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2割経費を削って 売上2割アップ これができればどんな会社、組織でも黒字化できる

株式会社エイチ・アイ・エス 澤田秀雄 株式会社ベネフィット・ワン 白石徳生 記事サムネイル画像

最初からナンバーワンを狙って起業した

白石 本日はありがとうございます! 会長にうかがいたいことはたくさんあるんですが、まず僕の初めての海外旅行の話をしてもよろしいでしょうか?

澤田 どうぞ。いつだったの?

白石 1987年、大学生のときでした。バリ島に行こうと思って、初めて格安航空券を買ったんです。雑誌の三行広告で見つけた六本木の会社に行ったら、小さなオフィスにアフロヘアの人がいて「これで成田空港行けば乗れるから」と。渡されたのは紙一枚。「騙されたかなあ」と思いました(笑)。

結果的には無事、バリに着けて、旅行中、いろんな日本人と会ったんです。その中のすごく旅慣れた感じの年上の女性に「航空券はインターナショナルツアーズで買わなきゃダメよ」と言われたんですよ。御社の前身ですよね?

澤田 そう。90年にH・I・Sに変更しました。H・I・Sというのは、僕の名前からとった秀インターナショナルサービスの頭文字なんです。

白石 そうなんですか。でも格安航空券を取り扱っている会社は当時からたくさんありましたよね。なぜ御社だけがこれほど勝ち残れたんでしょう?

澤田 それは最初から「ナンバーワンになろう」と決めていたからですよ。そのために、値段をどこよりも安くする努力をしました。

白石 どうして安くすることができたんですか?

澤田 僕は世界を4年半、旅していたから、有効な情報をたくさんもっていたんです。

そもそも世界のマーケットから見ると、日本は航空料金がものすごく高かったんですよ。外国から日本へ来る倍の料金がかかっていた。それはおかしいでしょう? でも同時に「チャンスだ」とも思ったし、若い人にもっと海外に行ってほしいと思ったんです。

白石 みごとに、その通りになりましたよね。

澤田 タイミングもよかったんですよ。78年に成田空港ができて、ジャンボジェット機の乗り入れが可能になったことによって、海外旅行が一般化する準備が整った。座席数も増え、安い航空券も出回るようになったんです。

白石 なるほど。

澤田 海外旅行者が増えれば、僕らの事業も拡大できますから。年商も6億、12億、24億……と倍々で成長させることができました。

お年玉企画でも赤にはしない
それこそが仕入れ努力

白石 そんなに順調でしたか。でもここ数年、旅行業界は黒字のところは少ない状況なのに、御社は黒字ですよね? なぜでしょう?

澤田 徹底してコスト削減をしているからじゃないかな。いかにムダをなくして生産効率を上げるか。生産効率が悪かったら、競争なんてできませんから。あとは仕入れ努力だったり、企画力だったり。

白石 お正月など「お年玉企画」と銘打って、びっくりするほどの低価格で提供していますよね。あれはさすがに赤字でしょう?

澤田 黒字だと思いますよ。それが仕入れと企画の努力です。

白石 それは驚きですね。あと今日、もう一つうかがいたかったのは、ハウステンボスの件です。2010年の新年会でお会いしたとき、「絶対に引き受けないよ」っておっしゃってましたよね。なのに、その後すぐに代表取締役社長に就任された(笑)。

澤田 そうそう(笑)。あのとき、みんなに「絶対、黒字にならない」って反対されたんだよね。

白石 本当はすでに気持ちは決まっていたんですか?

澤田 いや、7割はやらないと思っていた。決め手になったのは、佐世保市長が3回、頼みに来られたこと。それで嫌とは言えません。あと「日本のほとんどの会社は断った」というほど難しい案件だったので、やり甲斐があるなと。

白石 それをたった1年で黒字化ですから。すごいですよね。

澤田 いやいや。経費を削減して、効率を上げただけですよ。

白石 具体的には?

澤田 3分の1をフリーゾーンにして、2割の経費を削減。有料ゾーンは季節ごとのイベントなどを充実させて、入場者を2割増やす。これで収益状況がざっと4割変わる。それで黒字にならない会社なんてないですよ。

″あれもこれも″は間違い
やるときは一本集中で

白石 今、上海にも船を就航させているんですよね?

澤田 九州への観光客誘致は僕の大事な仕事だと思っているんです。佐世保でいえば、東京より上海のほうが近いし、人口も多い。大きなマーケットですよ。

白石 ハウステンボスの次に考えていることはあるんですか?

澤田 いくらでもありますよ。でも僕は同時にあれもこれもやらないんです。今はハウステンボス一本。年の半分は佐世保ですから。

白石 そんなにいらっしゃるんですか。でも意外です。旅行、ホテルから証券、銀行といろいろ手がけている印象がありますから。

澤田 やるときはそれ一本です。一つに集中しないと、事業は成功しないですね。僕の場合、人に任せても安心できるようになるまでは自分が集中してかかわりますが、その後は若い人に引き継ぐ。一つの事業がちょっと軌道に乗ると、あれもこれもやり始める経営者が多いけど、それは大間違いです。

白石 澤田さんの部下の方々って、すごくのびのびと仕事をされているように見えるんです。マネージメントはどうされてるんですか?

澤田 事業を任せる前はとことん細かいことを言いますが、任せたら一切、口を出しません。手を抜いたかどうかは結果で判断できるでしょう。ハウステンボスはあと一年は細かく見ていくつもりです。まだいまは毎日、園内を歩いて、塗装の錆ひとつにも細かく注文をつけてますよ(笑)。

白石 それは、やっぱり好きだからできることですよね?

澤田 好きなことばっかりでもないけどね。でも6割はやりたくてやってるかな。自分が感動しないのに、お客さんが感動するわけがないでしょう。日本初の『幻のゴッホ展』(7/29~10/28)も素晴らしいですよ。

白石 ぜひ見に行きたいです!