LEADERS FILE

日本のこれからを見据えたビジネスリーダーたちの次世代を切り開くメッセージを収録。

FILE NO.0203
サービス業

株式会社ビューティガレージ 野村秀輝 | 会員数29万5000サロン 過去1年の購入ユーザー数は9万

株式会社ビューティガレージ 代表取締役CEO 野村秀輝

3C分析とリユース市場研究で中古品ニーズの潜在を確信

実力者が黒子に徹しつづけたうえに、自身のプランがたびたび却下されれば、やがて正しさを証明するため表舞台に出るのは、必然の成り行きかもしれない。2016年7月に東証一部に上場したビューティガレージCEOの野村秀輝氏も、同様の行動をとった。

野村氏は1990年に青山学院大学経済学部を卒業し、中央宣興に入社。その後、マッキャンエリクソンを経て、2002年にマーケティングプランナーとして独立した。このキャリアから“実事業”に転じたのは、対クライアントという制約のなかでは、力を発揮できないと感じるようになったからだという。

「クライアントに提案した内容が絶対に良いと確信しても、却下されることが少なくない。(記者の黒色の名刺入れを指して)たとえ黒でもクライアントが白と言えば白なのです。その悔しさや、不条理感にとらわれるうちに自分が主体として事業をやってみたいという心境になりました」

株式会社ビューティガレージ 野村秀輝社長 インタビュー画像1-1

2003年、現COOの供田修一氏が推進する企業の計画書作成に関わったことを縁に、

ビューティガレージを設立した。理美容サロン向けの中古機材販売を手がけたが、当初から勝算を見込んでいた。

理美容業界では旧来の商慣習が生きつづけ、大手メーカー・大手問屋など一部の事業者よる寡占市場が形成され、サロン経営者は「先生、先生」とヨイショされながら高額な機器を購入する構図ができあがっていた。マーケティングの基本である3C分析(Customer、Competitor、Companyの3Cから成功要因を見つけ出す分析)などによって、この旧弊に風穴を開ければ、サロン経営者に適正価格で機器を販売する市場を開拓できる。

そう確信したうえに、野村氏はリユース市場を研究する。当時すでにIPOを果たしていたテンポスバスターズの躍進から、開業コストを削減させる店舗機器のリユースは、理美容業界にも膨大なニーズが潜在しているはずだと見通した。

株式会社ビューティガレージ 野村秀輝社長 インタビュー画像1-2

ネットとリアルを融合したオムニチャネルを確立

読みどおり初年度から利益が出つづけた。2006年にはネットとリアルを融合させたオムニチャネル販売に進化させる。インターネット通販サイト「BEAUTY GARAGE Online Shop」、全国主要都市でのショールーム(現在9カ所)、さらにカタログ通販誌「BG STYLE」で理美容機器、化粧品、消耗品などプロ向け商材を販売し始めた。野村氏は「チャネルを融合してビジネスを仕組み化したことによって、販売状況や在庫などすべての管理を一元化できました」と成果を語る。

こうして既存の市場を変革しようとする同社に、既得権益を崩されるメーカーや問屋が黙っているはずはなく、ビューティガレージから仕入れたサロンへの納入停止や、同社からのメンテナンス依頼を拒否するなど抵抗に入る。いまどき児戯にも等しい行為だが、「業界の慣習を乱された」という被害者意識だけでなく、同社の空けた風穴の拡大を怖れてもいたのだろう。

この状況が一変したのは2006~07年頃である。PB商品の開発に着手し、「メーカー→問屋→一次ディーラー→二次ディーラー」と構成される中間流通を外した直接取引によって、既存相場の2分の1から3分の1の価格でサロンに供給し始めた。PB商品比率は拡大を続け、今では機器と化粧品を合わせて物販売上高の約60%を占めている。

株式会社ビューティガレージ 野村秀輝社長 インタビュー画像1-3

代金請求も業界慣習を変え全額を前金で受け取る方式

ビューティガレージは2013年に東証マザーズ上場。理美容・エステの機器と化粧品の物販、店舗設計・施工管理、さらに開業資金調達支援や物件仲介、集客支援などのソリューションの3事業で、理美容・エステサロン、リラクゼーションサロンなどをワンストップで支援するビジネスを確立した。

この過程でリスク対策にも手を打つ。サロンの大半が個人店であることから、売掛金回収リスクが発生しやすいと考え、全額を前金で受け取る請求方式に切り替えたのだ。これも中古品販売と同様に業界慣習に背くが、サロン経営者は反発しなかったのか。

「当初は反発もありました。ただ『当社はこの方法で取り引きさせていただいています』と説明して、受け入れていただけるようになりました」(野村氏)

2016年4月通期の連結売上高は83億9300万円(前期比15・4%増)、経常利益は為替予約の評価損の影響で微増にとどまったが、4億1900万円(7・2%増)を計上した。事業別売上構成比は物価事業77・2%、店舗設計事業19・3%、ソリューション事業3・5%という内訳である。

通販サイトの登録会員は2016年10月時点で29万5000サロン、過去1年間に購入履歴のあるアクティブユーザー数は9万を数える。会員数、アクティブユーザー数とも着実に伸びつづけ、来期は経常利益5億2000万円を見込んでいる。

株式会社ビューティガレージ 野村秀輝社長 インタビュー画像1-4

理美容専門商社として日本一に就く夢に日付を刻む

業界のルールを変え、新たなスタンダードを築いた野村氏は、若手経営者に「大志を抱いて真っすぐに王道を歩め」と呼びかけている。

「起業する動機はお金が欲しいことでもよいでしょう。しかし、志がなければお金が貯まった時点でモチベーションが止まってしまい、お金を皆で山分けしようとか、見栄を張るような行動に走ったりして、会社も停滞してしまいます」。

株式会社ビューティガレージ 野村秀輝 画像4

たとえば、一時期、小金をつかむと飲食店を開くベンチャー企業経営者が目についたが、成長発展の途上でよそ見は不要である。野村氏は「お金が貯まるというのは小さな成功にすぎず、起業家がそこで満足してはいけません。だから大志を抱くことが大切なのです」と強調する。

1967年生まれの野村氏は現在49歳。ある夢に日付を刻んでいる。2025年には、同社が保有するメーカー、専門商社、IT企業、ソリューション提供という4つの機能のうち、まず専門商社として国内トップに就く。この夢を実現したら、2030年には美容業界全体のトップに台頭する。これが「開業と繁盛を総合支援するサロンコンシェルジュNo.1企業」をビジョンに掲げる野村氏の近未来スケジュールである。

interviewer

KSG
関 幸四郎

引用元:ベンチャータイムス

記事掲載日:2016年12月20日

POST

Edit

アクセスランキング

ACCESS RANKING

編集部厳選インタビュー

STAFF SELECTION
新着記事
NEW ARRIVALS