国内最大級のブランド古着マーケットを構築 時流を敏感に読むビジネスモデルで成長を続ける
ファッションアパレルに「リサイクル」という概念を定着
「ゴミバコのないセカイへ」を企業理念として、リサイクルショップ運営やECサイト運営などの事業を展開するベクトル。リアル店舗だけでなく、ITテクノロジー・インターネットも活用し業績を順調に拡大させている。「リサイクル革命」「IT革命」「学びの革命」の実践を目指す代表取締役の村川 智博氏に、ベクトルの成長の要因と今後のビジョンを聞いた。
現在ベクトルは、オンライン宅配買取サービス「フクウロ」や全国で95のリサイクルショップ「ベクトル」を通じて仕入れた古着ファッションアイテムを、自社運営の通販サイト「ベクトルパーク」の他、楽天市場やYahoo!オークションなどで販売するマルチチャネル戦略を展開している。取扱うブランド数は6000以上、アイテム数では常時70万点超と国内最大級のブランド古着マーケットを構築している。さらに、2016年には物流拠点として「ベクトルグローバルポート」を新設。商品の査定から買取成立までの手続き、出品作業までを一括処理できる体制を構築した。
今や、ベクトルの総流通額は、46億円。従業員は202名。上場をも視野に入れるレベルにある。
そんなベクトルだが、起業のきっかけが実にユニークといえる。
「もともとは、学生の頃から趣味でスニーカーやGショックを雑誌を使って集めていました。19歳の時にアルバイト先で知り合った方に居酒屋のオーナーを紹介され、その軒先で商売をスタートさせてもらったのがベクトルの原点となっています」と村川社長は当時を振り返る。
その後、順調に店舗数を拡大するとともに、インターネットを活用しビジネスを広げたベクトルだが、成長の要因は時流に敏感であったことを村川社長は指摘する。
「自分たちはメーカーでなく、今流行っているものを買って売るという商売であったのが良かった。流行りに敏感になれたというか。また、流行りに乗ってやり方を変え続けていかなければいけないという意識が染みついていたのも大きい。ITに注目し、システム構築やプラットフォーム作りに本格的に着手したのもその一環です」
ピンチをチャンスに変え、経営危機を乗り越える
もちろん、1997年の創業以来、すべてが順風満帆であったわけではない。幾多の失敗を乗り越えてきている。創業当初にバイヤーに騙されたり、業務ミスで大幅な追加納税を課されたりしたほか、2016年には物流業務がパンク寸前に陥った。それらのピンチを、見方を変えチャンスとし、事業展開を大きく変えてきた点も見逃せない。
「ベクトルにとって、ライバルは時代なんです。時代はどんどん変わっていきます。そのスピードについていかないといけない。まずは、自分が変わらなければと人と会って最先端の話を聞いたり、自己啓発本を中心に様々な本を読み漁りました。良いと思ったらすべてを即実行することを全社レベルで徹底していたので現場を混乱させたことも多々ありました。今は、何をアウトプットすべきか、何が会社にとって必要なのかを咀嚼できるようになりました。おかげで、チャンスの流れに上手く乗れている気がします」(村川社長)
買取から物流まで、ワンストップで担える体制を構築
今後のベクトルの成長戦略について、村川社長はどう考えているのか。単刀直入に聞いた。
「ファッションメーカーやIT企業との積極的なアライアンスを図り、リユースビジネスを多角的に推進させていきたい。新しいサービスやプラットフォームも増やしていき、インフラ業で勝負したいと思っています。リサイクルショップを複数店舗運営する企業やセレクトショップにも、ベクトルのシステムを使ってもらえるよう働きかけているところです。」
ベクトルにとって強みとなるのは、物流拠点となる「ベクトルグローバルポート」の存在だ。これによって、膨大な数に及ぶファッションアイテムをワンストップで査定から買取、出品までできる体制を構築した。しかも、村川社長は今後は中古にだけこだわるつもりはないという。
「新品商材を取り扱うアパレル業界では、商品の在庫が何%か余ることを計算した上で生産しています。その余った商材をベクトルのインフラを使って売っていきたい。新品から中古までをワンストップで請け負いますという形で連携のシステムをご提案しています」
上場後にはM&Aも。尖ったブランドがターゲット
また、マルチチャネル戦略をさらに加速させていきたいという想いも持っている。
「ベクトルがまだ連携していない他社プラットファームの良いところも積極的に利用していきたい。とにかく、色々なプラットフォームを活用したいと思っています。その点も、リサイクルショップやセレクトショップにはアピールしていくつもりです」(村川社長)
さらには、上場後にはアパレルメーカーのM&Aも考えているという。「想定しているのは、少し尖がったブランドを取り扱う中小企業をターゲットにしたい」と村川社長は目論んでいる。
いずれにせよ、この数年でベクトルは戦略を大きく転換させてきた。それだけ時代も変わってきたという証であるのは間違いない。時代が要求する体制が構築できているからこそ、ベクトルはアライアンスを積極的に進めているといえよう。
業務の役割分担が不可欠に。多様多様な人材を迎え入れたい
ベクトルが今求める人材像についても村川社長に聞いた。
「特に一つの型にはめるつもりはありません。それぞれ考え方は違っていても良い。多種多様な方と一緒に仕事をしたいと思っています。これが正解なんてないですね」
その背景には、今後は社員の役割分担を明確化していきたいという想いが村川社長にはある。
「例えば、現状は店舗で買取り、インターネットに掲載し、入金確認メールを発信するところまですべて担っているが、これからはお店は買取り、出品はコールセンターと業務を区分けしていきたい。当然ながら、それぞれで求められる人材像も変わってきます」と語る。
interviewer
引用元:ベンチャータイムス
記事掲載日:2017年12月11日