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日本のこれからを見据えたビジネスリーダーたちの次世代を切り開くメッセージを収録。

FILE NO.0135
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株式会社カプコン 辻本春弘 | ワンコンテンツ・マルチユースで優秀な人材を集め、業界の地位向上を図る

株式会社カプコン 代表取締役社長 辻本春弘
株式会社ベネフィット・ワン 代表取締役 白石徳生

株式会社ベネフィット・ワン代表取締役・白石徳生が気になる 企業のトップを大胆訪問。フリートークを交わしながら、成長の秘訣を 聞き出すというシリーズ企画。第20回は、創業期から事業に関わり、 自身で成長のプロセスを直接体験してきた二代目経営者、 株式会社カプコン代表取締役社長の辻本春弘氏です。

価格は高くてもの内容でヒット作を生み出す

白石 まず初めにカプコンさんの創業の歴史を教えてください。

辻本 幼稚園の頃に、父(現カプコン会長、憲三氏)が駄菓子屋の店先に子どもが綿菓子を作れる機械を置いてもらうビジネスを立ち上げたのが始まりです。ところが中学生の時、大ブームとなったインベーダーゲーム機で失敗し会社を畳まなきゃいけなくなった。
それで、父は「今までは川下だったが、これからは上流、メーカーだ」と決意し、カプコンの前身になるゲームメーカー、「日本カプセルコンピュータ」を立ち上げたんです。1981年、私が高校生の時です。

白石 最初からメーカーだったわけではないんですね。

辻本 ゲーム機のオペレータ(運用)でした。機械を買い取って、それを駄菓子屋の店先に置かせてもらって、ゲームの売上げをシェアするというビジネスでね。

白石 辻本さんはカプコンの創業から関わっていらしたんですか。

辻本 創業メンバーと言ったら怒られますが、その頃社員はまだ5名ほどだったし、私も大学生だったので、アルバイトとして手伝っていました。4回生の時に親父に進路を相談したら、「卒業したらウチの会社に入れ」と言われて。

白石 創業二代目の経営者の方は、いったん他の会社に勤めて20代後半くらいで家業の会社に入るというパターンが多いと思うのですが、辻本さんはそのまま社員になられた。その代わり草創期から成長期という、企業が成長していくなかで最もダイナミックな時期を直接経験された。その当時、御社が成長していく一番の原動力は何だったんですか。

辻本 他社と比べて圧倒的にビジュアル的に良いものを作ることです。80年代前半から半ばまではゲームセンターなどに置く業務用テレビゲーム機を中心に扱っていましたが、「面白い!」と思わせるにはビジュアルの質の高さが大事。そのためにメモリ容量が必要なんです。しかし、メモリをたくさん搭載すれば原価は高騰し、おのずと販売価格も高くなる。それでも「価格は高いがビジュアルもゲーム内容も◎」という評判が立ち、ヒット作が生まれていきました。

白石 なるほど。

真似はするな!圧倒的に面白いゲームを作れ

辻本 ビジュアルの品質にこだわったおかげで、家庭用ゲーム機に進出した時に加速度的に業績が上がったんです。ファミコン(8ビット)からスーパーファミコン(16ビット)になると、CPUの処理速度もメモリ容量も上がるから、画像のクオリティも高くなります。だから、当社の業務用ゲーム機で培った質の高いビジュアルのゲームをスーパーファミコンでも再現できるようになった。まさに『ストリートファイターⅡ』のスーパーファミコン版がそれで、最初の大ヒットになりました。

白石 ストリートファイターⅡはよく覚えていますよ。

辻本 ちょうどその頃に、家庭用ゲームメーカーとしてのカプコンの地位も確立できました。

白石 『バイオハザード』も印象に残っています。

辻本 96年のリリース作ですね。3D表示のゲームでしたが、最初は見向きもされなかった。ホラーの分野のゲームは今まであまりなかったですからね。でも次第に人気に火が付いて10万本でスタートしたものが、話題を呼び1年後には180万本くらい売れました。

白石 メガヒットじゃないですか。そもそも御社ではゲームの企画は誰が担当されるんですか。

辻本 開発チームです。経営者側から「こんなゲームを作れ」とはぜったいに言いません。指示するのは「圧倒的に面白いゲームを作れ」ということと、「真似に走らず独自性のあるものを」という2点だけです。

白石 開発者に対するマネジメントも難しいと思いますが、そのポイントは?

辻本 クオリティは彼らに任せます。その代わりコストと納期はちゃんと守ってくださいねということだけですね。

白石 現場に介入はしない?

辻本 年齢的にゲームのメインユーザーではなくなりましたからね。面白いかどうかは現場が一番分かっていますよ。

エンタメ技術の最高峰 ゲームの世界は成長産業

白石 そうすると、優秀な人材をどれだけ確保できるかが重要ですね。

辻本 入社してくる人たちの話を聞くと、ストリートファイターなどを子供の頃にやっていて、「面白かった」からという人が多かったんですね。でも親御さんは「ゲーム会社への就職は辞めろ」とおっしゃるわけです。それで「これではダメだ。ゲーム会社だけでは限界がある」と考え直して、コアなビジネスはゲームでも、これをコンテンツに映像化、キャラクタービジネス化、グッズ化をする「ワンコンテンツ・マルチユース」展開をしようと。これなら多彩なクリエイター候補も集まるだろうし、映画や宝塚の舞台を見ていただけば、親御さんからも「いい物を作ってる企業だ」と理解いただける。われわれのコンテンツを通じて、ゲーム産業に対する考え方を変えていきたい。

白石 新規の開発はどのくらいになりますか。

辻本 新規のゲームは2割。残りの8割はシリーズタイトルですが、シリーズのゲームでも「ワンコンテンツ・マルチユース」展開のおかげで鮮度が落ちてこない。なおかつブランドの価値、優位性も向上するんですね。それにマルチユースで展開していると、例えばバイオハザードなら、ゲームをやったことがない人でも、映画でも見られるし、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンのアトラクションでも楽しめる。パチスロでもできる。逆にそこがゲームへの入り口になることもある。

白石 今後の展開はどうお考えですか。

辻本 ゲームの世界のネット革命はまだまだこれからです。楽天やヤフー、LINEなどは、一番集客できてお金をとれるコンテンツとして、ゲームに注目しています。なんといっても、今のエンターテインメント技術の最高峰はゲームです。それだけ成長産業なんです。

白石 後継者はどうですか。

辻本 まだ親父が元気に経営の大方針を立てているのに、そんなこと言ったら怒られます。

白石 辻本さんには普段からお世話になっていますが、今日は改めて勉強になりました。ありがとうございました。

引用元:CEO社長情報

記事掲載日:2015年7月

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