IT最先端都市から事業を展開する急成長無名企業の〝アメリカ流〟
アメリカでノウハウを獲得し仮説が証明できれば世界へ
アメリカ・カリフォルニア州マウンテンビュー。グーグルの本社やスタンフォード大学があるITの最先端の都市に、この8月、日本の無名IT企業が進出した。
その企業の名前はラクスという。企業の業務効率化のためのクラウドサービスを低コストで提供する企業である。大手が敬遠する中小企業向けサービスに特化して右肩上がりの成長を遂げてきた。導入企業は現在2万8000社。
同社が、米国子会社を立ち上げたのは昨年8月。1年後にこの地にオフィスを移転させた。これから、アメリカで本格的な事業展開を開始するというのである。
「なぜあえてアメリカに?」とは誰もが思うこと。同社社長の中村崇則は語る。
「ITに関しては”アメリカから世界に”が主流です。グーグルやスタンフォード大学がある場所で、最先端の情報に囲まれて業界のエッセンスに浸り、刺激を受けながら事業展開していこうと。そうすればおのずと、物事に対する考え方とか計画の練り方とかも、日本流とは違ってくる」(中村)
一般的にアメリカ進出でうまくいかないのは、あくまで日本企業であろうとしたから。アメリカ流でやれば充分通用すると中村は考えた。しかも先進国中数少ない人口増加国。プレーヤーも多く、市場も日本の約5倍。そこで売れるものを作れば世界へとつながっていくはずという計算もあった。
起業し、事業の立ち上げ、売却を経て成功
中村は、大学卒業後NTTに就職した。当時はちょうどインターネットの黎明期にあたり、インターネットの可能性を肌で感じていた。この便利なものをもっと広めたいという思いが強かった。しかし、大きな組織の中で新入社員の力で会社を動かすことはできない。一方、労組が強く仕事は5時半には終わってしまう。そこで、仲間と語らい、メーリングリストのサービスを始めた。SNSもない時代のこと、まさに先駆的事業と言えた。最初の1年で1万人のユーザーを得て自信をもった彼らは、会社を辞めて独立。2000年には会員数40万人超を達成するが、競合企業がヤフーに買収されたのを機に、楽天に売却。中村は、売却益をもとにIT技術者育成のスクール事業を始めた。
ドットコムバブル崩壊後のリストラの追い風を受け、初年度で3億円の売上げを上げるが、やがてブームが去ることを見越し、まだ端緒についたばかりのクラウド事業に乗りだしたというわけだ。
こう見てくると、中村がいかに時代の空気を読むことに敏であるかがよくわかる。
「いえいえ、たまたまインターネット黎明期にNTTに入社したという運のよさが大きいでしょう。今日にまで至っている理由の8割はそれだと思います」
クールな表情で謙遜する中村だが、これまでの動きからして、アメリカでの事業展開は要注目だ。しかも従来のサービスではなく、新たなサービスを展開していくというから、さらに興味は深まる。
引用元:CEO社長情報
記事掲載日:2012年12月