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サービス業

株式会社アドウェイズ 岡村陽久 | 決め手は「早さ」と「違い」!リスクを覚悟する勇気も定着

株式会社アドウェイズ 代表取締役社長/CEO 岡村陽久

自社だけでは発展できない
2015年度は20社に出資

アドウェイズが2006年に東証マザーズに上場したとき、社長の岡村陽久氏は東証最年少上場社長(当時)としてクローズアップされた。同社は2000年以降に設立されたIT関連企業で大躍進を遂げた企業のひとつである。従業員数はグループ全体で約1200名におよび、2016年3月期決算では売上高380億円、営業利益5億1000万円、経常利益5億8000万円を見込む。

ネットビジネスの発展は自社だけでは困難という判断から、2015年度には12月までに5億円を投じて20社に出資した。岡村氏が重視しつづけてきたのは「早さ」と「違い」である。

株式会社アドウェイズ 岡村陽久社長 インタビュー画像1-1 

「ネットの業界ではどんなビジネスでも一番早く始めることが大切で、似たようなサービスがあれば違いや新しさで差別化することが必要だ。勝つためには、この2パターンしかない。他社が先行して市場を開拓しているサービスを後追いすることは、リスクは低下するが、あまり果実を得られない」。

しかし、早くやろうとか、違うことをやろうというのは、人材採用やシステム開発など投資リスクを伴う。決め手は「勇気」だという。

「前例のないビジネスを始める決め手は勇気をもてるかどうか。市場調査は行なうが、上手くいかないことはわかっても、上手くいくかどうかはわからない」。

同社の場合、この勇気をもつことが文化として定着している。グループのスローガンは「なにこれ すげー こんなのはじめて」。初めてのビジネス、違うビジネスを創出することに価値観を見出しているのだ。「うちの文化として『なにこれ すげー こんなのはじめて』というビジネスをやりたくなっちゃう…」というが、この文化はスローガンに明文化して初めて全社に浸透させられる。

株式会社アドウェイズ 岡村陽久社長 インタビュー画像1-2

意見を表明する社員を評価して昇格させる人事

明文化したのは2年前である。それまでは「アドウェイズっぽい」「アドウェイズっぽくない」という言葉が社内に飛び交っていた。経営幹部や社歴の長い社員なら判断できるが、そうでない社員やアルバイトは、「ぽい」「ぽくない」と言われても、なかなか合点がいかない。そこでクルーズ社長の小渕宏二氏に相談したところ、合宿を開いて明文化することになった。

合宿には経営幹部が参加し、小渕氏も加わって2回開かれた。さらに数度の会議を経てスローガンが完成したのだが、合宿を含めて投入した時間は100時間を超えた。それだけの心血を注いだ言葉なのである。

このスローガンは人事評価にも反映され、何事についても意見を表明できるかどうかが評価されやすい。岡村氏は趣旨を説明する。

「たとえば会議で上司が業務の方向性を示した場合、だいたい半分ぐらいは間違っているものです。それを修正したり、引っ繰り返したりすることで業務の完成度が高まります。意見を述べて会議の流れを変えられる社員は日々考えています。そういう社員が昇進すべきだと思うんです。そうでないと会社は発展しません。生意気で、腹が立つけど、正しい意見を言っているし、ちゃんと問題点を指摘してくれる。そういう社員がいると組織は強くなります。意見を言ってくる社員はすごく言ってくるので、言われる側は腹が立つこともあるかもしれないが、そういう社員を評価するのがうちの特徴です」。

株式会社アドウェイズ 岡村陽久社長 インタビュー画像1-3

体系だった教育するよりも機会を与えたほうが社員は育つ

岡村氏 自身、自分の考えはしばしば外れていて、それを補完してくれる役員がいたからこそ今があり、「社長が言っているんだから、そうしましょう!」という体質があったら今はないと思っている。

会議で上司を批判した社員が昇格すれば、「ああいう人でも昇格できるんだな」と受け止め、堂々と意見を口にする社員がつづく。要は主体性を求めているのだが、これは人材育成にも通じている。同社は体系だった教育プログラムを設けていない。

岡村氏は「人を成長させるには、機会を与えることが一番という考え方で経営してきた。教育よりも、考える機会、実行する機会を与えたほうが育つというのが当社の考え方である」と述べる。

しかし、同社が社員に対して冷淡かといえば、けっしてそうではない。むしろ真逆である。それを象徴するのが「愛社員課」という部署の開設である。きっかけは2001年に設立して社員数が200人前後に増えた頃に、岡村氏が「皆の愛社精神が薄れてきた」と感じたことだった。

株式会社アドウェイズ 岡村陽久社長 インタビュー画像1-4

自分の考えが合っていて50%
人の意見を謙虚に聞いて正しい判断

経営幹部会議で愛社精神に触れると、岡村氏が「尊敬している」と評価するHRM担当執行役員の松嶋良治氏が「まず会社が社員を愛するべきではないのか。それなくして社員に愛社精神を求めるのは傲慢ではないのか」と指摘し、出席者たちが賛同した。その結果、①健康を守る②家族を大事にする③仲間意識を強く持つ――を趣旨に愛社員課を開設したのである。

愛社員課では、岡村氏が月に数回社内で夕食を作って振る舞う「岡村屋」の開催や、週1回全社員への野菜配布を通じて健康管理をサポート。さらに「パパママコンシュルジュ」と呼ばれる担当社員が、勤務に関わる相談窓口になって様々な制度を案内している。岡村氏によると「後になって気づく父親の愛情でなく、その時々にはっきりとわかる母親の愛情を示している」。だから愛社員課なのである。

岡村氏が大切しているのは謙虚であること。これも松嶋氏からの教えだという。設立当初こそ自分の判断は100%正しいと思っていたが、「ビジョナリーパンパニー」などを読み込んで謙虚について学ぶうち、「自分の考えが合っているのは良くて50%、あとの50%は他人の意見を謙虚に聞いて、正しい判断をしなければならないと思うようになった」。

謙虚であれば正のスパイラルが形成されやすい。アドウェイズの足跡は、その原理を証明している。

interviewer

KSG
関 幸四郎

interviewer

経済ジャーナリスト
小野 貴史

引用元:ベンチャータイムス

記事掲載日:2016年5月23日

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