教育、証券などの分野で豊富な実績を誇る
ODKソリューションズは、東証JASDAQの上場企業だ。設立は1963年。今年、創業55周年を迎えた。まさに、情報システム産業の分野ではパイオニア的存在といえる。
「当社のメイン業務は、2つあります。1つは、教育業務。大規模校を中心に大学入試業務のアウトソーシングサービスを手掛け、入試広報支援や志願票受付、採点、合否判定、合否通知、入学手続きなどを一貫して行っています。近年は日本初の大学受験ポータルサイト『UCARO』やインターネット上での出願を可能とする『Web出願システム』なども積極的に展開しており、大学の入試業務のさらなる効率化、コスト削減に貢献しています。もう1つの柱は、証券業務です。証券総合システムや不公正売買監視システムなど証券会社のバックオフィスをサポートする様々なシステムを提供しています。両業務を合わせると、全社の売上の約8割を占めます」
実は、両業務とも歴史はかなり長い。同社が初めて大学入試業務を受託したのは、1964年。証券業務は翌1965年に受託し、サービスを開始している。以後、時代のニーズに逸早く対応し最適なサービス、ソリューションを提供。現在は、年間で延べ108万人もの志願者データを処理するなど、大学入試アウトソーシングの取扱いにおいて国内トップの実績を誇っているほか、長年にわたり培ってきた証券業務の知識と高度な技術力が評価され、中堅の証券会社を中心に同社のシステムが多数稼働している。
グループ会社依存体質からの脱却を決意
西井氏が同社の社長に就任したのは、2012年。今年で7期目を迎えることになる。この期間を振り返って、決して順風満帆な日々ではなかったというのが西井社長の本音ではないだろうか。むしろ、会社としての生き残りを賭けた厳しい試練を余儀なくされた歳月であったといったほうが相応しい気がする。
「もともと当社は、旧・大証金(現・日本証券金融)グループ2社の計算事務センターとしてスタートしました。株式も2社で半数近くを保有しており、社長は代々旧・大証金の出身者。私自身も旧・大証金の常務を経て当社に来ました」
当時から、証券市場の流れとしては東京偏重であったので、大阪での証券ビジネスは今後ますます厳しくなると西井社長も理解はしていたものの、その後企業環境が予想以上のスピード感で激変してしまったのである。
「私が社長になった翌年の2013年、旧・大証金は日本証券金融と合併することになりました。これに伴い、旧・大証金グループからの案件が一切途絶えてしまうだけでなく、当社も他社と合併するか、あくまでも自主独立路線を貫くかを選択せざるを得なくなったのです。毎年約5億円ずつの減収となることから、今後の業績はどうシミュレーションしても非常に厳しいものでした。私も大いに悩みましたが、役員や社員らの意見を踏まえ、最終的には独立の道を選ぶことを決めました」
経営状況をオープンにし社員と危機感を共有
新たなスタートに向けて、西井社長が行ったのは社員との危機感の共有であった。
「今ある仕事は皆きちっとやってくれていたのですが、保守的というか長年来続いてきたビジネスがなくなるとなっても、当該部門はもちろん、社内全体に新規顧客を積極的に開拓していく機運をあまり感じられませんでした。だから、できるだけ経営動向に関する報告会を開催し、今会社がどんな状況に置かれているのかを分かってもらうようにしました。
また、『売上がこれだけ減ってしまうから、教育や証券の業務で何とかカバーしてもらいたい』とか『悪いがコストダウンもさせてくれ』、『それぞれが何ができるかをもう一度考え直し、それらを実行していってほしい』というお願いもしました。私は俺についてこい式のタイプではないですし、ワンマンにやろうとしてもできる体制にはなっていませんでしたから、とにかく皆と一体になって前に進んでいくことだけを考えていました」
その甲斐もあって、同社は近年売上を着実に拡大しているとともに、有力企業数社と業務・資本提携を締結し、経営基盤の強化を加速している。もう完全に危機は脱した感があるが、西井社長は慎重なコメントを寄せる。
万全を期し、ODKの次のステージにつなげたい
「2018年3月期は売上高、経常利益とも順調に推移し、ようやく光明が見えてきた感があります。それが本物の足取りになれるかどうかは、今期および来期に掛かってきます。入試制度も改革が見込まれており、楽観はできませんね」
もちろん、既に布石は打っている。『ODKを次のステージへ』をモットーに掲げ、主力である教育業務では受験ポータルサイト「UCARO」の機能強化・拡販、文部科学省による大学入学者選抜改革推進委託事業とWeb出願システムとの連携を、そして証券業務ではシステムの多機能化を進め、各業務のさらなる拡大を図っていく考えだ。加えて、新規事業にも意欲的に取り組んでいる。例えば、ファルコホールディングスとの協業のもと、中小規模の病院や診療所への電子カルテの導入支援・開発を手掛けているほか、AI(人工知能)技術を活用しHRテックやコンタクトセンターなどの領域に新たなソリューション、サービスを提供していきたいと目論んでいる。
「奇をてらうのではなく日々やるべきことをやっていれば、道は必ず開けるはずです。社員一人ひとりの頑張りで独立経営への目途がつくと信じています」
そんな西井社長に、ベンチャー経営者の印象と彼らへのアドバイスを伺ってみた。
「皆さん、頑張っておられます。発想が私たちとは全く違いますね。ひらめきというか。Webやシステムの絡め方も見事です。私から何かを助言するとしたら、社長の後ろには誰もいない、最終的には自分が決断しなければいけないということです。怖がっていたら前には進めません。小さな決断から大きな決断まで色々ありますが、私はそう思いますね。経営共創基盤の代表取締役CEOを務める冨山和彦氏も、著書『会社は頭から腐る―あなたの会社のよりよい未来のために「再生の修羅場からの提言」』で破たんする会社の究極の要因はトップであると指摘しています。私自身もその考えを大事にしていきたいと考えています」
今年6月、ODKソリューションズに初のプロパーの代表取締役専務が誕生した。西井社長も7年目に入り、世代交代を意識しているようだが、万全の体制を構築してから襷を明け渡したいと願っている。