経営者インタビューサイト LEADERSFILE

何が儲かるかではない。何をやりたいかだ!ぶれずに初志貫徹でやり続けよ

株式会社S-FIT 紫原友規 記事サムネイル画像

徹底した顧客目線で成約率90%!!

S‐FITは東京を拠点に事業展開する不動産賃貸専門会社だ。

13年6月期に年間売上高32億円、経常利益1億4000万円を計上した。売上構成は、稼動率向上や集金代行など物件管理を受託するプロパティマネジメントが17億円、法人向け仲介事業が8億円、個人向け仲介事業が7億円となった。

同社の設立は03年、紫原が25歳のときである。紫原は賃貸住宅の紹介店舗に新しいスタイルを取り入れた。それは「借主目線で借主側に立った不動産店舗にすること」である。

まず店舗を業界の一般的なスタイルから一変させた。顧客が入りやすいようにビル1階に入居して、外から店内全体が見えるように設計し、店内をカフェのような内装に施した。『お部屋探しCAFEヘヤギメ!』という店舗名にふさわしく、テーブル席も設置され、入店するとコーヒーなどが無料で提供される。

賃貸の顧客層は20代〜30代前半が70%、30代後半まで含めると80%を占める。若い人が入りやすい店舗を追求した結果だ。

さらにヘヤギメ!では物件数も多い。自社物件のみならず地域の不動産会社や管理会社からも情報収集し、該当条件に合うものを徹底して提供する。「いろいろ見たい」という借主目線の徹底から生まれたサービスだ。

店舗は現在、東京と名古屋を中心に直営12店、FC10店を展開しているが、すべて駅前の一等立地である。「家賃は高いが、地域ナンバーワンになるには一番よい場所に出店する必要がある」と紫原は述べる。

一方、社宅を探す法人顧客への借主目線はスピード対応だ。急な人事異動などで、法人顧客には急いで物件を確保したいというニーズが強いが、家賃や通勤距離などの制約もある。同社は「1時間ルール」「当日ルール」といった法人ならではの独自ルールを定め、クイックレスポンスを徹底させた。

こうした取り組みの結果、相談件数に対する契約率は、個人は55%、法人にいたっては「業界平均40%」(紫原)に対して90%に達している。個人と法人を合わせた昨年の契約件数は1万968件で、全国賃貸住宅新聞の調査で全国19位にランクされた。

オーナー向けサービスの徹底から生まれた「介護賃貸」

仲介実績の向上と共に、オーナー向けのサービスも展開している。  紫原は「いま、多くのオーナーが空室に悩んでいる」と強調する。同社は構築した借主チャネルを武器にオーナーの稼働率向上を手助けする。空室を改善することによりオーナーとの信頼関係を構築し、管理物件の獲得も顕著だ。稼働率向上手法をPR誌等で公開するなどもしている。

しかし、全国の賃貸住宅の空室率は上昇の一途だ。国立社会保障・人口問題研究所によると、2010年に2478万人だった20〜34歳人口は、30年には1720万人と30 %以上も減少する。同時期の75歳以上人口は1422万人から2266万人へと60%近く増加する。

将来の人口推移を踏まえて、紫原が着目したのは、拡大するシニアマーケットを賃貸経営に取り込むことである。

実は介護事業者も物件確保に悩んでいた。紫原はオーナーから次々と入居を断られていたデイサービス事業会社から相談を受け、介護事業者向けに『介護物件ナビ』を立ち上げた。現状、駅から徒歩10分以上のエリアだと賃貸住宅の稼働率は低下する。そのエリアに介護賃貸の需要を見いだしたのである。

提案する施設は、デイサービス、ショートステイ、グループホーム、有料老人ホーム、サービス付高齢者向け住宅の5種類。入居する事業者も、同社独自の査定をもとに選別したうえで紹介する。

オーナーへの土地活用の提案も賃貸住宅か介護賃貸か、双方の賃貸査定・計画を比較し、立地条件に合わせ決定していく。

介護賃貸の対象は戸建住宅にまで及ぶ。たとえばマイホームを建てる際に1階にデイサービス向けに貸す賃貸機能を設けるというものである。
たとえば施工費が3800万円なら、35年返済だと返済額は月約13万5000円だが、月20万円の賃貸収入を得られるため、逆に毎月約6万5000円が手元に残る。

しかも同社がサブリースをかけるので、入居事業者が決まらなくても賃料を得られ続ける。

紫原は、借主目線を徹底することで、他社にはない独自のサービスを展開することに成功している。

5年後の売上げ100億円
向こう10年で勝負する

紫原は同業者から「何が儲かるか?」とよく質問を受けるというが、この質問そのものに問題があると指摘する。

「何が儲かるかではなく、何が必要かを徹底して考えることだと思います」。何をやりたいかという志が大切だということだ。

実は紫原はリーマンショックを経験している。当時は、たとえばビル1棟を購入して、再生し売却すれば10億円程度の利益が出たこともあった。一方、賃貸仲介は1戸7〜8万円の手数料収入の積み重ねだ。金額は小さいが、残った事業は後者である。

「誰でも金額の大きい事業や流行に傾きやすいですが、初志貫徹でやり続けることが大切で、ぶれないことですね。当社はお客様のニーズを一つひとつ追求し続けてきた。その結果が事業の拡がりや発展につながってきたと思います。その実績の積み重ねは、信頼となり次への案件へとつながります」

紫原はそう話しながらも、同社の現状には満足していない。

「設立10年で年商32億円では小さい」

5年後に売上高100億円にする。「向こう5年は拡大します」と方針をすえ、介護賃貸事業やリノベーション事業を伸ばしていく。その資金として、さる7月に、2億円の社債を銀行に引き受けてもらったばかりだ。