リスクコミュニケーションサービスは意思決定に直結
いまや商圏単位でのきめ細かな気象情報はスーパーやコンビニエンスストアの仕入業務には欠かせない。主要スーパーや、ほぼすべてのコンビニエンスストアでは、機会ロス、在庫ロスの最少化を目的に、ウェザーニューズから気象情報を購入している。
航海や航空、道路、鉄道など運輸業だけでなく小売業にも市場を拡大できたのは、「単なる情報提供でなく、当社が”リスクコミュニケーションサービス”と呼ぶ、顧客の問題解決を図ってきたからだ」と社長の草開(くさびらき)千仁は振り返る。
同社が世界最大の民間気象情報会社に成長した第一要因は、気象情報の市場性に着眼した創業者、石橋博良氏のゼロベースで考える「無常識」。第二は、法人顧客の問題解決を提供するマーケティング力。第三は、社員が24時間365日愚直に提供し続けたこと。そして第四がITインフラの整備。草開はそう分析する。
仮に「もっと精度の高い空港の風の予測が欲しい」「もっと精度の高い週間予報が欲しい」などの要求に対して、それだけをしていたなら、今日の同社はないという。
リスクコミュニケーションサービスはユーザーの意思決定に直結している。航空会社に対しては、たとえば成田発仁川行きの航空に対して、機種やパイロット、滑走路の状況を把握して、気温や雲の高さのを算出。燃料を多く積んで予定通り航行したほうがよいか、あるいは遅延させたほうがよいかなどを提示する。航空会社は天候不良による着陸空港の変更や、欠航で発生する損失の大半をカバーできるのだ。
「情報提供だけなら年間100万円の売上げだが、マーケティングによって千数百万円の売上げになる。新しいマーケットを開拓した」(草開)。
24時間365日何が起きても自社で解決
ITインフラ作りには設立3年目から取り組み、気象データベース、ネットワーク、プログラミングの全業務を社内で担う体制を構築した。草開は「24時間365日、何が起きてもすべて自社で解決できるようにした」と述べる。
さらに、企業会員2500社から市場ニーズ、個人会員400万人からは実況レポートが常時提供されることも、同社の強みだ。サービス開発や情報の精度アップに大きく寄与している。
業績は好調だ。直近の3年は、10年5月期に連結売上高が118億2400万円、同経常利益は22億5700万円、11年5月期は122億円、25億9100万円、12年5月期は129億1100万円、27億8800万円と増収増益で推移している。
同社は12年6月からの10年間を「第4成長期」と位置づけた。空と陸の交通市場のニーズ顕在化を見込んで、①日米欧の世界三極体制の構築、②マーケティング力と人材強化、③欧米水準のIT力の強化——の3つを重点的に取り組んでいく方針だ。