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外食産業

株式会社玉寿司 中野里陽平 | すべてはお客様の笑顔のため 心を込めた一貫の可能性を探り続けたい

株式会社玉寿司 代表取締役社長 中野里陽平
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大正13年に築地で創業。以来、90年余もの長きに渡り暖簾を守り続けてきた築地玉寿司。「私たちは海の幸の美味しさに真剣です」を経営理念に、優れた技術を持つ寿司職人がお客様をもてなしている。平成17年から、その玉寿司の四代目として経営を担っているのが中野里 陽平氏だ。現在29もの店舗を構える中野里社長に玉寿司の現状、四代目としての軌跡や今後の抱負を聞きました。

90年余にわたり暖簾を受け継ぐ老舗寿司屋

観光庁の発表によると、2017年9月15日時点で訪日客は2000万人を突破し、年間で3000万人に迫る勢いだという。築地にも、多数の外国人観光客が訪れている。彼らの目当ては、やはり寿司のようだ。最近では、日本の寿司文化を体感できる企画が人気を呼んでいるという。

築地玉寿司は、そんな築地で90年余もの歴史と伝統を擁する老舗寿司屋だ。手巻き寿司発祥の店としても知られている。四代目となる中野里 陽平社長は、築地玉寿司の強みをこう語る。

「江戸前にぎり寿司として、寿司職人にこだわっていることです。板前が、心を込めた一貫の可能性を探り続けています。一時期は、回転寿司にとって代わられるのではという危機感を抱いたこともありました。『職人が握る寿司屋は必要があるのか』と自らに問い、導き出した我々の結論は、『寿司は永遠である。ただし、玉寿司が永遠とは限らない』という三代目の言葉に集約されます。工夫のし甲斐が無限にあることを喜びとして、遊び心半分、本気半分でお店をブラッシュアップしています」

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寿司は永遠。工夫のし甲斐は無限大

中野里 陽平社長が、32歳で築地玉寿司の経営を引き継いで13年となる。業績はリーマンショックで一時ダウンしたものの、その後持ち直し、今や年商45億。全月黒字経営を維持するほか、自己資本利益率も優良企業とされる40%を超えるなど、ビジネスは好調そのものだ。

「上場しているわけではないので、手堅い経営を心掛けています。売上以上に、適正利益を出しているかをポイントにしているのもそのためです。出店数も現在は1年に1店舗程度に留めています。特に出店計画を立てているわけでもありません。ただ、お話を頂いた時に対応できる体力づくりだけではしているつもりです」(中野里社長)

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店舗づくりにも中野里社長ならではのこだわりがある。決して妥協はしない。
「まずは、厨房はしっかりと造りこみます。目線の高さも大切ですね。お客様に圧迫感があっては良くありません。また、安っぽい店にしたくないので、カウンターにも気を遣いますし、器もこれはというものを使うようにしています」と中野里社長は力説する。

加えて、人材育成にも中野里社長は熱心で、2017年には長年の念願であった玉寿司大学を開校。寿司職人を育てていく基盤を作り上げている。

四代目就任が大きなターニングポイントに

四代目就任後、舞浜イクスピアリ店、横浜みなとみらい店、表参道店などの出店を成功に導いてきた中野里社長。傍目からは順風満帆に見えるが、これまでの道のりはかなり険しいものであったという。

「ターニングポイントは、玉寿司を引き継いだ時ですね。本当に大変でした。実は、バブル崩壊による不動産投資の損失により、かなりの負債を抱えていたんです。金利だけでも1億以上。いかにして借り入れを減らすか毎日悩みました」と中野里社長は当時を振り返る。

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莫大な借金を一気に背負うことになった中野里社長だが、今でも三代目である父親には感謝してやまない。先代が判断を誤らなかったからこそ、玉寿司の暖簾を守ることができたと強調する。

「引継ぎにあたり、三代目から『囲碁には捨石と要石がある』という話がありました。捨石は、相手に取られても影響のない石。玉寿司でいえば、一族の財産と個人的な名誉だと。一方、要石とは自分が有利な場面でも相手に取られたら形勢が逆転する石。それが、暖簾の信用と社員、そして後継者であると。『大きな負債を引き継げるのは、息子のお前しかいない』」と言われたのです。

苦難を正面から受け入れることを決意した中野里社長は、その後人との出会いにも恵まれ色々なチャンスを掴むことができたという。東日本大震災などもあったが、就任時に背負った借り入れは2016年に無事完済に至った。

「譬えれば、舟から荒波にドンと放り投げられ、島はあっちだからと必死に泳いでいたら浜辺に辿り着いたという感じでしょうか。今思うと泳いでいた時は充実していました。とにかく良い店を作るしかないと。もうそのタイミングでなくなったら、内的な感覚でふうっと抜ける感じがしたんです。これではいけない。荒波を乗り越えてきた次は、価値のある山に登ろうということで、今度は経営の質を高めるためのチャレンジをしています」(中野里社長)

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より良い会社づくりに全力を注ぐ

もともと設定した目標は、何が何でも達成するという強い意識を持つ中野里社長が、新たなテーマとして打ち出したのが、より良い会社づくりだ。

「良い会社には、共通する条件があります。社員の満足度の高さ、持続的な成長、安定的な利益創出、社会貢献、そして独自の価値です。我々は、江戸前寿司の聖地である築地で最も古い寿司屋である。その価値を高めていきたい」と中野里社長は語る。

玉寿司大学を開校したのも、毎週PDCAを繰り返し健全なる自己否定を実践しているのも、すべては良い会社づくりのための施策といえる。2016年には、船井財団から「グレートカンパニーアワード 働く社員が誇りを感じる会社賞」を受賞。取り組みの成果は着実に生まれつつある。

「目指すは日本一応援される寿司屋です。お客様に真摯に向き合い、誠実に頑張っていく。商人道をぶらさず、コツコツと貫く。そんな寿司屋でありたいですね。もちろん、それは我々だけで実現できるわけではありません。川上・川中である卸と一緒になって新しいビジネスモデルを作っていきたいと思います。時には卸に厳しいことをいう場面もあります。それがお客様の笑顔のためであると受け止め、お互いにWin-Winとなる関係を作っていけるパートナーと仕事をしたいですね」

interviewer

KSG
シニアヴァイスプレジデント 中塚 進悟

interviewer

株式会社トラフィックラボ
代表取締役社長 清水 彰人

引用元:ベンチャータイムス

記事掲載日:2017年10月23日

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