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FILE NO.085
IT・WEB

夢の街創造委員会株式会社 中村利江 | 街のお店の出前機能をITで地域社会のインフラに

夢の街創造委員会株式会社 代表取締役社長 中村利江

宅配ポータルサイトが積極的にM&Aを推進

夢の街創造委員会は昨年来、M&Aなどで3社を傘下に加えた。「ずいぶん積極的に見える」という印象に対して、中村利江社長はこう返した。

「まだまだこれからです。M&Aは今後どんどん進めていく。1プラス1が3以上にならないとM&Aの意味がないと考えているので、シナジー効果を得られる分野で1プラス1が3以上になるM&Aを行なっていく方針です」

宅配ポータルサイト「出前館」を運営する同社は、昨年(2013年)3月にケータリングオーダー受付の日本フードデリバリーを持分法適用会社化、5月に飲食店向け焼酎通販の薩摩恵比寿堂を子会社化、11月にシニア層向けの情報サイト「シニア・ナビ」運営のZENを子会社化した。さらに、今後も積極的に進めていくという。

こうした積極的なM&Aの背景には何があるのだろうか。

業績見通し好調も課題は単独事業への依存

昨年度(13年8月期)は売上高20億8600万円で53・5%増、経常利益は2億7400万円で24・5%増だった。主力の出前館事業でオーダー手数料を中心に売上高が伸びた結果について、中村社長は要因をこう振り返る。

「スマホからのオーダーを増やすためにスマホサイトやアプリをリニューアルし、GPS機能を加えるなどユーザーインターフェイスを改善したことで、予測通りにオーダーが増えた」

今期(14年8月期)も引き続き好調で、業績見通しは売上高34億円(前期比62・9%増)、経常利益3億5700万円(30・1%増)である。

中村社長は「機関投資家からは、抑えすぎの数字で、もっといけるはずだと言われた」と話すほどだ。

しかし、好調を持続するなかで同社は、出前館事業の売上構成比を課題に挙げている。

前年度には連結売上高の68・4%を占め、単独事業への依存度の高さを課題と認識しているのだ。「売上構成比の目標は当面30・3%」(中村社長)そこに向けての施策が、M&Aや出資による事業領域の拡大である。
実際、どのようなシナジーが生まれているのだろうか。

法人需要、高齢者開拓……
確かなシナジー効果

日本フードデリバリーの事業はケータリングの受付だけだが、顧客には法人が多く客単価が高い。個人顧客が中心の出前館からすれば法人需要を掘り起こすことができ、一方、日本フードデリバリーは出前館の加盟店を活用できる。その成果は、日本フード社の売上高2倍増となって現われた。

薩摩恵比寿堂の特徴は、コールセンターの能力にある。テレマーケティングで国内約2万店の飲食店を相手に、薩摩焼酎を年間に19億円売上げているという。夢の街創造委員会が大阪市で運営していたコールセンターを鹿児島市にある薩摩恵比寿堂に吸収させることにより、テレマーケティング力の強化だけでなく、人件費の削減効果も生まれた。

シニア向けコミュニティサイト「シニア・ナビ」は会員1万2000人で、月間PVが100万件に達する。夢の街創造委員会はこのサイトからシニア向けの事業ニーズを吸い上げていく。高齢者宅への配食サービス需要がますます拡大する時流にあって、新たな商品やサービスの開発に取り組む方針だ。

30分以内に医薬品が届く新たなパートナーの可能性

14年1月、出前館事業は前月に続いて好調な数値をはじき出した。オーダー数が前年同月比14・3%増、加盟店数が4・4%増、会員数が14・2%増。ランチタイムのデリバリー需要の増加に合わせて、メルマガで人気店のランチメニュー情報を配信したうえに、出前館サイトに「出前ランチ特集」ページを設けて1人前から注文できる店舗などを掲載した。このプロモーションが奏功したという。

さらに既存店舗のオーダー数を増やす施策として、レーダーチャートで店舗の強みや課題を分析して、出前館内の店舗ページへの写真の掲載方法や配達範囲などを指導している。

新規加盟店の獲得も出前館事業の持続的な成長の条件だが、今年に入ってから新たなジャンルの加盟店候補が現われた。

「コンビニエンスストアが宅配を始めたことにドラッグストアは危機感を持っている」と見る中村社長。医薬品の宅配には確かな需要があると見込んでいる。

「出前館は最短で注文から30分で届けている。同じように体調を崩した人のもとに最短30分で薬を届けるサービスが実現できたら喜ばれると思う」

もし体調を崩したときに、わざわざドラッグストアまで出かけなくても済むのなら、特に単身者や乳幼児を抱えた世帯、高齢者世帯などは大いに助かるに違いない。

出前館事業の進化とM&Aによる事業拡大で、同社の業態はどのように変化していくのだろう。中村社長はステキな表現で事業の進捗を語った。

「当社の事業形態は夢の街にどんどん近づいていると思う」

夢の街創造委員会はポータルサイト運営事業を核に、地域社会の生活インフラづくりへ着実にその歩みを進めている。

引用元:CEO社長情報

記事掲載日:2014年3月

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