客層を見極めた空間作りを
パチンコホールはお客様が「何かいいことないかな」という思いを持って、ワクワク・ドキドキしながら「時間消費」をする場所です。この点で、実はドン・キホーテも同じです。
われわれは小売業ですが、CV(コンビニエンス・利便性)+D(ディスカウント・安さ)+A(アミューズメント・楽しさ)というコンセプトを掲げており、アミューズメント性の高い「時間消費型」店舗の展開を揺るぎないコンセプトとしています。
パチンコホールは門外漢ですが、アミューズメント業界ということでお話しさせていただくと、3つのキーワードがあると思います。
一つ目は、客層を見極めた「空間作り」をすることです。
いま、私どもは時間消費をソーシャルネットワークサービス(SNS)に奪われていると考えるべきでしょう。影響が顕著に表れているのが店舗の繁忙時間です。
私どもの店では、5年前の繁忙時間は22時から24時でした。それが、いまは18時から20時くらい。郊外になると16時から18時。つまり、夜が弱くなっており、その傾向は都市の中央部から離れるに従って顕著になっています。
この傾向を捉えて何をすればいいか。SNSの時間消費とバッティングしてしまっては、ヤング層を中心とした客層での新しいお客様は、拡充できません。
そこで、昼間活動している人たちの新規取り込みに取り組んでいるところです。
早い時間にシフトするときに注目すべきは、時間によってお客様の感受性が変わっている点です。服装ひとつにしても、夜に来店していただくお客様と、夕方に来店していただくお客様は違います。「この店、センスがいい」と言われる店のセンスも変わってきます。
いま、望まれているのはおとなしめでシンプルだけどオシャレな空間。私は「プチオシャレな空間」と言っています。
それに対応するため改装など設備投資をし、お客様も増えてきつつあります。
現状の商圏を見て、お客様に来ていただける空間をどう作るかが、パチンコホールでも大切なのかもしれません。
ワクワク・ドキドキの演出を
二つ目は、「ワクワク・ドキドキ」をどう作るか。
いま、「ワクワク・ドキドキ」の種類もどんどん変わってきています。
たとえば、小売業の場合、地域ナンバーワン低価格198円というプライスで味噌の安売りをしたとします。ある程度は売れるけれど、儲かるまでは売れない。
どうすればいいか。近くに1280円の味噌を置きます。
「どっちを選びますか」という選択のなかで198円を買っていただくと、お買い得感が強まって多くの人に買っていただける。いわば心理戦です。
心理戦を仕掛けていくことでワクワク・ドキドキが生まれます。
パチンコ業界に関して、生意気を一つ言わせていただくと、出玉数を自動計算するシステムを導入する店が増えたのか、ドル箱を積む店が少なくなりました。すると、ワクワク・ドキドキはしない。「出るかもしれない」というビジュアルが入ってこないからです。
あえて従業員の負担を軽減する知恵を絞り、「お客様のワクワク・ドキドキ」を奪わないほうがいいと思います。
私どもの社内用語でいうと「業務優先か、お客様優先か」ということ。業務は自分たちで創意工夫すればどうにかなる。でもお客様に嫌われたらもう取り返しようがない。
やはり「顧客最優先主義」でい続けることが重要ではないでしょうか。
応募側に合わせた人材募集をする
三つ目は業界を問わずどこでも悩みだと思いますが、「雇用」についてです。
私どもは、多くの場合「レジスタッフ募集」と職種で募集していました。ですが、応募者は限られてきます。要するに募集側の親和性が高い。そうではなくて、応募側の親和性が高い原稿を打つ必要があります。その原稿に合わせた用の体制を作らない限り現状は打破できません。
たとえば、世の中にフリーターと呼ばれる人たちがいます。フリーターがフリーターをやっている理由は何か。私がフリーターだとすると、年に1回1ヵ月間ハワイで過ごすことを楽しみにしていて、11ヵ月間働き、1ヵ月ハワイで過ごすための資金を貯めます。
とするならば、むしろ「フリーター募集。あなたがフリーターをやっている理由をお聞かせください。それに合った雇用スタイルを提案します」という募集広告をしたほうが人は集まる。それが「応募親和性」です。主語を転換し、応募者の親和性に合わせる。
「何をやるか」より、「自分の事情にあった職場なのか」を優先して職場を決めている方も多くいらっしゃるのではないかと考えています。
売上げの報告や会議はSNSで
最後にSNSやメールを使ったサービスについても触れたいと思います。
いま、時代のスピードがめまぐるしい。そうしたなかでは、いかにオペレーションをスピードアップするかが大切です。当社は、全幹部にアイパッドを支給してSNSを活用しています。SNSに時間消費を奪われている分、SNSでスピードを上げているのです。日本全国17の支社と、本部のサポート部署4つの合計21の集団をSNSでつなぎ、数字の報告や会議に使ってスピードアップしています。
もう一つ次のような試みをやっています。
2014年3月18日に独自の電子マネーカードmajica(マジカ)をリリースしました。完全にドン・キホーテグループのなかでのみ使える電子マネーです。
もともとの480万人のモバイル会員と電子マネー事業をつなげました。
マジカを使って会計をすると、瞬間に「サンキューメール」が送られます。マジカを持っているイコールわれわれのロイヤルカスタマー。未来永劫大切にして、今後も継続してご来店いただきたいお客様ですから、会社からもごあいつをするという意味で「サンキューメール」をお送りしています。このときに、たとえば「このレジの接客態度はいいね」「普通だよ」「いやだね」「待たされたよ」の4段階で評価できるようなシステムも現在つくろうとしているところです。
モバイル会員の組織の活用を
これをパチンコ店で考えてみます。パチンコ店ももっとモバイル会員を活用してはどうかと思います。
導入前には仮説検証や精査が必要となりますが、たとえば、いま、モバイル会員の来店を認識する仕組みがあります。これを使って、経営者から「今日はご来店ありがとうございます」とサンキューメールを出すことはできないでしょうか。そのときに、「今日は出る気分ですか?」という質問をつけて、「出そうだ!」「いや、出すよ!」「負けそうだ」と選べるようにする。
店を出るときにまたキャッチアップする仕組みをつくって、「今日はご来店ありがとうございました。出ましたか?」とメッセージを送る。「あまり出なかったよ」「まあまあかな」「冗談じゃない、まったく出なかったよ」とボタンを押すことでうっぷんを晴らす。
モバイル会員の組織をそうやってお使いになると、お店に大切にされている感を強められると思います。