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どこにも負けない超速PDCAで2051年売上げ10兆円を目指す

GMOインターネット株式会社 熊谷正寿 記事サムネイル

業界の先頭を走り続ける独立系ネットベンチャー

東京・渋谷にそびえるセルリアンタワー。GMOインターネットグループ(以下、GMO)はオフィス棟の大半を占めている。受付のある11階フロアは、眺望もよく窓から明るい光が射し込んでいる。商談に訪れる人たちの動きは活気にあふれ、GMOの現在とその先に広がる明るい未来を感じさせる。ところどころの壁には、爽やかな色づかいのポップアートが掛かっていて、そのシンプルだがインパクトのある絵が知的な雰囲気を醸し出している。

同社グループを率いる熊谷正寿社長はラフな装いで、若々しい活力と落ち着きとを絶妙のバランスで体現している。それは、GMOというIT業界のリーディングカンパニーのあり方にも通ずるものがある。

熊谷社長は、1991年5月にGMOの前身ボイスメディアを設立、95年にスタートさせたインターネットプロバイダー事業を皮切りに、インターネットに関する事業を果敢に推し進めてきた。99年には独立系インターネットベンチャーとして国内初の株式店頭公開を果たし、2005年には東証一部上場。同じ年、米『ニューズウィーク』誌によって、イーベイ創業者やAOL創業者など名だたる経営者とともに”Super CEOs”10人のうちの1人に選ばれ、なんと表紙をも飾っている。

国内トップの事業を柱に第4、第5の柱を構築中

現在、同社はグループ会社76社、スタッフおよそ3800人を擁し、13年12月期売上高約937億円(前期比約26%増)、経常利益109億円(同約19%増)にのぼる。もちろん、熊谷社長はそこに満足するはずもなく、98年に立案した「55年計画」では2051年5月時点で、グループ会社207社、スタッフ数20万人、売上高10兆円、経常利益1兆円達成を目指している。この計画は決して夢物語ではない。そのことは、彼のこれまでの成長戦略、実績、そして何よりも目の前で生き生きと語る表情が如実に物語っている。

同社グループが展開する事業は大きく4本の柱で語られる。同社には「やるからにはお客様にとってナンバーワンを目指す」という行動指針があり、結果としていずれも国内シェアトップか、そこを射程にとらえているものばかりだ。
第1の柱がWEBインフラ・EC事業。インターネットの住所にあたるドメインやホームページ、メールなどの情報を預けるサーバーなどを管理する。またドメインやサーバーを利用する顧客のなかの一定数がEC(イーコマース) を開始するため、ショッピングカートの提供、決済、通信される情報の暗号化も同社グループの仕事だ。二番目はインターネットメディア事業で同社グループで運営するネットメディアやネット上に掲出する広告などを扱う。また、三番目がインターネット証券事業で、FXの事業では世界一位となっている。

そして、4本目の柱として着手したのが、スマホのゲームを中心としたソーシャル・スマートフォン関連事業。4年前に本格参入し、これまでに延べ50億円、300〜400人を投入している。アンドロイドOSのゲームでは国内一番乗り。勝算は十分にあるという。

さらに、20年東京オリンピック&パラリンピック開催決定で注目されているのが、新ドメインの事業だ。5年ほど前に立ち上げたこの事業は、これまで「.com」や「.net」など22種類しかなかったドメインが大幅に増える動きを受けてスタートした事業。「.tokyo」(ドット東京)、「.nagoya」(ドット名古屋)など、アドレスのドットの最後に地域名称を持つドメインも誕生する。

14年2月20日、GMOは日本初の地域名ドメイン「.nagoya」の受付をスタートした。「.tokyo」についても間もなく開始される予定だ。

ナンバーワンサービスの共有と少しの知恵と少しの努力

IT企業の成長にはスピード感が大切というのが熊谷社長の持論。

「いちばん大切なのはもちろん技術力。そのうえで、いちばんいいものを作って、いちばん安く、いちばん早くお客様に提供する。さらには提供したものをできるだけ早く自ら改善していく。そうしたPDCAサイクルの高速回転がわれわれの自負するところ」

加えて「少しの知恵と少しの努力」が成長を止めない秘訣だという。そんな熊谷社長に経営者の条件を尋ねてみると――。

「いうまでもなく、事業というのは一人でできるものではありません。その意味では、〝仲間に夢を語れる人〟、そして〝夢を実現できる人〟でしょう。仲間に語った夢を、淡々と粛々と実現に向けてやっていく人。お金儲けしか考えていない人はだめでしょう。お金は目標ではなく結果です。ただ、お金がなければ夢は実現できないし、だれもついてきません。企業として必要なお金を儲け、お客様を笑顔にし、それによって自分たちも笑顔になる。そんな笑顔の循環に気づき、夢の実現のために進んでいく企業へと脱皮できるかどうか、伸びるか伸びないかは、そこにかかっているでしょうね」

ITは生活を豊かにし社会にも貢献できる

熊谷社長は「生まれ変わってもITビジネスをやりたい」と言い切る。なぜなら、「動きがあって面白いし、ちょっとしたことで人々の生活を豊かにできるじゃないですか。社会に貢献している手応えが感じられますからね」と。

ところで、取材を行なったミーティングルームの壁にも、ポップアートが飾られている。イギリスの現代美術家ジュリアン・オピーの絵だ。

「アートとテクノロジーは共通するところがあると僕は思う。それにオピーの作品はシンプルでいて力強くて好きなんです。経営もシンプルがいちばんですしね」

現代アート、ワイン、ゴルフ……と実に多彩な趣味を持ち、しかもそれらと深く関わっている熊谷社長。それでも「いちばんの趣味は仕事」と明言する。

けれど、趣味を通して培われ磨かれたセンス、ウェルネス、チャレンジスピリットが、実は大きな意味で、GMOという日本の最先端に位置する企業を支えているのに違いない。