上高は141億63百万円(対前年度比2.54倍)。営業利益34億11百万円(対前年度比105.41倍)と驚異的な成長を遂げている。
「やるべきことをやった結果が数字に反映されているだけです。何か特別なことをしているわけではありません。ただ、現状分析・市場分析はしっかりと行うようにしています。現状がどうなっているかを知ることは、とても重要ですからね。僕自身、今やっている事業に特別な興味や想い入れはなく、単純に収益が上がるかどうかを重視しています。どうしても自分の主観が入るとブレてしまい、合理的な判断ができなくなってしまいます」
関わった人に幸せになってほしい。その一念を貫く
実はリミックスポイントは2010年に債務超過に陥り、猶予期間内に解消できなければ上場廃止となる状況にあった。その危機は第三者割当増資により凌いだものの、経営は相変わらず厳しく、売上も1億あるかないか。時価総額も4億ぐらいに留まっていた。
小田会長が、そんなリミックスポイントの事業再生を要請されたのは2012年だ。もともと、ベンチャー企業や社会起業家などの支援活動に励んでいた小田氏だが、2011年の東日本大震災を機に経営者の再チャレンジを応援したいと事業再生に取り組み始め、「可能性がある」と思っていた矢先に声が掛かったという。
「最初は社外役員として参画しました。実際、中に入ってみて『この会社を潰してしまうのはもったいない』と感じ、翌年からもう少し本腰を入れて勝負してみようと思ったんです。その際、自分がコミットする限りは目標を掲げたいと思い、時価総額1000億円を掲げました。以来、それを実現するにはどうすれば良いかを考え実践してきたのです」
とはいえ、5年前のリミックスポイントは社員4、5人程度。1000万円のキャッシュすら捻出するのに四苦八苦するほど。小田氏もマーケティングから管理、財務までのすべてをこなさなければならなかった。
どんなに厳しい環境下にあっても、小田氏が貫いてきた経営の原理原則がある。それが、関わった人に幸せになってほしいということだ。
「経営において大切なことは、社員が幸せになることだと思っています。それがないと、会社は長続きしません。お客様も重要ですが、特に一緒に働いてくれる社員が幸せになるべきです。社員が幸せになる結果として収益が上がる仕組みを構築する必要性があるというのが僕の考えです」
事業の進め方にも、小田会長らしさが窺える。決して、トップダウン型の経営者ではなく、むしろ権限をどんどん委譲していくタイプといえる、
「僕から『あれをしろ』『これをしろ』と指示を出すことは一切ありません。エネルギー関連事業にしろ、金融関連事業にしろ、各事業には事業部長がいるので、彼らがやりたいことをやってもらうようにしています。相当自由度があると言って良いのではないでしょうか。優秀な人材が活躍できる環境を作ることが私の役割であると思っているくらいです」
失敗を恐れず、受け入れて新たなスタートを切る覚悟があれば道は切り開かれる
リミックスポイントでは、2019年3月期の連結業績予想も順調に推移すると見ている。売上高333億38百万円(今期比2.35倍)、営業利益102億38百万円(今期比3.00倍)をそれぞれ見込んでいる。高い貢献度が期待されているのが、金融関連事業だ。
「個人的には短期的にいうと仮想通貨関連事業は、凄く伸びると思います。現状は今年1月に比べて時価総額が1/10近くに縮小していますが、11月あたりからかなり活性化して来ると予想しています。そこからが本当の勝負になるのではないでしょうか。今はそれに向けて管理体制を着々と固めている段階といえます」
また、競合が多く厳しい環境ではあるものの、一定の存在感を確立できれば安定した商材になりうると位置づけているのがエネルギー関連事業だ。
「電力市場は全部で20兆円という大きなマーケットです。我々がメーンとしているゾーンだけでも6.5兆円くらいはあって、その1%を取るだけでも650億。まずは、3~5年で250億前後までもっていきたいですね」
もちろん、上記を含む4つの主要事業以外の新規事業にも小田会長は意欲的に取り組んでいきたいと目論んでいる。
「可能性があるのは、教育関連事業です。方向性は二つあって、一つは日本人が海外に行って営業研修やリーダーシップ研修を行うこと。もう一つは、プログラミングです。eラーニングなどを活用していけば、展開の仕様があるのではと思っています」
肩書きにはこだわらない。何が合理的な判断かを重視
マーケットの行方を的確に読み取り、会社の成長ビジョンに反映させていく手法も見事だが、“上場企業の社長”というステータスにこだわらず、会社にとって何が最も合理的な判断なのかを追求するのも、小田会長のスタイルだ。実際、2017年にリミックスポイントの代表取締役社長に就任したものの、今年の株主総会を機にそのポジションは後任に託し、自らは代表取締役会長CEOとなった。
「一番大きな理由は、仮想通貨事業を手掛ける子会社ビットポイントの海外展開を加速していくためです。仮想通貨のマーケットは日本だけではありません。むしろ、海外に地盤をおいて展開していくべきなのですが、上場会社の社長だと日本を離れてばかりはいられませんからね。それに、僕にも自分が向いていることと向いていないことがあると思っています。会社が軌道に乗り始めてきた今は僕ではなく、より大きく回していける人に任せるほうが良いと判断しました。僕自身は、経営者よりも人を支援するとか人を助けることにモチベーションが湧いてくる性格なんです」
そんな小田会長は、後輩であるベンチャー経営者らの活躍ぶりをどう見ているのであろうか。何かアドバイスがないかと聞いてみた。
「凄い優秀な方が沢山いるので、アドバイスなんてとんでもないですよ。強いて言えば、ベンチャー経営者の中にはIPOを目指す方が多いと思いますが、何のために資金を調達するのか、集めたお金で会社をどう成長させていくのかをしっかりと考えてもらいたいですね。それは、ICOであっても変わりません。そしてもう一点は、万が一企業経営に失敗したとしても、それを受け入れた上で次にどうするかを考えることこそが大切だと言いたいです。リミックスポイントも、失敗しかかりましたが見事立ち直りました。こういう会社が増えてきたら日本は確実に変わると信じています」
引用元:ベンチャータイムス
記事掲載日:1018年9月18日