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FILE NO.010
サービス業

シダックス株式会社 志太勤一 | 楽しさと大切さを複合させて

シダックス株式会社 代表取締役社長 志太勤一
株式会社経営戦略合同事務所 代表取締役会長 天井次夫
シダックス株式会社 代表インタビュー

業界最大規模のレストランカラオケ事業が広く知られているシダックス株式会社だが、全国約3200ヶ所で1日平均60万食を提供する総合フードサービス事業や日本最大数を誇る車両運行管理事業、保育士業務や図書館の運営など、表面に出ない事業も幅広く手掛けている。 それらの事業は個別に展開しているようにも見えるが、すべてがサービスを提供するという共通意識で強く結びつき、密に連携し合っている。そうした総合サービス企業を確立した志太勤一代表取締役社長に、シダックスの経営理念について伺った。

新たな領域のサービスを想像

天井   私も20年ほど前からシダックスに注目してきましたが、あなたが社長に就任したのが13年前。一番大変な時期だったと思います。どうですか、当時を振り返ってみて。

志太氏(以下敬称略)  なにせ40歳の誕生日の前日 に「明日から社長をやれ」と言われて始まったことですから、確かに戸惑いはありました。その時に糧になったのが、社会人大学院の卒業論文で書いた“企業改 革論”です。長期計画書を作り、それをバイブルにしてまいりました。そこではまず、外部からの人材登用から着手しました。シダックスはもともと給食事業か らスタートした会社なので給食部門に精通している人材はいましたが、事業を拡大するためには新しい人材と仕組みが必要でしたからね。

天井   そうして今では売上高2000億円以上。これだけの規模を管理するのは、大変なことだと思いますよ。ところで、シダックスっていうとカラオケのイメージが強い人も多いと思いますが、カラオケの売り上げ比率はどれくらいになっているのですか。

志太   約3割です。今はカラオケにおいでになる学 生やサラリーマンの方々は全盛期から約2割減っているにも関わらず、競争が激化しています。また、給食部門も外食産業との競争が起き、厳しい状況です。大 新東の車両サービスも同様です。しかし、私どもの事業にはBtoB、BtoP、BtoCという3つの柱があります。それらを結びつけていくことで、他には ない領域のサービスを生み出すことができるのです。BtoCは外食産業の発想から始めたビジネスで、BtoBの給食事業は業務受託事業ですから、そのノウ ハウを組み合わせてBtoPの事業領域に転換すると、図書館や道の駅の運営も可能になります。そのような例をあらゆる角度でお客様に提示することにより、 公共施設などの運営も「シダックスなら効率的で楽しくできる」と思っていただけるようになったわけです。

天井   給食や大新東の事業は、カラオケの事業とは真逆の受託事業。時間何百円という究極のコストまで下げられてきた中でも耐えられる力をつけて、違う部分を探していくというのは面白いですね。

志太   私たちのビジネスは、ご利用いただくお客様 との接点のビジネスです。BtoC分野同様、他の分野も実際にはBtoBtoC、BtoPtoCのビジネスモデルなんです。だからそれらを組織化すると、 奥さんは大新東の路線バスに乗って買い物に行き、旦那さんとお子さんはシダックスが運営している社員食堂や学校給食を利用し、週末には家族でシダックスの カラオケに歌いに行くというような、家族という単位のマーケットが見えてきます。カラオケ単体で考えてもまだまだ伸びしろがあって、最近は会議室やカル チャースクールとしての利用が増えています。私たちはカラオケを“場のビジネス”と捉えています。私たちが能動的に運営するのではなく、仕組みと場を創造 し、それを利用されたい企業やそこでビジネスをしたいと考えている方に提供することを続けています。そうすることで、お客様の幅広いニーズにお応えするこ とができるわけです。

事業の多角化と人事で社内コストの効率化を実現

天井   ただ、事業が広がっていくと、人事が大変ですよね。例えば、カラオケから給食だったり、給食から大新東へといった人材交流は行っているのですか。

志太   積極的に進めています。具体的には、フリー エージェント制システムを採用しています。まずそれぞれの枠組みを作り、枠から溢れる人材をフリーエージェントにして、スカウト合戦を行うわけです。する と、優れた人材の取り合いが起こる一方で、既存の枠に当てはまりきらない社員が出てきます。そうした社員のためには新たな仕事を作ればいいのです。ひとつ 例を挙げると、弊社には約4万人の従業員がいますから、名刺の印刷だけでも相当なコストがかかっていました。それを内製化すれば、外注コストを削減するこ とができます。そうして作った名刺を製作する部署が、いずれ他社から受注する新ビジネスになるかもしれません。今まで私どもは買収戦略で事業の拡大を計ってきた一方、「社員をクビにするな」を合い言葉にして、社内の合理化も同時に進めてきました。

天井   番頭がいて、外部からの人材もいて、いい流れができていますよね。あとは、時代に合わせて変化させていくことが課題になるのでしょうけど。

志太   当面の課題は、今の中堅をどのように登用していくのかということです。前の幹部世代が引退し、次の上積みを作った社員が定年を迎えようとしています。次は、40代のプロパーの人材がしっかりと守っていく態勢にしていかなければいけないと思っています。

より地域に根ざした総合サービス企業であるために

天井   さらに今の時代、徹底的なビジネスの部分と NPO的な部分を両立していかなければいけないですよね。その点に関しても、シダックスはアクション・フォー・ニッポンを旗印に行動を起こしています。こ の活動は、シダックスのNPO的な事業としてこれからも続けていくわけですよね。

志太   そう考えています。シダックス各店の募金箱 に入れてくださる義援金が、どのように使われているのかを明確にする義務がありますからね。今回の東日本大震災では、津波で非常に多くの方が亡くなりまし た。親を亡くした子どもも大勢います。一日も早く震災遺児の確定をし、あしなが育英会を通した救済活動を行うことが急務だと思っています。私たちは東北地 方にある私どもの受託施設などで、あしなが育英会の奨学金・給付金の制度の案内をするポスターを掲示して広報活動を続けています。

天井   カラオケなどの事業で募金を集め、使い先を明示し、現地で運営する給食事業や店舗を通して活動する。アクション・フォー・ニッポンでも、シダックスの事業が見事に連動しているわけですね。

志太   震災が発生したのが3月11日で、シダック スとしての対策本部を作ったのが12日の未明。その時点で得意先の病院や老人施設で食糧が足りなくなることは分かっていましたから、同日の夕方には、車両 を用意して水と食糧を送り込んでいました。その際も弊社には車両運行管理事業の大新東があるので自前で車両を確保して運ぶことができました。バスを調達し て社員を送り込むこともできました。すぐに各地に避難所ができてきましたので、得意先以外にも、全国のレストランカラオケ店舗に続々と集まってくる、お客 様からお持ちいただいた救援物資をお届けしてきました。

天井   そういった迅速な活動ができるのも、シダックスが地域に根付いたキャパシティを持っているからですよね。

志太   カラオケは娯楽産業といわれていますが、そ うした活動を行うことで社会性を帯びることができ、営業する意義が生まれてくると思っています。いろいろな考え方を持った人たちがカラオケ業界に参入して いますが、私たちは自分たちが持っているネットワークや場を活用して、サービスを提供することが基本です。そのノウハウが、今回の震災の支援活動にも表わ れているのかもしれないですね。

天井   そうなると、いずれシダックスの店舗を見上げて「今は総合カルチャーセンターに変わっているけど、昔はシダックスっていうカラオケ店で通っていたんだよ」と話す日が来るかもしれないですね。さらなる発展が今から楽しみです。

引用元:あすなろ

記事掲載日:2011年5月30日

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