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MLBでも有名な独創企業が開始する まったく新しい体感型ルームの全国展開

ファイテン株式会社 平田好宏 記事サムネイル画像

新事業にさまざまな大手専門企業が提携して集結

スポーツ選手が首や腕にはめているリング状の商品で世界的に有名な会社がある。会社名はファイテン。ダルビッシュ有投手が左手首にブレスをつけた姿は、すっかり定着した光景だ。

同社は、ナノレベルで水溶化したチタンや金、銀、パラジウム、プラチナをそれぞれの特性に応じて商品化してきた。その品目はネック、ブレス、サポーター、アパレル、寝具、食品、美容商材など約4000アイテムに及ぶ。

2007年、同社は日本企業で初めてMLB(メジャーリーグ)オーセンティックコレクションライセンス契約を締結。RAKUWAネック、RAKUWAブレスなど5アイテムがMLB公式野球用品に認定された。

同社は各競技分野のトップアスリートを起用して商品をブランディングし、国内128店、海外96店の「ファイテンショップ」で販売してきた。12年4月期の売上高は121億5100万円。

そのファイテンが今年、1983年の設立以来の大きな転換を行ない、事業の仕組みそのものを変革するというのだ。

創業社長の平田好宏は「当初から思い描いていた事業にようやくたどり着けた」と満面の笑みを見せる。

その新たな事業とは何か。それは「ファイテンルームという住空間の展開」(平田)である。壁紙、天井材、床材、カーテン、ブラインド、畳、さらに生活用水、空気。水溶化させた前述の金属を各素材にしみ込ませ、住空間に付加価値をつけて商品化する事業だ。

各分野の専門企業とも業務提携を行なった。医療・介護施設の設計で豊富な実績を持つ内藤建築事務所のコーディネートで、ビニールクロスはトキワ産業、塗料は大日本塗料、オフィス家具はイトーキ、ワックスはリンレイなど、それぞれの有力企業と提携した。

ファイテンルームの提供対象は病院、老人介護施設、マンション、戸建住宅などで、すでに導入した施設もある。

“アクセサリーから家へ”が現実化する

特別養護老人ホームの長生園(京都府南丹市)や、その他のグループホームの20施設などでは「因果関係は解明されていないが、入居者の睡眠状態が改善され、徘徊が減ったという報告を受けている」(平田)という。13年4月には、大手精神科病院の北山病院(京都市・471床)がすべての病室をファイテンルームに改装する。

平田社長が着目しているのは認知症への対応だ。厚生労働省は2012年8月、年に280万人だった認知症高齢者が25年には470万人に増加するとの試算を発表した。これを受けて、翌9月に発表した認知症施策推進5ヵ年計画では、精神科病院だけでなく、一般病院と介護保険施設での認知症対応力の向上を提言した。同社が目指す市場はそれだけのポテンシャルを持っているのだ。

一方、マンションと戸建て住宅では、マンションメーカーと住宅メーカーに、競争力強化の商材として導入を促していく。すでに、京阪神地区で『100年住宅のゼロホーム』を供給する有力企業、ゼロ・コーポレーションと契約して、今春から展示場の住宅にファイテンルームを開設する。

ファイテンルームの展開に伴い、同社は宅建免許を取得して登録を済ませた。平田は「これは、今日まで積み上げてきた最大の商品である。いよいよアクセサリーから家へだ!」と明言する。

しかし、ファイテンルームの展開は単なる事業領域の拡大ではない。趣旨は事業の土俵を変えることであり、それは事業コンセプトを確認すれば理解できる。

同社は金属の特性を採用する固有技術を商品化しているが、商品開発という発想はない。事業コンセプトは「生活のなかで日常的に触れあう商品に当社の技術を練りこんで、商品を通して間接的に技術を買っていただくこと」(平田)。

今後は技術を提供する媒体をグッズから空間へと変えるのである。同社の商品は継続的な使用を経て価値を生み出すが、物販である限り、継続性は顧客の意志次第である。しかも売れ行きが、技術よりも起用する著名人に左右されやすい。平田はここに限界を見出して、土俵を変えると決断したのだ。

5年後には現商品の物販事業は
全体の5%に抑える

ファイテンルームを展開する一方で、身近な提供方法として着手するのがサロンの全国展開である。サロンの強みは、新規顧客のリピート率にある。初年度リピート率は物販店10%に対して、サロンはタイプによって70〜100%。利益率もサロンのほうが高い。

展開するサロンは3タイプ。同社の健康機器を体感できる「ファイテンIPサロン」、美容商材の体感やヨガを学ぶ「iP美you人(アイピービュート)恵比寿」、家庭用電気磁気治療器などを体感できる「ファイテンレンタルセンター」。現在はIPサロン2店、iP美you人1店、レンタルセンター4店を直営で運営しているが、3タイプともフランチャイズ(FC)で展開する。

IPサロンとiP美you人恵比寿は、複数のFC加盟を事業とするメガフランチャイジーを中心に加盟店を募集する。10坪前後で開業できるレンタルセンターの加盟対象は、業績低迷に直面する地方のスポーツ用品店、美容院、接骨院など。店舗の一角に開設して、現有の従業員で運営できるパッケージで出店する方針だ。

同社は5年後に、ファイテンルームとサロンの売上構成比を90%、物販は10%と業態をガラリと変える構想だ。この変革に社員はどう反応しているのだろうか。

「当初は抵抗勢力もあったようだ」と笑い飛ばす平田は、気づきを促したと強調する。「社員の意識を転換させるには、命令や教育より気づきのほうが効果的だ。気づきに勝る変革はない」。先に触れた物販店とサロンとのリピート率と利益状況を示せば、社員は気づきを得て意識を変えるという。 社員が変われば会社も変わるのは普遍の定理である。ファイテンはヘルスケア市場に新たな地歩を固めようとしている。