LEADERS FILE

日本のこれからを見据えたビジネスリーダーたちの次世代を切り開くメッセージを収録。

FILE NO.09
外食産業

株式会社ホリーズ 堀尾隆 | 喫茶事業で時代を切り拓く

株式会社ホリーズ 代表取締役社長兼CEO 堀尾隆
株式会社経営戦略合同事務所 代表取締役会長 天井次夫
株式会社ホリーズ 代表インタビュー

ファストフード産業などの拡大で、喫茶店チェーンの経営が年々難しくなっている現在、そこには新しい経営手法が求められている。そんな中、水出しのダッチコーヒーをメニューの特色として、お客様に身近な憩いの場を提供しているのがホリーズカフェ。
出店をほぼ関西圏に限りながら、実に60店舗を超える出店数が大いに注目されるが、その経営には他の同業チェーンにはない手法が詰め込まれている。
そこで今回、天井次夫KSG会長がサロンに迎えたのは、長年の友人でもある株式会社ホリーズの堀尾隆社長。
堀尾氏がホリーズカフェで試みた大胆な経営手法について、語り合った。

時代に合わせた極端から極端への経営転換が功を奏す

天井会長 堀尾さんと知り合ったのは、私が最初の会社をやっていたバブル期の頃でしたね。堀尾さんが「からふね屋珈琲店」で東京進出を考えていて、東京の状況を勉強しようとやって来たある会で知り合ったんですよね。まあ、その時期、東京は店舗がとてつもない家賃になっていたんで、進出は止めになりましたけど。

堀尾氏(以下敬称略) 創業したのは大学を出て1年目なんです。在学中は、就職のことなんて何も考えていなかった。

天井 それが喫茶店経営という事業を始めて、もう実質39年になるわけだ。

堀尾氏は、昭和47年に、当時画期的な24時間営業の郊外型コーヒーショップ「からふね屋珈琲店」を京都で開業し、以来ずっと喫茶店の経営に携わっている。「からふね屋」は最大で60店舗近くまで店舗数を伸ばしたが、バブル期を経て経営方針を変更。10年ほどかけて店舗を整理し、平成18年に株式を売却。同時に、併行して始めていた新事業である「ホリーズカフェ」の経営を本格化させている。
「からふね屋」がフルサービス型の営業形態だったのに対し、「ホリーズ」ではセルフサービス型を選択。現在は関西で60店を超えるまでに成長したが、店舗数を増やしても、「からふね屋」同様、基本を直営店方式において運営している。

堀尾 東京進出しようとした頃は、珈琲店の売り上げが落ちてきていましたから、東京進出を諦めた時点で、勢いで行くのは止めて建て直そうと、店舗数を減らしたり、リセールをしたりしていたわけです。もちろん、それだけしているわけにもいきませんから、何か新しい芽を育てようと、それまでと真逆のことをやってみたんです。つまり「からふね屋」みたいに、大量投資をして24時間フル稼働じゃなくて、できるだけ投資を少なく、短時間営業で働く人間も少なくしてと、そういうやり方で稼げる方法を考えたんです。
天井 今の「ホリーズカフェ」がそれですよね。郊外の大きな店が、だんだん時代に合わなくなることを見越して、セルフサービスというやり方を選んだという。それにしても、「からふね屋珈琲店」というのも当時はオンリーワンだったね。最初の店は、郊外型のファミリーレストランみたいに大きかったけど、なぜああいう店にしたんです?

堀尾 いや、とにかく大きいのを作ろうって発想です(笑)。お客様が、入った時に感動するような店を作りたかったんですよ。

コンパクトな究極のローコスト経営を追求

天井 それから十数年で、50店舗まで店を増やしていったわけですけど、そこで「からふね屋」を売却してしまう。それはどうして?

堀尾 やはり、その間にもコンビニエンスストアが増えて、24時間営業のファミリーレストランも出てきましたし、どんどん競合してきますから。

天井 確かに夜中にコーヒーが飲みたいと思った時、コンビニっていうのは大きいですよね。それでも「からふね屋」を駄目にすることなく、試行錯誤しながら「ホリーズ」という、ローコストな店の一つのモデルを作ったのは大きい。
「ホリーズ」には従業員1人だけでやってる店もあるんですよね。他のセルフサービスのコーヒーチェーンでは、たった一人の従業員だけで営業する店なんて作るはずがない。でも、堀尾さんの場合は、トイレへ行きたくなったらレジをロックしておけば5分くらいいなくてもいいって発想なんですね。1人でやれるくらいの店だから、目が届かないわけじゃないし売上もしれてる(笑)。逆に従業員を2人にすれば人件費が大変になっちゃう。

堀尾 実際に、そういう店舗を見に行かれたら分かると思いますけど、本当に「このくらいでいいんだ」って思うような店ですよ。私は、お客さんのニーズと店主の希望は必ずしも一緒じゃないと思うんです。みんな考えすぎていて、決まったようにお金をかけて作ろうとしますよね。

これからはPLよりBSを重視した経営法を考えるべき

それまでの喫茶店チェーンから、コンパクトな「ホリーズカフェ」への経営方針の切り替えは、ユーザーの側に立って喫茶店のあり方を考え直すという、時代に即応した発想の転換があった。それにしても、1人だけでも店をやるなど、最初は冒険だったと思うが、不安はなかったのだろうか?

堀尾 逆算してみれば、やれそうかどうかは分かりますね。たとえば、粗利が1時間に4000円あがれば、2000時間働けば800万円になります。そこで人件費を35%払ったとしても、商売として成り立つわけです。まあ、地方であれば、ですけど。ところが、現在の喫茶店は平均が大体2400円くらいになっていて、そうすると、とても人は雇えない。現状は、喫茶店ビジネス自体が成り立ちにくいんですよ。

天井 だから堀尾さんは、月の売り上げが100万円台であっても店の営業利益が2、3割出る仕組みを考えた。売り上げをアップさせて利益を出すのは普通だけど、その逆のやり方をするのだから、究極のローコストを目指さなければ駄目です。それを考えれば、内装もさることながら人件費の比率はとても高いですよね。

堀尾 もちろん、あくまで売り上げ効率を考えてそうなったのですから、粗利が10000円ということになれば、これは2人入れます。労働の量としても均等ですよね。
天井 堀尾さんは、40年やってきたこともあると思いますが、企業を物凄く大きくしようという考えは、それほど強く持ってらっしゃらないんだな。

堀尾 今のやり方の方が絶対に効率がいいですから、転換するのにも迷いはなかったですよ。私の場合、一番に考えているのは、これからの経営と同じことで、会計的にいうとPLからBSのほうを重視するという方向。BSをきれいにしようと思ったら、投資効率が悪いとダメなんです。前は店にお金をかけていましたから、PLはよかったけど、その反面大量にコストをかける分借り入れが増えて、BSは悪くなります。今のホリーズの場合は、キャッシュフローの中で出店できますから、出店するほど現金が余ってくる。それだけ投資効率がいいってことなんです。

天井 本当に「ホリーズカフェ」は、究極のローコスト経営。うかがってみたら、もっとも小さな店では月商120万円で営業利益が25%でやっているというんですから。この数字では、他社は絶対にやらないですよ。でも、そうやっておいて、フランチャイズのようなことは考えないですか?

堀尾 もちろん、フランチャイズという考えもありますけど、まずはバランスを重視してやっていこうと思っています。急に増やしたりするとあまりいい結果にはつながらないですから、とりあえず、投資効率がいいということと目立たないということを(笑)。目立つと競争になりますからね。競争をなくすということが大事なんですよ。一度どこかと競争を始めると、永遠に無駄な投資をしていかなければならないですから。だから、私たちのところは、何店舗もが出店可能なような地域には出店しません。

お客さんは、半径500メートルに住んでいる人たち

もちろん、ローコスト経営を追求するには、投資効率を考えるだけでは不十分だ。なによりも、お客と対面する従業員の協力は欠かせない要件となる。そして、そこにこそ「ホリーズカフェ」の独自性があるわけだ。

堀尾 これからの時代は従業員についても考えるべきだと思うんですよ。つまり、誇りを持って楽しみながら働けるかっていうことなんです。私たちのような店舗は、小さいけれど地域社会の中にありますから、お出でになるお客様とも親しくなれて、ちゃんとコミュニケーションがとれるわけです。そういう部分をもちながら店舗を作っていくのは、働く人にとって楽しいですよね。
それは、従業員を物として考えるか人間として考えるかということだとも思います。だから、会社の勝手で従業員にどこへ行けというのではなくて、一度その場所で雇ったならその地域で根付いてやってもらう。いつもの人に、いつも通りにコーヒーを入れてもらえるほうが、お客さんも安心しますからね。つまり、われわれのお客さんは、地域社会の人間なんです。半径500mくらいに住んでいる人たちなんですよ。だから、宣伝もいらないし目立たせる必要もないんです。

天井 喫茶店ビジネスというのは、外から見ていると分かりにくいものですよね。でも、実際にはかなりデリケート、というか細かな戦略が必要なんだと思いますね。

堀尾 小さな商売ですから、ひとつだけやってたのでは個人商店と変わらないわけです。それをどう上手くまとめるかというのが重要なことで、統一するのが大変なんです。マニュアルがあればいいというものじゃないんですよね。

では、堀尾社長は、「ホリーズカフェ」を今後どのように広げていこうと考えているのだろう?

東京進出はせず“スロー”な姿勢で発展を図る

堀尾 自分の考え方を全店舗に行き渡らせなくてはいけないとか、そういう難しいことは考えていないんです。ただ、何かをする仕組みと方法論を考えていかないと、とは思っています。やはり、仕組みができないうちに企業を大きくしてしまうと、どこかがおかしくなるんですよ。それに、われわれがやっているのは、限りなくローテクなことなんです。人を雇って店をやるわけですから、人が育たないうちは店を増やせないです。それは、やはり時間がかかるもので、急には拡大できないんですよ。東京に進出するつもりもないし、スピードは考えず、スローにやっています。

天井 今、「ホリーズ」は安定した企業ですけど、そうなるまでには10年ほどかけて店を減らして整理したり、スクラップ&ビルドのスクラップの方が大変だったわけですよ。お金の面では、投資した資産に加えて撤退費用ということになるし、その間に新しい業態を考えて、「ホリーズカフェ」を準備していたわけですからね。企業が30年以上存続する確率というのは、全体の1%にも満たないともいわれていますが、そう考えると、この激動の20年さえ乗り越えて、40年間コーヒーだけでやってきたというのは凄いことだと思います。発想は柔らかいけど、スタイルは堅い、堅実ですよ。水出しコーヒーというこだわりも貫いている。

堀尾 それくらいはこだわろうと思いまして(笑)。

天井 あと、堀尾さんがやっているいわゆる“フランチャイズ”ではなく、店を育てて利益が出るようになって売る方式、あれはいいですね。

堀尾 「ホリーズ」のチェーンの中に7店舗ほどその方式のものがありますが、たしかにお互いにとっていいやり方だと思っています。

天井 フランチャイズよりずっといいと僕も思いますね。
それにしても堀尾さんは若いですよね。とても僕より歳上には見えない。この次は、経営ではなく、その若さの秘訣について聞かせてもらわなくては(笑)。

引用元:あすなろ

記事掲載日:2011年5月30日

POST

Edit

アクセスランキング

ACCESS RANKING

編集部厳選インタビュー

STAFF SELECTION
新着記事
NEW ARRIVALS