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徹底した人材教育と高コスト体質からの脱却。すべては世界レベルのエンターテインメントをめざして

株式会社マルハン 韓裕社長 インタビュー

正当な多面評価で優秀な人材を店長に抜擢

レジャー白書2013によると、2012年のパチンコ市場規模は19兆660億円。この数字は、30兆円を超えていた1995年の3分の2以下である。そのなかにあって、ホール業界トップのマルハンは、毎年10を超える新店舗をオープンさせている。

業界が低迷の一途を辿るなか、なぜマルハンは成長し続けることができているのだろうか。同社社長・韓裕は、人材の重要性を強調する。

「当社には価値体系を一つにまとめた〝マルハンイズム〟という理念があり、採用から教育、社員の評価までをマルハンイズムに基づいて行なっています。そのなかで強化された組織力と人材力がマルハンの屋台骨を支えています。なかでも要になるのが店長の育成です。年間13から15の新店舗をオープンさせているので毎年同数の店長を輩出していることになりますが、店長に次ぐポジションのマネージャーには1200人ほどの人材が控えています。その約1200人のなかから15人ほどが選ばれるので、非常に優秀な店長を毎年輩出できるというわけです」

店長に抜擢する際の前提条件でも、マルハンイズムを体現しているかどうかが決め手となる。その上で、マルハンが打つ戦略を理解しているのか、マルハンのブランド価値を作り上げることができるのかを見極める。さらに近年は大型店が増えているため、店長には数十名のスタッフを束ねる統率力や管理能力も求められる。そこでマルハンは、上司も部下も対象者を評価する多面評価を導入。試験も実施し、店長に相応しい人物を選抜している。

「一般的に、入社してから店長になるまで8年から10年。それほどの年月をかけ、日々の業務を通して正当に評価する仕組みを構築できているので、誰もが認める社員を店長に抜擢することができています」

新入社員の採用に関しても、マルハンには独自の選定基準がある。92年から始めた新卒採用はもちろん、中途採用やアルバイトからの登用でもこだわり続けてきた〝共感型採用〟は、いわばマルハンの組織作りの礎だ。
「われわれが大切にしている価値観や理念、ビジョンに共感する人にエントリーしてもらうことが大前提。そこの部分でミスマッチがないことが、定着率の高さに結びつき、長い期間をかけて、イズム、実務、能力開発の教育を行なうことができる大事な下地となっています」

300のホールがあれば同じ数の店舗形態がある

マルハンが業績を伸ばしたもう一つの理由に、高コスト体質からの脱却が挙げられる。目標に掲げ、実際に達成した数値は、一店舗あたり10%のコスト削減。この成果は、マルハンの財務状況にもはっきりと表れている。

12年3月期に2兆791億7600万円だった売上高は13年3月期に2兆1368億6400万円に増加したが、経常利益は521億円から424億1400万円に減少した。ところが大幅なコストカットを実現した14年3月期は前年よりも売上高が2兆1116億5400万円に減少したにもかかわらず、経常利益は605億7300万円に増加しているのだ。
「運営コストのなかで最も大きいのが機種にかかる部分。従って、新台の入れ替えをセーブする必要がありました。そのためには、稼働率の高い良い機種を導入し、長く使うことが重要です。選定ミスがあればすぐ次の機種に入れ替えなければいけなくなるので、導入機を決定する店長やエリア長には、機種を選定する能力が求められるのです」

その精度を高めるために、ゲージやリーチアクション、効果音がユーザーに与える心理変化など、新台のさまざまなデータを営業戦略部で収集し分析。店長やエリア長にデータを提供して選定能力を高めると同時に、全メーカーに対しても営業戦略部での評価をフィードバックしている。採用する側の声が開発者側にも活きる相互関係が成り立っているのだ。

しかしここまでの話だけでは、分析能力に長けた営業戦略部が導入機種を選定すればいいのではないかという疑問が浮かんでくる。

「現在、マルハンは300店舗を展開していますが、そのなかにはMPT渋谷に代表される都市型店もあれば、郊外で駐車場を構える大規模店や小規模店もあります。300店舗あれば、300通りの形態があるわけです。そのため、各店舗の戦略と役割を明確にしたセグメント戦略に切り替えました。
過去には一律で目標を掲げていた時期もありましたが、そのころは各店のパフォーマンスを十分に発揮できていなかったようです。チェーン化が進むとどうしても一律にしがちですが、すべてが分類されていて、予算化されている現在のほうがマルハンとしては上手くいくようです」

たとえば競争が激化しているエリアの場合、毎週のように機種の入れ替えを行なわなければ維持できないケースもある。一方で、稼働率があまり高くなくても、新台の入れ替えがほとんど必要ないために収益が安定している店舗もある。

300店舗あれば300通りのため、出店段階から各店の戦略と役割を明確にし、それぞれに見合った形態で営業することで成功を収めているのだ。しかも各店には、マルハンの戦略を理解した店舗運営を一任できる優秀な店長がいる。大幅なコスト削減と収益構造の改善にも、マルハンが培ってきた組織力と人材力が大きく寄与していたのだ。

世界レベルのエンターテインメントの実現に向けて

14年3月期には過去10年間で最高となる経常利益を計上し、4月にはパチンコホール300店舗を達成したマルハンが次に掲げた目標は、全国500店舗だ。この数字は、順調にこのままいけば10年後には見えてくる。

しかし、現時点で自社競合が始まっている地域もあるため、「500をクリアしたら青天井で拡大していけるわけではない」と韓は言う。しかもパチンコ業界には、国内が飽和状態になったら海外に進出するという選択肢がない。限られた国内市場でシェア争いをしているだけでは、業界の発展は見込めないのだ。

そこでマルハンは、パチンコを始めるきっかけを創造するべく、12年4月にパチンコホールとデリ&ビュッフェレストランを融合したハーベストガーデン千葉北店をオープン。異業種とのコラボレーションにも積極的に取り組んでいる。
「いまはあらゆる業界で垣根がなくなってきています。だからパチンコ業界も単に競合相手を見つけてライバル視するのではなく、複合というテーマであったり、本当に互いがシナジーを発揮し合えるパートナーシップであったり、店づくりやサービス、会員制度の広がりをどうするかなど、あまり目を向けていなかったことにも着目していく必要があります」

その先に見えてくるのが、マルハンが目指す〝世界レベルのエンターテインメント〟だ。経営理念の実現に向けて掲げたテーマは〝チャレンジ2020〟。奇しくも目標実現を東京オリンピック開催年に設定したマルハンの挑戦は、もうすでに動き出している。