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FILE NO.057
サービス業

アトラ株式会社 久世博之 | 鍼灸接骨院業界に新しいビジネスモデルを導入、伝統的な鍼灸術・柔道整復術を生かした企業展開を図る

アトラ株式会社 代表取締役 久世博之

拡大続ける「ほねつぎ」市場でFCビジネスを展開

鍼灸接骨院・整骨院と聞くと、40代以上の人なら「ほねつぎ」を思い浮かべるだろう。一方、若い世代になると、スポーツによる捻挫、脱臼、骨折などのエキスパートとしてのイメージが強くなってくる。実際、アスリートのトレーナーを目指し、柔道整復師・鍼灸師の資格取得を目指す若者も多い。

現在、鍼灸接骨院・整骨院は、日本人の約5人に一人が利用し、全国に約4万院あると言われている。規制緩和により養成機関が増え、柔道整復師の資格取得者は毎年5000人ほどにのぼり、10年後には10万人にまで拡大すると見込まれている。市場規模は、1996年ごろに50〜60億円であったものが現在は200億円と推定されており、今後高齢化が進行するほどに市場は拡大していく。

そんな将来性の豊かな市場で異彩を放つのがアトラ株式会社だ。個人経営が中心の鍼灸接骨院業界にあって、フランチャイズ(FC)ビジネス等の鍼灸接骨院支援事業を関西中心に展開し、2013年12月期の売上げは、前期の2倍近い13億円台を見込んでいる。

企業法人化により業界全体の社会的地位を向上させる

「わたしが資格を取って、独立開業を目指して鍼灸接骨院に勤めていた頃は、まだまだ徒弟制度のような仕組みが残っていた。技術の習得、経営ノウハウの取得と引き換えに”無料で働く修行”といった観が強い時代でした」と語るのは代表取締役の久世博之だ。そのような古い体質の業界が変化しはじめたのは、2000年前後に始まった規制緩和への動きからである。

「鍼灸接骨院・整骨院は医療機関と同様に、さまざまな規制が設けられていました。企業化を目指した背景には、企業法人化と養成機関である学校の規制緩和があります」

現在、事業パートナーである取締役塩中一成は「独裁的な経営は時代の流れにそぐわない。透明性の高い経営が求められる」と語る。

アトラが掲げる経営理念は「世界中の人を健康にしたい」。多くの人を鍼灸術・柔道整復術で健康に導くためには、多くの鍼灸接骨院・整骨院が必要との想いから、FCをスタートさせた。

久世は「人の役に立つ仕事でありながら、それぞれが一国一城の主として企業化せず、社会的認知も低いのはいかがなものか。企業化し、新しいビジネスモデルを構築して企業規模の拡大を図ることが、業界全体の社会的存在価値をアピールすることにつながる」と語る。09年に直営店舗によるチェーン展開を推進していた株式会社トライニンと合併し、FCを本格化させた理由も、そこにある。

現在、トライニンが運営していた直営店は徐々にFCへの切り替えを進めており、前期までの経常利益におけるマイナスは、それが要因となっている。

異業種オーナーの業界参入を推進
FC28院を展開する

アトラが展開する事業は、大きく6つに分類される。①異業種の参入を前提としたパッケージモデルでFC展開を図る「ほねつぎブランド」事業、②資格者や既存院を対象とする開業・リニューアル支援に特化した「真心道グループ」事業、③介護事業のFC化を推進する「さくら介護グループ」事業、④レセプトの効率化・スピード化を図る「アトラ請求グループ」事業、⑤施術研修や経営情報等の提供を行なう「ほねつぎ大学」事業、⑥集客のサポートを行なう「ハニースタイル」事業である。

メイン事業「ほねつぎブランド」のFCビジネスは、異業種のオーナーを対象に、経営から施術者の教育まで、すべてを提供するビジネスモデルが特徴だ。

鍼灸接骨院のFCの場合、飲食や物販のケースと異なり、大きな障壁が二つある。一つは施術技術の維持、もう一つは施術者の高い独立開業意識である。

手でしか行なえない施術以外は徹底して機械で対応し、院ごとの施術レベルを一定化させる。院のスタッフには短期間で機械・システムの技術が習得できるマニュアル教育を実施する。

独立意識の高い有資格者には、「独立しても競合になり得ない」スタンスで対処。日常の施術記録・患者情報・顧客リストなどすべての情報を院内に留めておく仕組みにより、患者は施術者に付くというこれまでの常識を「患者は院に付く」へと覆した。

FC展開している院の規模は50〜60坪。個人経営の鍼灸接骨院の2倍以上になる。車での所要時間15分圏内で人口6万人以上を一次商圏とし、1日の来院患者数を80人として収益モデルを設定している。既存店の多くは大阪市内で展開するが、家賃設定の低い用地を選び抜いている。規制のもとに施術単価が固定されているだけに、家賃に対してはシビアでなければならないからだ。現在、28院をFC展開するが、今後は郊外への出店を意識し、院の大型化を推進しつつ、出店も加速していく。

ITを活用し院の請求業務を効率化
FC1000院を目指す

久世代表取締役の先見性は、「さくら介護グループ」事業にも見て取れる。健康保険による請求をビジネスモデルとしていた従来の鍼灸接骨院・整骨院に、介護保険による請求という新しいモデルを導入。将来性を見越し、05年に株式会社さくら介護グループの近畿エリア権を取得。現在は中部エリアの権利も取得している。

ITを積極的に活用しているのも同社の特徴。「アトラ請求グループ」事業では健康保険・介護保険等の複雑な保険請求に対してはレセプトソフトを無料提供し、インターネットを活用したセキュリティ度の高いASPサービスにより、データ管理のサポートを行なう。このサービスを利用することにより、鍼灸接骨院・整骨院は保険請求業務の効率化が図れ、本業に専念できる体制が整う。

同社では今後の長期目標として、国内のFC1000院、アトラ請求グループの加盟1万院を掲げる。

「将来、楽しみなのが『ハニースタイル』事業で発行している情報誌の会員登録者の活用です。現在8万人会員で、その70%が20〜50代の女性。早期に20万人規模に拡大し、新たなビジネスに結びつけていきたい」

伝統的な鍼灸術・柔道整復術を、ITの活用や新しいビジネスモデルの構築で企業化し、成長軌道に入りつつあるアトラ。伝統に安住せず革新を続けていくところに、古くて新しいビジネスが生まれてきたといっても過言ではない。久世の目には、いままた新しい鍼灸接骨院・整骨院ビジネスの姿が映っているに違いない。

引用元:CEO社長情報

記事掲載日:2013年6月

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