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株式会社オプトホールディング 鉢嶺登 | 時価総額 総計1兆4650億円、雇用者数 総計1万3714人 事業創造プラットフォームで創出した経済効果

株式会社オプトホールディング 代表取締役社長/CEO 鉢嶺登

時価総額総計100兆円、雇用者数 総計100万人
2030年の目標はGDPへの明確な貢献

“GDP貢献ビジネス”とでも呼べばよいのだろうか。壮大な構想で推進されている事業がある。オプトホールディングが取り組んでいる「事業創造プラットフォーム事業」で、2030年にオプトグループの出資およびグループ出身企業の時価総額総計100兆円、雇用者総計数100万人をめざしている。

現状はどうなのか。2015年12月末時点のデータで時価総額総計1兆4650円、雇用者数1万3714人。すでに、これだけの経済効果を創出しているのだ。2015年には3月に出資先のモバイルファクトリーが東証マザーズ上場、10月にOBが設立したパートナーエージェントが東証マザーズ上場、11月には出資先の米国スクエア社が米国ニューヨーク証券取引所上場と3社のIPOが実現し、“オプトグループ経済圏”を拡大させた。

同社には「一人一人が社長」という社是がある。社長の鉢嶺登氏によると「自ら成長して、どこの会社に行っても、何歳になっても働ける自立した人材の集合体にしたほうが、会社には活力が出るし、社員一人一人も幸せになれる」。この社是の延長線上に事業創造プラットフォーム事業が創出されたのだが、さらに2つの動機があるという。

株式会社オプトホールディング 鉢嶺登社長 インタビュー画像1-1

ひとつは、鉢嶺氏が創業前に訪れたエジプトで、現地の人たちがナイル川で洗濯をしていた光景に触発されたこと。こんな思いを抱いたのだ。

「終戦後の日本にも同じ光景があった。いまは先人たちの努力のおかげで何不自由なく過ごせているのに、我々が安穏としていたら、子孫の代に社会を衰退させてしまう可能性もある。恵まれている我々だからこそ、どんどんチャレンジをして新しい産業を生み出すことが、日本の繁栄のポイントになってくるのではないか」。

日本電産・永守社長に触発されたひと言「年商1000億円は小さい。1兆円めざせ!」

もうひとつの動機は、2004年にジャスダック上場を果たした後、鉢嶺氏が日本電産社長の永守重信氏と食事をしたときに受けた激励である。当時の年間売上高は400億円を上回っていたが、永守氏は鉢嶺氏に烈々とした口調で迫った。

株式会社オプトホールディング 鉢嶺登社長 インタビュー画像1-2

「オマエ、売上目標は1000億円なんて言うんじゃないだろうな?1000億円が目標で1000億円を達成するのと、1兆円が目標で5000億円しかいきませんでしたというのとでは、どっちがいいんだ?」。

「そりゃ、5000億円ですね」。

「そうだろ!小さくまとまるんじゃないよ!」。

永守氏の発言は鉢嶺氏の心に刺さった。より高い目標をもって、ブレイクスルーするにはどうしたらよいのか。ネット広告代理業だけでは1兆円に届かない。それ以外に事業を開発しなければならないとブレイクダウンして考えたときに、どんどん事業を創り出していけばよいことに気づいた。これは「一人一人が社長」という社是にも合致して、鉢嶺氏は「腹に落ちた」という。

株式会社オプトホールディング 鉢嶺登社長 インタビュー画像1-3

「インターネット業界はスピード感が激しいので、1社で社員数万人という巨大企業をつくり上げるのではなく、社員100人の会社を100社つくって1万人にしたほうがよいと考えた。かりに1社の売上高が100億円になれば100社で1兆円になる。こういう発想で事業創造プラットフォーム事業をはじめた」。

売上高1兆円・雇用者数1万人はオプトグループの目標値だが、この数字は冒頭に触れた2030年目標の時価総額総計100兆円・雇用者数100万人に含まれる。

40%以上の出資を行うVIP倶楽部会員企業7社に出資して2社が上場を果たす

事業創造プラットフォーム事業には、中核であるeマーケティング事業の持続的な成長もさることながら、いかに優良な出資先を確保するかが鍵となる。出資には2つのパターンがある。子会社のベンチャーキャピタル・オプトベンチャーズが出資するパターンと、オプトHDが40%以上を出資することで、同社が主宰するVIP倶楽部(VIP=Venture Insprire Platform)の会員企業となるパターンである。

特徴的なパターンは後者で、VIP倶楽部の会員企業へは役員・事業部長クラスの人材支援や管理業務のアウトソーシングなどさまざまなサポートを行なう。すでに7社に出資し、ホットリンク、モバイルファクトリーの2社がIPOを果たし、もう2社が売却され、計4社を出口から送り出した。

株式会社オプトホールディング 鉢嶺登社長 インタビュー画像1-4

かりに出資する時点で出資先が「IPOしたときに出資分を買い取りたい」という希望を示せば、それを契約書に盛り込んで、IPO後に売り戻す。ホットリンクに対しても、モバイルファクトリーに対しても、出資分は売り戻した。IPO後はオプトグループから卒業し、独り立ちしすることを契約に盛り込むことで、オプトHDの経営資源を活用できる。少額出資よりも成長の確率・スピードを格段に高められるのである。

こうして見ると、事業創造プラットフォーム事業はベンチャーキャピタルともコンサルティングとも異なる。比較対象がなければアナリストも評価しにくいのではないか。「現状では評価が難しいようで、eマーケティング事業を展開する子会社のオプトの評価がメインになっている」(鉢嶺氏)という。

グロービス講師の協力を得た経営者研修
応募100人・選抜40人・修了20人

事業創造プラットフォーム事業を推進するには、出資先に出向して成長に導ける人材の育成も問われてくるうえに、100人・100社構想で100人の社長を輩出しなければならない。この課題を踏まえて組み立てられた同社の育成システムは、ビジネススクールそのものだ。

グロービス経営大学院等でも講師を務める岡村勝弘氏の協力を得て1年コースの「経営者育成研修」を実施しており、結果本研修を修了した社員が投資先の経営メンバーに就任する例もある。研修は月1~2回実施され、前半はリーダーシップ、マーケティング、ファイナンスなどの知識を学び、後半はケーススタディーを実施する。

株式会社オプトホールディング 鉢嶺登社長 インタビュー画像1-5

この研修には毎年約100人の社員が応募し、選考試験を経て約40人が受講するが、修了試験に合格するのは20人。相当な難関である。VIP倶楽部から上場企業を輩出できたのも、この育成プログラムが大きく寄与したのではないか。

社内起業による独立も「退職してゼロから独立するよりも成功確率が高い」(鉢嶺氏)ことから、今後は重点を置く方針だ。すでに7社が設立され、具体的に上場を目指す会社も誕生している。鉢嶺氏は若い経営者たちに「私が応援したくなる経営者は、世の中をどう変えたいのかという志をもった人。たとえば東証一部上場は小さな目標にすぎず、20~30年後の社会を見据えて新しい産業を生み出すというような高い目標をもってほしい」と提言する。

interviewer

KSG
関 幸四郎

interviewer

経済ジャーナリスト
小野 貴史

引用元:ベンチャータイムス

記事掲載日:2016年5月13日

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