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士業

株式会社ティーベル 笠原康夫 | パチンコホールを再生する視点は 医療・介護を付加した“地域ケア拠点”

株式会社ティーベル 代表取締役 笠原康夫

パチンコ店での遊技にビットコイン等(暗号化通貨)活用の可能性について

まだ着想段階で具体的なスキーム策定には至っていないが、ビットコイン等(暗号化通貨)のパチンコホールでの活用の可能性について勉強会が進められている。推進役は遊技機器業界で45年近い実績をもつ笠原康夫氏である。笠原氏が経営する企業再生ファームのティーベルでは毎月、ビットコイン等(暗号化通貨)の研究会が開かれ、大手金融会社、保険会社、ジャーナリスト、パチンコ業界関係者経営幹部、一般の中高年者に加え若者など男女問わず出席している。

笠原氏は1974年にオムロン入社。2004年に独立するまでの30年にわたってパチンコ業界に関わってきた。遊技機器開発、ホールでの導入実験、プリペイドカードシステムのインフラ構築、遊技機メーカーや業界団体とのカード共同出資会社設立などパチンコ業界の近代化を実務面で担いつづけてきたのだ。

2004年にティーベルを設立して以降は、大手の企業の顧問をはじめパチンコパチスロ機械関係メーカーや、パチンコ機器営業コンサルティング、パチンコ店舗の売買、M&A、さらには、IR(統合型リゾート、英称:Integrated Resort)とパチンコ業界の共存を模索しつつIRへの参加などを展開している。その一方で、笠原氏は、動脈硬化やエコノミー症候群、認知症などの予防に役立つ”心血管機能指標AVI,API”を備えた医用電子血圧計の開発ベンチャー企業の事業化支援など医療分野にも軸足を置いている。

株式会社ティーベル 笠原康夫社長 インタビュー画像1−1

パチンコホールに隣接させて医療機器を設置して健康相談コーナーを開設する

パチンコと医療機器は一見かけ離れた分野だ。しかし、笠原氏の事業スキームでは2つの分野は連携している。

「2つの事業は飛び地だといわれますが、根っこの部分でつながっています。パチンコホール運営企業の再生、パチンコホールと地域社会との共生、この2つのテーマに取り組むには医療ヘルスケアが必要だと考えています」。

なぜパチンコホール運営に医療が関わるのだろうか。笠原氏は次のように説明する。

「ホール運営企業は大手を除けば就労環境に於いて、中小のお店では、従業員及び準従業員の健康管理が十分に出来ていない所がある。企業再生に健康管理体制の整備は不可欠なので、医療の力が必要になってきます。また、パチンコホールは射幸心を煽る機器を排除して、昔のような娯楽の場に戻せば高齢者でも安心して来店できるようになります」。

株式会社ティーベル 笠原康夫社長 インタビュー画像1−2

さらに笠原氏は、ホールを地域ケアの拠点にしようと構想している。おそらく自治体関係者には思いつかない着想で、所轄行政機関の許認可の関係が有る為、実現できるかどうかは未知数だが、こんな着想である。

「風営法の規制によって、現在は、店内に医療機器を置いて健康相談を実施することはできませんが、地域の医療関係者と連携して健康相談を実施すれば、パチンコホールは娯楽と健康を提供する地域の拠点として機能するでしょう。ドラッグストアや介護施設などの併設も考えられます。この拠点ができあがればメディカルツーリズムを呼び込めるので、地方創生にも貢献します」。

株式会社ティーベル 笠原康夫社長 インタビュー画像1−3

ファンド活用やM&Aによってホール運営企業を再生させる

パチンコホール運営企業は、慰問や瓦礫処理などで東日本大震災や熊本地震の復興支援に継続的に取り組んでいるが、ほとんど報道されない。報道されるのは射幸心を煽るという負の側面である。笠原氏はこう主張する。

「誉めるべき点は誉めて、叱るべき点は叱るというメリハリをもってパチンコ業界を見る必要があります。多くの日本人がパチンコでストレスを発散したことも事実です。その原点に返って、射幸心を煽る機器から遊べる機器へと戻すことが求められるのではないでしょうか」。

この現実を踏まえてパチンコ業界の振興を図るには、単なる収益改善でなく、社会課題の解決にベクトルを向けた“街づくり企業”への転換が必須である。笠原氏はそう考えているのだ。医療機関と商工業者の連携による街づくりは“医商連携”と呼ばれるが、パチンコホールを拠点にすえた青写真は例がないだろう。

問題はホール運営企業の資金調達力である。パチンコホール数は全国に約1万店あるが、笠原氏によると「新しい機器を導入できる資金のある店舗は5000店舗以下で、他の5000店舗以上は機器業者を介して中古機を廻すしかありません」。ホール運営企業を再生させるうえで、思うように資金調達ができず、遊技機器の刷新すらできないケースが多いのである。
「私はいろいろな金融機関に相談して廻りましたが、ホール運営企業への融資には消極的です。そこでファンドに依頼するか、身売り先を探すか、別の手段を選択することに切り替えました」。

株式会社ティーベル 笠原康夫社長 インタビュー画像1−4

顧客本位の経営を実践すること
「人」からみた企業再生

笠原氏が支援対象にしているホール運営企業は、店舗数10~30店規模がメイン。支援の基準は①経営者がビジョンをもっていること②経営者がパチンコ業界の課題を認識していること③顧客本位に立った店舗運営を実践していること。おもにこの3点である。

「お客様本位のお店は開店時間になると従業員が店頭に立って、お客様を迎えていますし、経営者が各店舗に足を運んで状況をチェックしています。本社に設置されている各店舗の監視カメラだけでは店内の状況(雰囲気)は把握できません。企業再生には、資金、人材の確保、それを支える、就労環境の改善、健康管理、給与水準の改善等多くの難課題が存在します。人材の面を見ますと、住宅費や子供の教育費を背負っている社員が長期的に安心して働ける環境が必要です。オフィスに関しては若い人が働きたくなるように改善しなければなりません。入社したら研修制度や福利厚生がきちんと整備され、期待と安心を呼び起こせることで、仕事に対して、行動を起こす力が生まれます。私が在籍したオムロンでは社員研修で『自分の10年先を見なさい』と教えられました。10年後のビジョンを描ければ、いまから10年後に向かって自分が何をなすべきかが見えてきます。そうした研修はパチンコ業界にも必要でしょう」と笠原氏は提言する。

笠原氏の取り組みは、収益改善や経営統合による体質強化にとどまらない。経営の健全化や地域再生をも視野に入れているが、まずはモデルケースの創出を見守りたい。

株式会社ティーベル 笠原康夫 サムネイル画像

interviewer

KSG
眞藤 健一

引用元:M&Aタイムス

記事掲載日:2017年7月19日

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