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株式会社ベガコーポレーション 浮城智和 | 家具のEC事業で国内トップを窺う企業の今度はソーシャルゲームで海外攻略

株式会社ベガコーポレーション 代表取締役 浮城智和

当初は、家具屋がゲームやってうまくいくのかと言われた

ベガコーポレーションは、北九州市で2004年に創業、現在福岡市に本社を置く家具専門のEコマースの会社である。「ロウヤ」というECサイトを運営し、昨年度売上げは20億円強、今年度は30億円を超えそうな勢いだ。

楽天の「ショップ オブ ザ・イヤー2011」では、家具インテリア総合部門で第3位に輝いている。その”家具屋”さんが、ソーシャルゲーム市場に参入したのだ。しかも会社を立ち上げたのはシンガポール。完璧に世界市場をターゲットに見据えてのことだ。

「iPhoneが2007年に発表され、日本発売が08年。現在世界的なスマートフォンのブームになっていますが、マーケットがしばらくホワイトスペースの状態だった。そこに、われわれが得てきたノウハウを使えないかと考えていたんです。

いまDeNAさんやGREEさんがIT企業のなかで群を抜いた売上げと利益で注目を集めていますが、彼らがスマートフォンに本格参入したのは、実はまだ去年や一昨年のことなんです。充分彼らに太刀打ちできると思いました。

われわれは、ソーシャルゲームをバーチャルグッズのEコマースととらえているんです。服が欲しいというのはアバターでもリアルでも欲しいと思う人にとっては同じだと思います。ですから、われわれとしては、ソーシャルゲームを始めることは、家具からバーチャルグッズへの商材転換に近いものなんです。しかし、当然のことながら、『家具屋がゲームやってもうまくいくはずがない』と当時は言われましたね」

こうした声をよそに同社の浮城智和社長は、新たな挑戦に勝算ありと踏んで行動を起こした。10年8月、テスト版として、社内のプログラマー、イラストレーターを起用して無料ゲームアプリ「立ち呑み」をリリースしたのだ。3人月分、100万円くらいの制作費だったという。

「無料でどれだけユーザーをとれるか、需給バランスはどんな具合か、われわれの作ったソフトのクオリティが通用するのかを見たかったんです」

その”テスト”がなんと3日で10万ダウンロードを記録し、アップルのフリーダウンロード国内第3位となる(最終的には、テスト期間中の数ヵ月で80万ダウンロード達成)。浮城は「あのクオリティでも第3位なのだから、これはいける」と確信を得た。しかも心理的要素や導線が家具の場合と変わらないことも実感した。こうなったら後はやるだけ。もちろん目指すは世界!

世間で言われるようなVCのデメリットはないと思います

「世界でやらないと機会損失なんですよ」と浮城は言う。「iPhoneの普及で、いわばプラットフォームはできあがっているわけですから、国内市場は1億2000万人、世界なら70億人をターゲットにできる。雲泥の差です」

10年11月、シンガポールに現地法人Nubee Pte.Ltd.(ヌービー)を立ち上げる。家具の輸入を通じて、シンガポールはポテンシャルが高いと浮城は気づいていた。資本金200万シンガポールドル(円換算で約1億2000万円)。親会社の当時の資本金4000万円の3倍にもおよぶ額だから、浮城の意気ごみも知れるというもの。現地で優秀な人材を募り、アジア、世界を相手にするならと中国語版、英語版のゲームアプリを作り始める。2011年にまず、コインを投下して宝物を獲得するコインプッシャーゲーム「コインパイレーツ」をリリースし、これがシンガポールだけで400万ダウンロード。続いて、日本をテーマにした夢の町作りゲーム「ジャパンライフ」は、リリースしてすぐにiPhoneにおいて中国で800万弱のダウンロードに達し、App Storeのトップグロッシング(売上げランキング1位)となり、さらに香港、台湾、マカオでも1位を獲得するにいたる。

「海外を目指すなら、日本人が一から学ぶより、最初から海外のエンジニアやデザイナーの感覚でやったほうがいいと考えていました。ジャパンライフに関しては、町作りゲームというテーマだけは決め、モチベーションを高める意味でも、アイデア出しの部分から現地スタッフに”きみたちのやりたいことをやれ”と投げたんです。すると日本をやりたいと言う。アジアの人の日本への憧れも知っていましたから、GOを出して後はまかせたという形です。それが思ったとおりうまくいきました」

そうした成果をふまえ、昨年9月に、ベガコーポレーションは、ジャフコから第三者割当増資で10億円を調達した。

「家具の売上げで年間70〜80%成長していましたし、創業当時から、ジャフコさんだけでなくVC(ベンチャーキャピタル)さんからお話はあったんです。そのころは、情報交換のみにとどめていました。しかし今回はNubeeのライバル企業がすべて上場企業。知名度の問題は別としても資金的に負けてしまう。そこで、申し出をお受けしたんです。もちろん、額については相当交渉しました。

世間で言われるようなVCさんを受け入れるデメリットは、まったくないと思いますね。舵取りに関して不自由はしていませんし、定期的に提出するレポートで作業量が5%分アップしたくらい。彼らはものすごく情報量を持っていますし、世界的な人脈も手にしている。マーケティングはこうなっているということも教えてくれますし、海外で事業をやっていくうえでコネクションがあるかないかでは大違いです。要所要所で助けてもらっていますし、Nubeeを応援してくれています」

リリースしたゲームアプリは、計画としては1000万ダウンロードを目指していたが、結果は目標を超え現在1080万に達している。Nubeeは今年1月子会社を設立、東京・六本木ヒルズ15階にオフィスを構えた。こうした動きに伴い、ベガコーポレーションは13年冬をメドに東証マザーズ上場を目指している。

トップ3になった以上時代変化を作っていかなければ

現在市場において、大企業の商品の総流通額の10%がEコマースだという。ニトリの売上高が3000億円として、少なくともそのうち300億円は取りにいける部分だと浮城は見ている。

「これからはニトリとイケアでなくてベガというふうにしていきたいですね。実物を見ないで購入することの不安要素をいかになくしていくかが課題です。楽天でトップ3になって、眺望も違ってきました。これからは新たな文化を作っていかないといけないと思っています。それがトップの宿命。われわれが時代変化を作っていくべきだと考えています」

自宅兼事務所で、たった2人で家具のドロップシッピングから始めたEコマース事業。時代の流れをうまくとらえながら、他社に追いつかれてはそのつど改善策、打開策を講じて勝抜いてきた。それでも家具の貿易を始めたころには、中国からコンテナで買い付けた家具すべてが不良品だったという失敗もあった。浮城はこれまでを振り返って言う。

「ここぞというところで勝てればいいんです」と。

家具のEコマースで新時代を画そうとする一方で、ソーシャルゲームで大手と海外マーケットでしのぎを削る浮城。「水面下では十分もがいていますよ」とは言うものの、波に乗っている男の爽やかで溌剌としたオーラが全身から発せられていた。

引用元:CEO社長情報

記事掲載日:VOL.2 2012年6月

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